運命、信じますか?〜職場恋愛〜

ハル

第1話 運命、信じますか?

今日から、新入社員が来る。


「今日から、宜しくお願いします」



彼の名前は、


栢木 留依(かしわぎ るい)。20歳。


今日から新入社員として来た男の人。



私の名前は、


三住 あおい(みすみ あおい)。30歳。


ここの職場に務めて、10年を過ぎた。


他の部署もあるも、出会いがない。


逆に若い世代の子達が、寿退社する事が多い。


まあ中には辞めたりして長続きしない子もいたりするけど、もう何度、その場面に遭遇しただろう?



「三住さん、彼の指導係を頼むよ」

「えっ!?…わ、私がですか?」

「大先輩だからね。頼んだよ」




そんな彼の指導係になった。


仕事を1から説明。


彼に限らず、私の部下みたいに皆が頼ってくる。


ありがたいけど、後輩の面倒係。


まあ、嫌われるよりましか。


気付けば、そう思うようになる自分がいる。


と、いうより、そう思った方が楽。



ある日の休憩中。



「三住さん」


「栢木君」


「三住さんって彼氏いるんですか?」


「えっ?彼氏?唐突ね。いないわよ」


「へえー…仕事出来るし、申し分ない容姿なのに勿体無ですね」


「そんな事ないわよ。それに後継ぎがいないだけよ。もう、10以上もいると色々あったから。辞める人や寿退社とか…若い子が次々と辞めて行くんじゃ、そこそこの年齢しか残らないものよ」


「じゃあ、今年こそは卒業出来れば良いですね」


「卒業って…学生じゃあるまいし」




彼はクスクス笑う。




「そういう、栢木君は彼女いるんでしょう?イケメンだし」


「いますよ」


「やっぱり。結婚とか考えてるの?」


「それは、まだ」


「そうなんだ。だけど、彼女を余り待たせると愛想尽かされちゃうよ」


「そうですね」




私達は、少し話をして仕事に戻る。




ある日の休日の事。




「あれ?栢木君?」



女の人と一緒にいる所を見かけた。




「彼女かな?美人な人」




私は挨拶すべきか迷うも見て見ぬふりをしていた。


彼女に誤解させる行動はとりたくない。と、思ったからだ。


まあ、社会人として挨拶は基本中の基本かもしれないけど、私は、あえて、そっとしていた。




そんなある日の事、私は残業をする羽目になった。



滅多にしない、ミスの為、私は残業する事に。



夜。




「三住さん」

「えっ?あれ?栢木君!?どうしたの?」

「お腹すかせてるんじゃないかと思って」

「ありがとう!」


私は笑顔でお礼を言った。



「………………」



「ん?何?どうかした?」


「い、いいえ」


「そう?」


「はい。だけど…三住さんがミスって珍しいですね」


「えっ?あー、人間だし間違いはあるわよ。完璧な人間なんていないから」


「まあ、そうなんですけど」



私は、残りを済ませ帰る事にした。


その間、少し手伝ってくれる栢木君がいた。




そんなある日の休日の事だった。


「三住さん」

「あれ?栢木君?」

「お一人ですか?」

「うん。そういう栢木君は彼女とデート?」

「いいえ。一人ですよ」


「そうなんだ。えっ?彼女いるんだし休日はデートでしょう?」


「いいえ。俺、一人で行動するのが好きだから、休日だからって必ずデートするわけではないです」


「へえー」


「三住さんは、彼氏と休日は毎回デートしたい感じですか?」


「う〜ん…どうかな?そうとも限らないような。デートしたかったら逆に出掛けようって言うかな?多分…。もしくは、何処でも連れて行ってくれる彼氏見つけるかも?」


「あー、確かに、それはありかもしれないですね」


「でしょう?」



私達は少し話をして別れた。



その日、しばらくして私の携帯に一本の電話が入った。



「ん?えっ?栢木君?」



私は、一先ず電話に出た。



「もしもし?」

「三住さん?今、大丈夫ですか?もう、家ですか?」

「大丈夫だよ。まだ外出中」

「用事って済みました?」

「用事?うん、済んで街ブラついてた」


「そうなんですね!」

「うん」

「良かったら合流しませんか?」

「えっ?あ、うん良いけど」

「今、何処にいますか?」

「今?えっと…」




私は場所を伝え、私達は合流した。



「でも、良かったの?彼女いるんだよね?」

「えっ?…まあ…」

「誤解されたら知らないよ。私、誤解解かないからね」

「大丈夫ですよ。職場の先輩と出掛けると報告してあるので」

「だったら良いけど」

「大丈夫です」




私達は食事をとる事にした。



お互い色々な事を話す中、共通点や趣味など合う事が判明した。


これ程迄に合う人なんてるもの?


