第9話 不登校な友人


 その後も段柳祐介はほとんど学校へ来なかった。それでよく学校は許しているなと、何だか裏で金が動いているのではないかとあらぬ噂は何度か上がったが、すぐに消えた。

 僕は表だって彼と遊んでいることを、彼の家に遊びに行っていることを打ち明けなかったから、誰も友人関係にあるとは気がついていなかった。 ただ、もちろん段柳のあらぬ噂話には意識して立ち入らぬようにしていた。友人らが段柳のことをあれこれ言っているときも、「へえ」とか「はあ」とかで流していた。

 彼に義理を感じてそうしているのだった。


 いつも彼が僕を誘ってくるのだが、家に行っても漫画を読んだり、ゲームをしたり、お互いに別々の遊びをして、何も会話しないということもあった。 


 高校を卒業したのをきっかけに僕は彼に会っていない。大学に入って新しい生活に呑まれて忙しくなったせいもあって、彼の誘いを断ったのだ。一度だけ断った。それで、それ以来、誘いはない。

 僕から誘ってみたことがないから、どうして連絡したらいいか考えあぐねて月日が経ち、ついには機を失ってそのままになっていた。

 交友をそのまま放置してしまったのだ。

 新しい環境、新しい交流関係。それらを優先したのだ。僕に限らず、誰だってそうするだろう。

 期を失って、僕の中ではすっかり過去の人となった段柳祐介。

 その段柳が僕に連絡をしてきた。しかも電話で、だ。

 さらに、その電話口の声は女性ときている。


 雨脚は強くなり、黒色の空の合間から雷鳴が聞こえている。

 間もなく段柳の家に着く。あの角を曲がればもうすぐそこだ。

 引き返すなら今だろうか。いや、もうそれは無理だ。もう……。


 

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