二歩先


 ただ一定に時を刻んでいる、かと思えば、それは、舌の音であった。


 夕暮れの重厚な香りが鼻腔を突く。

 かつてはセピアでなかった視界。

 ああ、君であったか。


 儚い生命に魅せられたのか、七時八分を指す時計から蝶が飛んでいる。

 ああ、君であったか。


 これがまたどうしたものか、上手くいかないのがやるせない。

 ああ、私であったか。


 この木や石にも生命があると思いたい。はるか昔から受け継がれる無数の生命。

 殺してみる。


 それは、長らく探し求めていた甘い蜜のようだった。


 私は長く浅い眠りについた。

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