第7話「救世主は近くにいる」
僕が救急車で運ばれた時。
僕がお金に困って借金をするしか無くなった時。
僕が追い込まれるとしてしまう行為、足の爪を剥がせるだけ全部剥がして廊下に血の足跡が出来た時。
薬を超過で飲みすぎて真っ直ぐに歩けなくなった時。
僕が直面した困難に負けると解っていても戦いを挑んで、結果負けた時。
全てが終わり、骸の様にぽかんとしている僕に救世主は毎度言うのだ。
「どうして言ってくれなかったの?」
「どうして一人で抱え込むの?」
「家族でしょう?私たちは!頼ることは恥でも何でも無いのよ!?」
ありがたい言葉に聞こえるだろう。
見ていた他人にしてみれば素晴らしい人格者の言葉だ。
見ている人にしてみれば、だが。
本当のことを言おうか。
救急車が来る時に、近所の人に知られたら恥だ、サイレンを鳴らすなと電話しろと怒鳴り散らしてただろ。仮病のくせに誰が救急車を呼んだんだと喚いていただろ。それを誰かに僕が言い出さない様に一緒に乗り込んで見張っていただろ。搬送先の処置室の中に入って来るなと言われても悲劇のヒロインぶって入って来ただろ。手を握るという名目で。
職を無くした僕が光熱費を払えず、助けて欲しいと言った時、カンケイナイデースって芸人の真似しながら言って、舌を出したよな。見た時に本気で引いたわ。土下座するのを期待してただろ。全てを借金で支払った後になってから他人が見てる前で頼って欲しかったと喚いただろ。
僕が無謀な試験に挑戦した時は出来る訳が無いと嘲笑うくせに、合格した途端に昔からやればできる子でしたと他人に言って周っただろ。
僕の夢を小さな頃から才能も無いくせにと常に笑ってただろ。進路相談で校長と一緒に散々会議室で才能も無い癖にって嘲笑って罵って、死んで生命保険で学費を払えば?って大笑いしたよな。それなのに何かの賞を取る度に、昔から才能があったんですって他人に言って周るよな。
僕はアンタが大嫌いだよ。
だから僕は産まれて来たく無かったんだ。
毎日毎日学校と塾に漬けられた少年期、その中に僕の意志は全く無く、行きたく無くても無理矢理連れて行かれてさ。
僕はこの救世主が本当に本当に嫌いで、今も生きてる実感が無い。
他人の目を気にして殴る蹴るをしない代わりに、同等の罵倒、嘲笑、無視。
僕はずっと重い手錠を鎖で繋がれて生きている。
逃げようとしても物理的、金銭的に退路を断たれ、握り潰される。
八つ当たりの的として僕が必要なんだろう。
救世主は金持ちだ。
とにかく金を持ってる。
自分で稼いだ金では無いのが特徴だ。
媚びるのがとにかく上手い。
何でこんなことを書いたのかというと、僕は本当に産まれて来たく無かったんだよってことを解って欲しいんだ。楽しい思い出が思い出せ無い。苦しいだけの終わりの無い毎日を生きてた。今も生きてる。
いつ終わるんだ。
救世主は僕を助けるふりをする。
昨日も今日も明日も明後日も。
救世主は近くにいる。
でも僕に少しの幸福も与えてはくれない。
救世主は僕だけを助けない。
僕がこの世に誕生した時にかかった費用を全額返せと奇声を上げる。
だから産まれて来たく無かったんだよ。本当に。
どうして僕が産まれたのか考えたことがあるか?
救世主は無知を美徳としている。
性別を武器にする。
救世主は近くにいる。
救世主は僕だけを助けない。
救世主は近くにいる。
救世主は、
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