第28話 名付け

別に決戦など無いかもしれないが、雰囲気を大切にする俺。


充分な睡眠を取って目覚める。

焚き火の前まで行くと、ゴブイチが椅子を用意してくれ座る。


すぐに器が差し出される、温かい白湯だった。身体に沁みる。そのまま朝食を済ませて、野営地を出発した。



集団が強くなると共に俺も頑張って強くなった。

杖は子ども用なので、溜めが効かない。危険だからだ。早く正確にと頑張って練習してると的に当たって爆発する様になって来た。偶になる程度だが、魔力の込め方のコツを掴みかけている。呼び名は『魔弾』に変更した。長いし、爆破し出したからだ。


『スラッシュ』は相変わらず黒剣でしか発動しない。射程は僅か1メートルしかないが、初見殺しの所があるので、かなり使える。後の先、受けて崩して、切る!繰り返して練習する内に、機先を制して討ち取る事も出来る様になって来た。


左手の杖で速射の『魔弾』を連射し、狼を寄せ付けず、捌けなかった狼の攻撃を黒剣で受けて『スラッシュ』で始末するのが俺流のスタイルになって来た。


魔石の格がゴブリンマジシャン、ネイムドでハイゴブリン?なのか更に「冒険者」の通り名を頂き、今は将として覇気に満ちている。負ける気がせん。


魔力量もかなりありそうだ。技を使う程、効率化されていくし、魔物を倒すと魔力を吸収出来るしで、使いまくるのにそれ以上の回復をしている状態だ。



集団で進むと囮の役割の二匹のゴブリンが五匹の狼供を連れて来る。


囮役の二匹のゴブリンは俺達の合間を擦り抜ける、すると六匹のゴブリンが槍を構えて動き出す。手柄欲しさか二匹の槍ゴブリンの動きがいい!


一匹の槍ゴブリンがスッと狼の前に進むと身を屈め、槍を狼の心臓辺りに刺してそのままカチあげる!引いた槍の石突で、二匹目の狼の左首を突いて、引き倒した。そのまま正面の狼に槍を構えて睨みつけると、もう一匹の槍ゴブリンは、雄叫びを上げて別の狼の頭を槍で叩きつける。バコっと頭が地面に埋まる程の威力に、狼達が怯むと、持ち味の機動力が失われ、足が止まった。

そこへ残りの槍持ちゴブリンが囲み危なげ無く、瞬く間に五匹の狼を倒してしまった。


全く見事な手並みだった。槍ゴブリン達や囮ゴブリン達の背中が大きく輝いて見えた。ゴブリン達の成長が嬉しかった。


「ゴブイチ!!見事だ!」

ギヤッ!とゴブリン一堂が頭を下げて、跪く。

ゴブイチに囮ゴブリンニ匹、槍ゴブリンニ匹を連れて来いと命じる。


わかりましたと頷くと、ゴブイチは

俺の前に四匹のゴブリンを並ばせ、その横に自分も並ぶ。


「褒美をやる!

冒険者ジョエルの名に於いて、

囮役ゴブリンをスカウトとして、

『ゴブニン』『ゴブサン』

槍ゴブリンをソルジャーとして、

『ゴブシロウ』『ゴブゴロウ』

と名付ける』

最後にゴブイチは副将とする!

励め!!』


五匹の魔物の瞳にうっすら涙が滲む。

この忠臣に報いねば将とは呼べぬ!


『ゴブニン』の頭に手を翳し、名前を呼びながら体内の魔石に入る。俺の魔力と繋ぎ、魔石を俺の魔力に染める。

『ゴブサン』

『ゴブシロウ』

『ゴブゴロウ』

最後に、『ゴブイチ』にも同じ事をした。


立ち眩みが俺を襲う。


魔力がごっそり減って、名付けが成功してしまった事が解った。

倒れない様、歯を食い縛り、足に力を入れる。

ゴブリンの表情も知能も戦闘力も向上している事は解っていた。環境の変化と実戦による経験により魔石が進化している可能性があった。

進化は禁忌を犯す必要が有ったが、他に手はないか?考えてはいた。

すぐにネイムド、名前持ちが浮かんだが、俺次第な事も有り、自由な役割で俺好みの名前や役職が可能か試したのだ。結果は五匹の全てが成功した。

禁忌を犯さず進化する全く新しい亜人のゴブリン達が誕生した。




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