第11話 合同紺羽の戦い <冬の陣>その3

「じゃあ〜もうひとりの子が来る前に自己紹介でもしちゃいましょっか」


 案の定、左奥の彼がこの場を仕切ってくれる感じか


「じゃあ俺からいきまーす。光安りょう三十三歳。現在彼女募集中!今日のこの会で素敵な子と出会うために今日まで生きてきました」


 パチパチパチ


 うん、やっぱりチャラいな。


「えーっと、はじめまして。森次郎です。名字も名前も普通です。兄貴がいるんですが兄貴は一郎ではなく太郎です。こいつらとは小学生時代からの同級生です。よろしく」


 パチパチパチ


 へぇー次郎さんか。ってことはみんな三十三歳で私より年上なんだ。意外。


「信長じゃ」


「…え、信長さん?」


 しまった、思わず聞き返しちゃった。


「なんじゃ?」


「あ、いえ。ごめんなさい。信長さんって…あの信長さん?」


「あのとはなんじゃ?どの信長のことを言っておる?信長じゃ。」


「あ、はい。信長…さん。よろしくおねがいします」


 信長じゃ…。そんな自己紹介ってある?しかもこのふてぶてしい態度…。何か演技の仕事でもしてるのかな。それとも罰ゲームか何かで今日は織田信長を演じなければならない…とか。いやでも、そんなノリを三十過ぎにもなってするかな。


「あ、えーとぉ。はじめまして。川嶋奈々です。今年で二十五歳になりました。雪さんとは職場が同じで普段は事務をしています。よろしくおねがいします」


 パチパチパチ


「はじめまして。斎藤雪です。本当は私なんかがこの場にいちゃいけないんですけど。奈々ちゃんのお友達が急遽参加できなくなったようなので、その子の代理で参加させてもらうことになりました。今年で三十歳になりました。よろしくおねがいします」


 パチパチパチ


「くっくっく」


 え…私…笑われてる?なんか変なこと言ったかな


「名を雪と申すのか。それはもしやお主のまるで生気のない顔色からつけられたのではなかろうな?」


 え……

 賑やかな店内のはずが一気に凍りついてしまったのは私のせい?


「ちょっ信長様!なんてこと言うんですか!?」

「そうだよ信長!お前久々に会ったけどどうしちまったんだ!?なんか来たときからずっとそのなんだっけ、小学校の頃やってた戦国ごっこだっけか?その時と同じ喋り方じゃねーか」


「あ、いえいえ私はぜんぜん大丈夫です。肌の色と名前が雪だからって理由で昔からよくからかわれてましたし」


「そうじゃろうな。では雪女と呼んでやろう」


 あの…さらにこの場が凍りついてしまったのは雪女のせい?


それにしても、なんて失礼な人なんだろう。普通初対面の人に向かってそんな事言える?面と向かって雪女だなんて…。いやいや、きっと罰ゲームか何かでそういう失礼な役を演じているだけ。ここで機嫌損ねちゃうと奈々ちゃんに申し訳が立たない。うん、切り替えよう。


「あ、あの。みなさん何飲まれます?私注文するので。みなさんビールでいいですか?」


「もちろんOKっす」

「はい!」

「はぁい、大丈夫です」

「かるあみるくじゃ」


 か、カルアミルク……。もしかして私、クリスマスなのにとんでもない会に参加してしまったのかも



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