第20話 冬の終わりに



北風が吹く大地に

たくさんの大きな木が

真っ直ぐに太陽へ向かう森で


時折強く吹く風に

大きな木の先が揺れ

明るい太陽が顔を覗かせ

その時だけは私を暖かに包み込む


私は

未だ吹き荒ぶ風の中で

森の木立から覗く太陽に包まれ

大地に座る


ローマ帝国皇帝顧問

ヘンリー・コルネリウス・アグリッパの

神秘哲学という論文の中に

南風はNotus

北風はBoreas

西風はZephyrus

東風はEurus

という記述がある


これは

アウグスティヌス時代の

マルクス・マニリウスの詩篇の中で説明できる


詩は


東と西と北と南

これらの方位は互いに向き合い世界を分ける

これらの四方位から多くの風が飛び来たり

空虚な空を駆け抜け戦い騒ぎ立てる

北風の荒ぶるボレアスは氷と雪をもたらし

東から優しいエウルスが吹き荒れる

炎熱の南からアウスターが投げ込まれ

心地よいゼフィルスが沈みゆく太陽を冷やす


と描かれている


どうしてバチカンの神父が

このような論文を書いたのか?


この論文を指し示す詩にどのような意味があるのか?


大地に座り

強い北風と太陽の光を受けながら

移りゆく季節の狭間で

答えの出せない詩に思案を寄せる

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白い夜 織風 羊 @orikaze

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