第37話 その後

狼王を倒すと、狼達は支配していた魔力の触手から解放され、蜘蛛の子を散らす様に森の中へ逃亡した。


俺達は最早、大狼など物の数では無いので、狼達の判断は正解だ。


しかし、怪我もしていないのに、留まる大狼がいた。石畳み中央のプールを見つめ、いつまで座り待機している。


いや、視線を感じる。俺だ、俺を見ている。


試しに石畳みを降りてゆくと、狼達は集まりはじめ、更に進もうと足が浮いた瞬間、狼達の群れが割れ、道が出来る。


あっ!これ気持ちいい!イヤ、やばい奴だ。俺を主としている。

どうしようか?

戦力は、せ、戦力…、じゅっと眼頭が熱くなるが、今は置いておく、


戦力は欲しい。


しかし、ゴブリンの俺でいいのか?


俺は石畳みに戻るとプールを覗き込む。弱々しい光を放つオーブが沈んでいた。


今は少しでも情報が必要だ。俺はそっとプールの中の水に手を入れる。


《…、…解放…。》


俺の中にオーブの意識が流れ込む。ノイズが多く、理解出来る事は少ないが、解放か、エリアボスを倒すと何かしらの制限が解放されるのか?

わからん。わからんが狼達から主の認定をされているみたいだし、いっか。


狼達の数は30頭、一気に戦力が増えた。

狼達の元へ舞い戻り集団の意識を感じる。確かに俺からの魔力が糸の様に狼達の一頭一頭へ伸びていた。絆を強める為にその糸に魔力を込める。幸い今の俺には、有り余る魔力が吸収出来ている。30頭全てに充分な魔力を与えられてた。


狼達は魔力が限界まで溜まると、打ち震え、遠吠えをはじめた。


俺はゴブイチ達を呼び、10頭ずつの集団に分けると魔力の糸を纏め、ゴブイチ達に握らせる。


更にゴブゴロウとゴブサンの糸をゴブイチに握らせる。


ふう〜、管理はゴブイチに任せてしまおう。


俺とゴブイチには光輝く魔法の太い糸が結ばれた。


よし!これで狼軍団の事は置いといて、俺はマジックバックからはじめに倒した狼の魔石を取り出す。


魔石に充分な魔力を注ぎ込むと、俺は一気に呑み込む。


腹の底の魔力で狼の魔石を燃やすと、爆破する。俺の身体が光の粒子になる。俺は意識を懸命に狼の魔力の中に入れると、光の粒子が狼の魔石に集まり、形作る。


そこには真っ白な子どもの狼がいた。


慌てて集まって来ようとする一同を、ゴブイチが凄まじい気迫と共に長剣の一振りで抑え込む。


静まりかえった空間に、

ゴブイチの足音だけが聞こえる。


ゴブイチは長剣を捨て、跪くと俺を抱え、頭、首、背中から尾っぽまで、丁寧に撫でつけ、もう一度抱きしめた。


ゴブイチはモフモフが大好きだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る