反面教師

「先生! なんで先生はビール飲んでるんですか? 授業中ですよ!?」


「いいんです。先生は、というか先生たちは皆に良いことを教えることを止めただけです。先生たちはですね、最近みんなに気を遣うように強制されて、それができなかったらモンスターペアレントやらSNSやらに告げ口されてもう疲れてしまいました。そこで、日本中の学校の先生は気づいたんです。『あれ? もしかして俺達、反面教師の方が向いてね?』てね。だから先生たちは反面教師になりました。皆さん、先生のような大人になっちゃダメですよ。こんなのになったら、取り返しつかないことになっちゃいますからね~~」


 先生はいつもの笑顔を見せながら教壇の上であぐらをかいてビールを飲んでいた。そんな状況で自分たちで勉強をしろというのは無理がある。きっと先生はいつもの先生に戻るようにお願いされるのを待っているんだろう。クラス中がそう予想し、クラス一成績がよくて真面目な生徒が教壇の先生の元へと向かった。



「あの……、先生。私達先生が授業をしてくれないと勉強できません。だから授業をしてーー」



 その瞬間、先生は思いっきり足で生徒の顔面を蹴った。生徒の身体は宙を舞ってそのまま机の上にひっくり返る。日常からはあまりにもかけ離れた光景に生徒たちは声も出せなかった。


「何が、教えてくださいですか……。あなた達は昨日までそんなこと一言も言わなかったじゃないですか。人が教えようとするときは邪魔をして、やりたくないときには無理やりやらせようとする。それが人にものを頼む態度ですか……。あなた達は、いや……。お前たちは勘違いしている! 誰が、社会に出るまで面倒みると思ってるんだ。こっちが黙ってりゃ、好き勝手しやがって!! ……まぁ、もう私は反面教師になったんでもうそういうことも全てどうでもいいですがね」


 先生はそう言うとまた机の上に腰を下ろし、ビール缶を飲み干す。先生は快感そうに涙を流しながら笑っていた。

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