私は一気に親近感が湧いた。




そんなある日の職場での休憩中の事。



「三住さん、ちょっと良いですか?」



栢木君が、私に声を掛けてきた。



私達は、余り人目のつかない所に行く。



「今週末、予定入ってますか?」

「今週末?ううん、大丈夫だよ」

「じゃあ、出掛けませんか?」

「えっ?私と?彼女は?」

「用事あるみたいで」

「そうなんだ」


「映画のチケット、友達か要らないからって譲ってくれたのは良いんですけど、彼女は用事あるのと、一応、映画のチケットの事話したら、興味ないって断られちゃって…ていうか元々彼女の好きな映画じゃないんですよね。これ…」


「あー、そういう事?」


「はい、だから良かったらなんですけど…」


「分かった。良いよ」


「ありがとうございます」




週末、私達は出掛ける事にした。



当日、久しぶりのデート感覚で過ごすも、良く考えたら彼とは10歳の年齢差。


はたから見たら、どういう風に見られているのだろう?


姉弟?


流石にカップルには見えないだろう?と、ふと思う。


すると、彼は



「三住さん、どうかしましたか?」


「えっ?あ、いや…私達…どういう風に見られてるんだろう?って…」


「えっ?あ〜、別に気にしなくても良いんじゃないんですか?」


「それは…そうなんだけど…」


「気になるんですか?」


「微妙…かな…?」



「………………」




すると、私の手を握る。




ドキン…



「栢木君?」



スッと私の唇に人差し指が触れそうで触れない距離で指を止める仕草をする。



ドキン…



「下の名前で良いですよ」


「えっ?」


「そして、俺は、あおいさんで呼ばせて頂きます。どう?あおいさん。せっかくの休日だし仕事関係も抜きで敬語は控えます。たまに出ちゃうけど」


「…下の名前…留依…君?」


「はい、それで」



私達は楽しく過ごした。



それから何度か出かける事が増えた。


そんな私は彼の色々な部分を見るようになって、気付いたら想いを寄せ始める。




そんなある日の事。




「ねえ、留依君、彼女いるんだよね?」

「…いますよ」

「そうだよね?」


「あおい…さん?」


「…私…留依君の何?友達?彼女よりも私と出かけてばかりいない?大丈夫なの?…私は…彼女でも何でもないんだよ…私だったら不安だよ…」


「…あおいさん…すみません…あおいさんを辛い想いさせてしまってるみたいですね」


「えっ…?」


「確かに彼女はいます。…でも…今は…お互い距離をおいてるんです」


「…それって…私のせい…?」


「違います!あおいさんに会う以前からです」


「…良いよ…正直に言って!隠さないで言ってよ!留依君っ!」


「…あおいさん…」


「…私を…これ以上…惑わさないで…!…留依君を夢中にさせないで!深入りする前に…お願い…」



「…………………」


「…あおいさんこそ…自分に素直になって下さい…」


「えっ?」


「何を躊躇っているかは分かりませんけど…良いんですよ。俺の前だけ…俺と2人の時だけは…素の自分でありのままでいて下さい」


「彼女がいるのに…どうして…?簡単に言わないでよ…」


「…あなたが気になるからです」


「…えっ…?」


「そうでなければ出掛けたりしません」


「…留依…君…」


「俺…運命とかって信じないですけど…あなたに出逢えた事で人生が変わりました。共通点が多い事知って、そういう出会いもあるんだって…だから…あおいさんの事、もっと知りたいです」



