第45話 マシュー

鹿王を倒した。


ヤバイ奴だった。魔石を燃やして、覚醒するなんて、そんなんチートじゃん!


あれ!俺もやってたわ…。


俺の場合、腹の中で魔石を爆破させて、魔力の光の粒子状態を作り。魔石を再構築している間に、強引に意識を潜り込ませると、魔石の情報通り魔力が身体を形成する。


火鳥ファイアバード』は一時的に魔石の魔力を解放して、自身が魔力そのモノになり攻撃する。魔力が低下すると状態を維持出来ず、魔石に戻るのか?


本当に俺って何者なんだろう。魔石に入れる意識体とでも言おうか?


自分でも怖い。


魔石に意識はあるのだろうか?眠ってる様な感じ、受肉して意識が芽生えるのかもしれない。


そうならば、魔石が有れば魔物を生み出せる事も可能というか、ダンジョンはそれが出来る。


ダンジョンの何処かに魔石が現れ、魔力で受肉するのだから、何処からか送られて来る。その間が鍵となりそうな気がする。


俺は亜空間に中にある鹿の魔力の一つを取り出してみる。赤黒く指先ほどの魔石に、先程戦った鹿王のイメージを思い続けながら魔力を込める。魔石に俺の魔力が影響を与え真っ赤に変化していく、その魔石を亜空間に戻す。


今度は魔法陣を作り魔力を込める。

俺は召喚の準備をする。自分の分身を出した様に魔力を込める。

亜空間と魔法陣を繋ぎ、ゲートとする。


俺の可愛い子鹿ちゃん出てこい!


亜空間にある俺の魔力を込めた魔石が見える。

魔法陣と重なって、ゲートから召喚魔法の力で浮かび上がる。


今俺は鹿王を倒した時に、鹿王を構成していた魔力を吸収している。魔力は魔力、俺の魔力になっている。


その魔力を全力を持って、召喚された魔石に注ぎ込んだ。


魔石は燃え、形を曖昧にすると俺の魔力を取り込めるだけ取り込んだ。


眩い光が最大限大きくなり、ピカリと輝くと、静かに受肉してゆく。


光がだんだんと弱まって、やがて消えた。


そこには、真っ白な子鹿が誕生したのであった。


丸まって寝てるその姿はキノコの様なので、マシューと心の中で名付けた。


気安く付けたが、より絆が深まった気がするし、魔力もごっそり奪われた。


ヘトヘトである。



仲間達がやって来た。


新しい仲間、マシューを紹介する。

マシューは真っ白な子鹿で、まだ角は生えてない。寝ているので、それしかわからない。


ゴブイチがワナワナして、手をワキワキさせているが、みんなになんとか止められている。


とりあえず、プールを探して休む事にする。俺は寝たいのだ。






夢を見た。


鹿王の夢だ。


相変わらず美しく、有った。


俺を見ると、


踵を返し、

その背中が大きく膨らんで、

光の粒子になった。


どこかに帰ってしまった。


目を覚ますと、マシューがいた。

相変わらず寝ているが、愛おしく、腹に包んでもう一度寝た。

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