第11話 ダウングレード
何故?ゴブリンになってしまったのかと問われると、話しを吹っ飛ばされたゴミ捨て場の中に戻さねばならない。
ホブゴブリンの棍棒に打ちのめされ、丸盾はひしゃげ、短剣もどこかへ飛ばされてしまった。左腕は激痛が走り、最早使いものにはならないだろう。
幸い魔力を少し吸えた様で、マジックバックは使えそうだ。しかし怪我の回復など望めそうにない。
デカ鼻のゴブリンをヤル為に、全力で槍に魔力を注ぎ込むなど馬鹿な事をしたものだ。
簡単に魔力をイメージし、威力を調整する為に名前を付けておけば良かったのだ。「魔槍投げ」とか⁉︎「パワーランス」とか?なんでもいいが後でカッコいいヤツ考えよう。
とりあえずこの状況は詰んでいる。ゴミにハマり身動きが取れない。冷静になって考えないと死ぬ。今出来る事はマジックバックの中にある僅かなアイテムを取り出すだけ、希望は魔石しかない。
はじめて倒したゴブリンの魔石をなんとか取り出し、右手に握り締める。
最初薄暗かった緑の魔石も今は輝いて見える。気のせいだろうか?入ってみよう!深く深く、助けてくださいと祈りながら、、、。
ゴブリンの生態が伝わる。見えてくる。この洞窟に魔石が出現すると魔力が集まり受肉する。至る所でこの現象は起きた。ゴブリンだけでなく、上位種のホブゴブリンも、更に派生して様々な魔物が出現しているようだ。
弱いゴブリンはまとまって行動し、助け合う事で生存率を上げる。仲間を殺す事はしない。魔石にプログラムされたルールがある。しかし稀に事故が起き、[同族殺し]が現れてくる。そこで進化の道が開かれるのだ。魔力を溜め、「同族殺し]をクリアーする事で、ホブゴブリンか?ゴブリンマジシャンなどに進化していく。選択出来るのか?これは重要な事だ。間違えたら死ぬしか戻る方法はない。
何か引っかかる。違和感というか?はじめから出現する魔物は上位種も含め様々だが、条件を満たす事で進化する。この洞窟では、魔石にプログラムされた情報に魔力が加わる事で受肉し魔物が生まれる。死ぬと魔力を放出して魔石を残して消える。魔石にも魔力は存在し、自分がした様に魔力の干渉で色などが変化する。
そうだ!自分だ。自分は何者か?魔石と似た様な存在の気もする。しかし人間なのだろう。自分の中に魔石がある様には思えないし、感じない。人間には魔石が無い。
この洞窟は魔物が何故無尽蔵に出現するのか?人間だけが特別な役割のある存在。魔物と戦わせる意思や思惑を考える。ここはただの洞窟ではなく何かしらの役割のあるダンジョン。
自分は何か?目的があってこのダンジョンに入り込んだとしか考えられない。自分には記憶が無かった。自分の中に魔石の機能と同じ様な感覚を常に感じていた。この身体自体が魔石の役割と考えると素直に納得できる。しかも中身が空っぽだ。記憶が無い!身体は借り物で、魂の様な意思、本来の目的を達成する為にこのダンジョンで目覚めた筈だ。
答えはこのダンジョンと本来の自分自身の中にきっとある。
ダンジョン、魔石、魔力、魔物、そして受肉、出現。今ある中で再現は可能か⁉︎
出来なければそこで終わる。
いや道は必ずある。
目を開き、魔石を見つめる。眩しい程の輝きを感じる。足りない⁉︎何か切っ掛け、引き金、爆発、融合!!
魔石を口の中に入れた。
何も起きない。
噛まずに飲み込む。
まだ何も起きない。
腹の底の魔力を魔石に注ぎ込む。
光りが爆発する。
《…確認、…。》
《ケ…ン・…アムの…肉…析…了》
《魔石…アー。》
《ゴブリン…ダ…ロー…》
《ケイ…の…ダウングレード…》
《…肉…転生…》
なにやら微かな声でアナウンスさせる意味不明な音を聞きながら、身体がゆっくり崩壊していく、身体だったモノが魔力に変換され、魔石に吸い寄せられ、魔法陣が展開する。一瞬にして受肉した。
そしてブカブカの服を着たゴブリンが出現したのだ。
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