EP 27 魔法覚えたよ

久しぶりの都知事さんに会う事にした。

お互い色々忙しくメールのやり取りはあるけどなかなか会う機会が無かった。


今日は魔法を覚えた事を伝えて披露することにした。勿論覚えたのは土魔法だけというけどね。


(スタスタ、タタタッ…)

堂々と正面入口から隠密、気配遮断を発動して普通に入って行く。

都知事さんのフロアに降りれないので展望台に迎えに来てもらった。


「忙し中時間を作ってくれ申し訳ないです」

「これ手土産は舟屋の芋羊羹15本あんこ玉6色セットです」

芋が嫌いな女性はあまり居ないだろう。


『あら、嬉しい〜久しぶりに食べるわ』

 

(パクリ…モグモグ…)

早速ひとつ手づかみで食べていた。

都知事さんって意外とお天馬な所がある。

そこがいいんだ人間味がある。


オレは都知事さんが前から頭を抱えている老朽化した水道管、下水管を直せる魔法を覚えた事を伝えるとあんこ玉が喉につっかえた。


(うんぐっ…トントントン、ゴクリ)

慌てて麦茶を飲んだ。


『はぁ〜〜』

ぎりセーフだったみたい。

『本当に?えーーー!』

『ねぇどうやって?直すの?』


道路の下だから確認しづらいのだけどアスファルトの上から下にある管のひび割れや穴を塞げると伝える。


『あらまぁ〜』


本当は新品みたいになるんだけどね。


「どこかで試せる所は無いかな?」


『ちょっと待って部下に確認させる』


都庁に地下駐車場にある水道管が昨日水漏れしたらしく、早速地下駐車場に行く、あまり多くの人には見せられないからといつものSP2人が付いて来た。1人は国のスパイのやつだ。


地下駐車場の天井に這わせた水道管の一部からぽたぽた水漏れしている。応急処置でテープで止めているが圧力がかかっているから漏れ出てしまう。


「あ!ここですね」


水道管は鉄製、土魔法のレベルが上がったので大体の素材は修復出来るようになっていた。


「じゃSPさんAはあっちから誰か来ないか後ろ見ていて下さい」

と伝えると露骨に顔に出でいた。


「じゃ都知事さん始めます」

「はい終わりました」


『え〜もう?終わったの?』


『はい、確認致します。直ってます』

テープを剥がすとどこも水漏れしていない。 


(パチパチパチパチ!)

『凄いわ!感動するわね』

都知事さんは拍手をしてくれた。


羊羹の続きがあるからとまた都知事室に戻ってお話しの続きをした。水道局の担当者が東京の上下水道管の地図をくれた。一応、業者の仕事を取らない様に大幅な交通費規制を掛けないと工事が出来ない所や時間のかかりそうな案件をピックアップしてもらった。


普通に業者が工事したら130年かかるらしい。その間にまた交換時期が来てもうエンドレス状態だ。さすがに業者の仕事量のレベルを超えてます。


お金も結構掛かるし、周辺住民は工事は必要だけれどいつまでたっても終わらないから車線規制とか不便を感じるんだよね。


修理が終わったら地中レーダーで確認するか業者に掘ってもらい確認することになりました。


工事完了箇所はその都度メールで報告する形になりました。工事費用は無料にしました。


オレとしては持ち出す物が何も無いのと土魔法のレベルを上げるのに丁度いいからだ。

ウォーキングしながら出来る作業だ。


都知事さんはもうし訳ないから今回はひとつ貸しという事で話しがついた。後ついでに道の凸凹と道路の線も綺麗にするからと伝える。


道路関係は別部署や警察だから話しは通して置いてくれる事になった。道路の窪みや線もやれどもやれども追いつかないエンドレスパターンの工事だ。


知事室の花瓶が欠けていたのでついでに直してあげた。今度、都知事さんにご飯を奢って貰う約束をした。きっと美味しいものだろうと今から楽しみで仕方ない。


また連絡する約束をして部屋を出た。


違う所をうろちょろしないようにEVまで真っ直ぐ案内され。


残念。


『主人殿!主人殿!外にあのやばいやつがおりますぞ!』


ハチクロから危険を知らせる念話が届いた。

都庁から出たらあの棒を振り回したおかっぱ頭がいた。避けてスルーして行こうとするが前を塞がれた。


右側に避けたらまた前にいる。


左側に避けてもまた前にいる。 


ならばと180度方向転換して都庁に入って行こうとすると声をかけられた。 


『あああ、、、あのーでですね』


「えええとーー、、、あの急いでいるのでさよなら」


『サササイン下さい!』


「は?サイン?オレがか?」


『えええとネットでサイト欠かさずチェックしてます。秋葉原ギルドの方ですよね』


「あーーそうだけど」


『今日もいつもの暗殺者コス行けてます』

『こう影があるような雰囲気が凄い出ています』

『お店はいつオープンですか?』

『スタッフの紹介動画見ました』

『みんな可愛い子ばかりで、イイイケメンさんやばいです』


捲し立てるようにギルドの話しをされた。


「ホイ、コレどうぞ…」

カバンに入っていたクリアケースにサインしてリストバンドとニットキャップをあげた。後ドリンクバーのチケットもあげた。


(プルプルプル…ワナワナワナ…ビクン)

なんだか震えている様だったので…

「トイレに行きたいのか?」


『違う』

『心が震えているんです』


「なんだか怖いなこの子」

そりゃガクブルにもなるか。


早速リストバンドを付けニットキャップを被っている。


『あああの〜最後に質問が〜』


「あれだけ質問してまだあるのか?」


『コスプレ衣装の貸出しはありますか?』


「君〜〜目の付け所が良いそれ!採用!」

「あるよと!」


(ぴょんぴょん〜〜ピヨピヨ〜ン)

『やったー!やったー!ヤッターマン!』

飛び跳ねて喜んでる。大人が無邪気を通り越している姿を見た。


一緒にいるこっちが恥ずかしい。


早くここから離れたい。


じゃギルドに遊びに来て下さいとそそくさとその場から立ち去る。


(ぴょんぴょん〜ぴょんぴょん〜ピョン)

50m程離れて振り返るとまだ飛び跳ねて喜んでる。


「やっぱりあいつはやばいやつだ」


『主人殿あやつは阿呆であるか?』


「うん、多分ね」

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