第20話 祭壇

「おはよう御座います」


門番に挨拶される。

ホブゴブリンの様だ。下位のホブゴブリンと違い、随分と知的な印象がする。


俺は客室を出て、翁の案内で、門番の守る装飾された鉄の扉の前に来た。


門番は翁を確かめると、おもむろに扉を開け、俺達が中に入ると固く扉を閉じた。


扉が閉まると、真っ暗だ。

翁は「火よ」と呟く、するとたちまち火が壁の松明に順々に灯る。

下へ続く階段が現れた。


翁が降り始める。

「随分賢そうですね」

「亜人。魔物とは違うのじゃ」


多分進化前は魔物、進化後は亜人?

俺は魔物から亜人になったのか。


階段を降りるとまた扉があった。

「土よ」

翁が呟くと左右の扉がこちら側にガタゴトいいながら開く。


中に入り扉が閉まると、神秘的な光が前方から降り注ぐ。


中は数十人が並べる程の広さで、天井も高かった。突き当たりの壁には噴水があり、水底が淡く光を放ち、水が揺らぎ、室内が噴水の光で揺らめいていた。


床には石で大きな円が描かれ、その手前では、蹲り思い思い祈りを捧げるゴブリンの姿がちらほら見える。


「ここは我々の神聖なる祭壇じゃ」


翁もその場で膝をつき祈りはじめた。


俺は神々しい空間に静寂を感じた。

目を瞑り自分の内側に浸り、神聖なる光をただ浴びていた。


「では、参ろう」

翁が祭壇まで歩いてゆく、

俺も翁の後を追う。


「何か問題でも?」


「あゝ、…神が、…。

  

く、…狂われた。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーー

《…あっ!…れ?

…、ファイ…ルて、…んでなかった⁉︎


ぷっ、くっくっくっ、ひっっひっ、

ひーはーっなによっ、、…発、


くっくっくっ…っくっくっ、…はっはっはっはっはっはっ、はっ…が、腹が痛い。くっ、苦しい、息が…できない!

助けて》


《$1°^*☆€?》


《陰…、ぷっははははははは、ダメ!それ以上私のツボを、お、おさ、おさ、押さないでぇ〜、ハハハハハハハハハァ》


《×€〆〒:」…>|¥#》


《ハハハッ!良い…。そん…ん。こんなに…かったのなん…、ここに…からあったかしら、…ティーなんて…たいつか…しね。あ…のが…まれるからやり…があるん…ない!…カがボ…を…で…すなんて、…くめちゃくちゃ…。ぷははははははは…》


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺と翁は顔を見合わせる。

確かに神に何かの異常が起きている。

苦しみ、助けを求めている。

俺の中に言い知れぬ不快感が広がる。


「やはりお主にも伝わったか」

「ええ」


それは翁の指示、祭壇の噴水の中に手を入れた時だった。見た事ない判別不能の文字情報が走馬灯の様に流れた。内容は不思議と理解できたがなんの事やら訳がわからん。


「お主には高い魔法の才能と神との親和性がある。儂の後を継ぐとよい」


「私がですが?」


「あゝ、この城の最長にして最高位の司祭、叡智のゴブリン。

『千里眼のジョセ』の後をな!

励め!!」

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