「……………」



「彼女と別れるまで、待ってて欲しい」


「留依君…本気で言ってるの?」


「本気です」



「……………」




その後、留依君とは、数ヶ月の月日が流れ、友達として仲良くしているものの、どういう状況なのか分かりはしない。


そんな中、私は、友達の付き合いで、合コンに参加。


相手に大層気に入られてしまい、何度も断った。


そんなある日。



「一回、出掛けて欲しい」



そう言われた。


気が進まない中、私は行く事にした。



数日後。



「あおぃ…三住さんっ!」

「留依…栢木君!」



お互い、つい名前を呼ぼうとして、2人して笑ってしまった。



「数日前、男の人と一緒にいる所、見かけたんだけど?」


「えっ…?あ…うん…」


「俺がいながら浮気したら駄目ですよ」


「浮気って…」



ふわりと抱きしめられた。



「留依君?」

「もう…独り占めしたいです」




ドキン…


「彼女とは、まだなんでしょう?」

「…あおいさんと早く出会ってたら良かったのに…」

「留依君…私は待ってるから」

「俺より良い男現れても?」


「留依君より良い男現れても大丈夫だよ」

「本当に?」

「うん」



抱きしめた体を離す。



次の瞬間。


私の顔を隠すように、私にキスをした。


一瞬の出来事だった。



そして、再び抱きしめる。



「…ごめん…あなたが好きなのに…何も変わらないのが辛い」


「留依君…」



彼は、きっと辛い日々を送っているのだろう?



「いいよ。ゆっくりで良いから。大丈夫。待ってるから」




ある日の事だった。




「あの!」



私の事を誰かが呼び止めた。


女の人だ。




《誰だろう?》



「すみません…三住 あおいさんですよね?」



《えっ!?私の名前…》



「私、栢木 留依の彼女の 滝川 あやめって言います。留依が、お世話になってます」



ドキッ



「栢木君の?いいえ、そんな私こそ色々と助けてもらって、私の方こそ、いつもお世話になってます」


「何か…留依、職場に好きな人がいるって言ってたから」




どう返事をすべきか?


紹介するのもおかしいし…


ていうか、彼女である子が私に尋ねてくるなんて…



「すみません…何か突然来ては探るみたいな事して」


「いいえ」


「それじゃ失礼します」


「はい」



私達は別れた。




次の日。



彼からメッセージが届き、仕事が終わってから会う約束をした。


私達は待ち合わせをする。




「すみません」

「ううん。良いけど」

「すみません。昨日、彼女来たみたいで」

「あ…うん…まあ…」


「すみません…」


「ううん。大丈夫。別に留依君が謝る必要ないよ。留依君は悪くないから」


「いいえ。俺が、あおいさんの事、好きになったせいで」


「…留依君…」



スッと片頬に触れる。



ドキン



「…ごめん…」


「えっ?どうして謝るの?」




首を左右に振る留依君。


私は留依君が遠くに行く気がしてならなかった。





数日後。


その後、留依君が別の会社に異動になったのを聞いた。


何も知らされず、突然の別れ。


メッセージ送るも、すぐに返事はこなかったけど、



彼から




『ごめん……。落ち着いたら連絡します』




そういうメッセージが送らてきた。


つまり、それってしばらく連絡しない方が良いって事だよね?


寂しい気持ちになるも、留依君なりの考えなのだろう?



そう思う事にした。




それから数ヶ月。



留依君からメッセージが届いた。


日時と時間を書かれたメッセージ。



私達は待ち合わせをする事にした。



合流し、食事をする。





「あおいさん、もう少し時間良いですか?」

「うん、良いけど」



私達は、食事を済ませ留依君の車の運転で移動した。


向かった先は、高台にある、とある式場。


散りばめられた宝石のように綺麗な夜景。


海もそこから、一望出来る景色は、言葉を失う。




「…凄い…綺麗…」



ただ、その一言だった。





スッと背後から抱きしめられる。





ドキン…



そして、私の左手を掴む留依君。



「…留依君?」



振り向かせ向き合う私達。



「三住あおいさん」

「は、はい」

「あなたが好きです!」




ドキッ


ストレートに告白された。  



「…留依君…」


「今まで待たせてすみません。俺と結婚前提でお付き合いして下さい!」


「えっ…?…結婚…前提!?」



「はい。返事はすぐにとは…」

 

「今、言わなきゃ、いつ言うの?」


「いつでしょう?」



私は、留依君の胸に飛び込んだ。



「お願いします」


「えっ…?」




私は、体を離す。


私達は見つめ合う。


すると、留依君は再び抱き寄せると、一旦、体を離し、キスをした。


そして、私の左手の薬指には、指輪がはめられた。




「改めて宜しくお願いします」


「はい」






あなたは


運命、信じますか?










〜 E N D 〜












 



  




























































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

運命、信じますか?〜職場恋愛〜 ハル @haru4649

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