04:付き合ってからの学校生活

「おっす! 久しぶりだな!」



 私はいつも一緒に学校へ行ってる瞳ちゃんと待ち合わせをすると、途中からコタくんも合流した。

 一学期はコタくんと別々に登校していたんだけど、私と付き合うようになったので瞳ちゃんに許可をもらって一緒に行くことになったのだ。

 そうして私と瞳ちゃん、そしてコタくんが初めて一緒に登校をしていると、後ろから聡くんの声が聞こえてきたという訳だ。



「おぅ、久しぶり。って言っても先週会ったばかりだろ?」


「それでも学校が始まると、ほぼ毎日会うのが当たり前になってるんだから、一週間会わないだけでも久しぶりって感じだろ?」


「うぅ〜ん。まぁそんな感じなのかな?」


「鼓太郎はともかく、山根さんはマジで久しぶりだな」


「そうね。私夏休みは父の実家に帰っちゃうから、夏休みの最初と最後しかこっちにいないしね」


「それでも私とは結構会ったよね? 瞳ちゃんに頻繁に会えるのは親友の私の特権だよ」



 私はそう言うと、瞳ちゃんの腕にしがみついて、私のだぞアピールをする。

 そんな私のことを瞳ちゃんは照れながら、「もう。みんな見てるから恥ずかしいわ」と少し辺りを気にしながら離そうとするけど、私はそんな瞳ちゃんを気にせずに、「いいじゃん。このまま腕組んで学校行こうよ」とグイグイ攻めた。


 私は知っているのだ。

 こうやって甘えると瞳ちゃんは断れないってことを。

 私はいつも甘えさせてくれる瞳ちゃんのことが大好きだった。



「ちょっと先に行くなよ」



 私たちの後ろからコタくんの声が聞こえてきた。

 すると瞳ちゃんが「弥生を借りちゃってごめんなさいね」とコタくんのことを揶揄うようなことを口にする。

 そのときの瞳ちゃんは悪戯っぽい笑みを浮かべていて、なんかとても魅力的に映った。


 この笑顔を見たコタくんが心を奪われてませんように。

 私は恐る恐るコタくんを見ると、いつもの感じそのままだったので一安心する。

 まったくもう。

 瞳ちゃんは無自覚に男の子をイチコロにしちゃうからな。

 親友ながら恐ろしい女の子に育ったものだよ。


 学校生活は付き合う前と後でもあまり変わりはなかった。

 だって、付き合う前からコタくんとはいつもお話をしてたし、瞳ちゃんや聡くんたちと一緒にお日休憩の時間を過ごしたりしていたから。

 だから、コタくんと私が付き合ったことは、傍目から見ていたら気付かれることはなかった。

 別に隠してる訳じゃないんだけどね。


 私たちが付き合っていることがバレたのは、二学期が始まって一ヶ月くらいが経過した頃くらいだった。

 クラスメイトの女の子が数人来て「弥生ちゃんって浜崎くんと付き合ってるの?」って聞いてきたのだ。

 最初から隠す気がなかった私は「うん。そうだよ。夏休み前くらいから付き合ってるの」って返事をする。

 するとその子たちは「キャー!」って高い声を上げて盛り上がっている。

 私は彼女たちから色々と質問をされたけど、なんでバレたのか気になったので聞いてみたら、どうやら私も気付かないうちにコタくんへのボディータッチが増えていたみたいだったのだ。


 思い返してみると身に覚えがありすぎた。

 一度意識をしてしまうと途端に恥ずかしくなってきてしまう。

 顔を真っ赤にした私を見て、彼女たちはまた「弥生ちゃんめっちゃ乙女で可愛いねー!」と揶揄って来たのだが、不思議と嫌な気分にはならなかった。



「今日クラスメイトに私たちが付き合ってるってバレちゃったよ」



 学校の帰り道。

 私はコタくんと一緒に二人っきりで帰宅していた。

 聡くんは毎日、そして瞳ちゃんは週2の部活があるので、放課後はコタくんと帰ることが多いのだ。



「え? そうなんだ? 別に隠してた訳じゃないけど、逆に今までよく気付かれなかったよな」


「私たちって、一学期から一緒にいることが多かったからだと思うんだよね」


「まぁ、それもそうか。だけど、それならどうやって気付いたんだ?」


「うーん。恥ずかしいんだけど、私のコタくんへのボディータッチが多くて気付かれたんだよね」


「あっ、なるほど……」



 コタくんにも身に覚えがあったのだろう。

 私たちは、夏休みにキスもしたしハグだってしてたので、そこら辺の感覚がちょっと鈍っていたみたいだ。



「まぁ、別に隠してた訳じゃないし、過度なことをしなければ別に態度を改めることもないだろ?」


「うん。私もそう思うの。いつも通りの私たちのままでいようね」


「あぁ。――弥生、大好きだよ」



 コタくんはそう言ってくれると、私に手を差し出してくれた。

 登下校ではあまり手を繋ぐことはなかったのだが、ボディータッチが多いと気付かされたのであまり気にしなくなったのかも知れない。

 私は差し出された手に指を絡ませて、所謂恋人繋ぎというものをする。

 ハグも気持ちいいんだけど、手のひらが包み込まれる恋人繋ぎをしてるととても幸せな気持ちになる。


 こうして二人でラブラブしながら歩いていると、あっという間に私の家に近付いて来た。

 あ〜あ。今日もこれでお別れなんだ。

 そう思ったらとても寂しくなってきてしまった。

 そんなことを考えていると、私たちの後ろから「あ〜! お兄ちゃんだ!」という大きな声が聞こえてきた。


 私は振り向くと、その声の主に「睦月! そんな大きな声を出したらコタくんがびっくりするでしょ!」と注意をする。

 睦月は早歩きになり、コタくんの隣に行くと「そんなことないよね、お兄ちゃん」と甘えた声を出していた。

 この子は私の彼氏ってこと分かってるのかな!?

 睦月の態度にイライラとしていたのだが睦月が「もう帰っちゃうの? せっかくなら家に上がっていってよぉ」と言ったので、心の中で「ナイスだよ睦月」って褒め称えた。

 私ってなんて単純なんだろうか。


 コタくんは一瞬困った表情を浮かべて私を見てきたが、「私も上がってほしい、かな?」というと、「じゃあ少しだけ」と言って寄ってくれることになった。

 睦月は「やったー!」と喜んでいたが、私はそれ以上に嬉しかったので、コタくんと繋いでる手の力をギュッと強めて「ありがと。嬉しいよ」と耳元で囁いた。


 その日は結局私の家で夕飯までコタくんは食べることになった。

 実は夏休みに何回も私の家に遊びに来ていたので、睦月はもちろんお母さんコタくんと仲良しになっていたのだ。

 さらにはお父さんにもすでに会っていて「あの子はとても良さそうだな」と褒めてくれたのが嬉しかった。

 昔聞いたことがあるんだけど、お父さんとお母さんは男の子も欲しかったみたいなんだよね。

 だからと言って、私たちのことを蔑ろにするのではなく、しっかりと愛してくれているのは伝わっているので、ごめんねという気持ちにはなったことがない。

 多分なんだけど、お父さんとお母さんはコタくんのことを息子のように可愛がっているのかも知れない。


 なんか私の彼氏がみんなから愛されていてとても嬉しいなって思ってしまう。

 そして、何よりもコタくんが「弥生の家族はみんな良い人ばかりだよね。俺弥生の家族みんな大好きだよ」と言ってくれたのが嬉しいことだったのだ。

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