#29 一斉撃ち方

≪さぁ、ミナズキ様が召喚された駆逐艦デストロイヤーによる潜水艦サブマリンと呼ばれる“生物”の狩りと行こうじゃあないか!≫


「・・・聞いたな? 総員、対水上戦闘用意! カトリーナ、ミナズキという奴を調べろ」

「了解」


 超高性能な逆探機を使って、機関停止している駆逐艦から傍聴した会話を聞いていた発令所内の面々は深刻な顔色をしていた。傍聴会話が入った録音機から無音が流れ始めるとノヴェラスは各員に指示を出し、さらに深く考え始めた。


「(もしも、村雨旭のような同郷日本人の転生者が居るならば、駆逐艦島風が出て来たことも分かる。――しかし、何かが引っかかる・・・それはなんだ? この異様な共通点地球出身は?一体、なんだ?)」


 皆から報告が上がる頃に考えを一度保留し、戦術長に指示を出し始めた。


「艦長、各員の準備が完了しました」

「・・・そうか。 よし、魚雷戦用意。目標、敵駆逐艦――雷数2本、発射始め」

「ノーヴァ、魚雷装填。お願い」

「うん!任せて! 私の攻撃、避け切れるかしら?」


 そういうと魚雷発射ボタンを押して「発射始め!」と、発令所内に聞こえるように声を上げた。それに被るように今度は戦術長に「完全浮上、砲戦用意。 弾種は榴弾、沈むまで撃ち込め!」と指示を飛ばした。


「はい! 主砲用意」

「――完全浮上、砲戦良いよ!」

「合点承知、私の主砲ちゃんを甘く見ちゃだめよ? 照準誤差無し、榴弾装填!」


 航海長と砲術長のやり取りを聞いていたノヴェラスは、戦術長レイクッド・ディルスに砲撃指示を出した。


「撃ち方、始め!!」

「――撃ち方、始めぇ!!」


 主砲から出る音が艦内に響き渡る中、「駆逐艦、撃沈破オーバーキル確認!」という聴音手レヴェル・ノーラの声が熱くなってアドレナリンを放出していた脳に響き渡った。


「(――やっぱ、潜水艦以上の化物性能だな。このふねは)」


  ○○〇


 駆逐艦島風を撃沈破したアディス級潜水戦艦は、その後。ヤマト皇国が白色の花火を夜に3発撃ち上げたのを見たので軍港に進駐しんちゅうする事にした。


「――ここがヤマト皇国か。 前世と変わらないな」

「あ、隊長。あの人、皮を履いていますよ!」

「皮・・・? ああ、あれは革靴だよ。相手を歓迎とか、自身が仕事に行く人は履く靴なンだよ」

「へぇ~・・・クァグツ、クァグツ覚えたよ!」

「(やっぱ、発音が・・・あれだな)」


 一行はレイクッド隊を置いて、ヤマト皇国内に上陸して街を眺めながら皇居である立派な屋敷に向かっていた。


「――ここが、皇居・・・か?」

「なんか・・・、普通のギルドっぽいですね」

「あ、ああ・・・。(この世界では、こんな感じなのか? いや、これはフェイクだ)」


 ノヴェラスは背後に気配を感じたので、護衛として来ていたネルス・ネラにハンドサインを送った。


 それを見て受け取ったネルスは気配を殺してその人物のいる場所まで行くと、ものの5分で捕えて来た。


「――盗み見ていた者を捕らえてきました、隊長」

「そうか、よくやった」


 気配がしたほうに振り向くと同時にネルスが気絶した不審者を地面に放り投げ、自慢げにドヤ顔をしてきた。相変わらず、可愛い奴だ。


 フードを被って居たのでそれを取ると、一緒に来ていたメシアが「あっ!」と声を出した。


「ん?面識があるのか?」

「はい・・・村雨むらさめあきらの姉の人物です、名前は確かカオリだったような」

「あ、姉だと⁉」


 予想外の事に驚いてしまったが、まぁ・・・マジデスカ。


 意識を取り戻すまで近くに居続けて結局、意識を取り戻したのは夕方だった。


「う・・・、ここは――ハッ! しまった!」

「まぁ、待てよ。 隊長が話を聞きたいらしいし、それにあたしも気になるから」

「・・・っ、お前に語る事など――!」

「目が覚めたのか。 さてと、メシアを呼んできてくれるか?」

「了解、隊長」


 メシアという言葉を聞いた事で戸惑っている中、軽く話を聞くことにした。


「まず、俺はアディス級潜水戦艦というエルドリア海で艦長をしている転生者だ。わけ合って、ここに居るが・・・、俺達は村雨旭という人物を探している」

「旭・・・旭って、誰ですか?」

「おいおい、まさか自分の弟を――」

「弟って誰ですか?それに私の名前は、佳織かおりですが違う村雨ですよ。きっと――」

「待った、虚言うそもいい加減にしてくれ」

虚言きょげんじゃないです!」


 そこにメシアとネルスがやって来たので「ああ、良い所に。 メシア、本当にこの女性は――」と確認すると「はい。 村雨旭の姉です」と答えた。


「嘘よ!噓! 私には弟なんか、居ない!知らない!」

「え・・・?」


 困惑している2人に「さっきからこうだ、全然知らないみたいだ」と、半分呆れながら「一体、どうなっているンだ?」と言った。

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