第7話

 笹倉さんからメッセージが入ったのは、金曜日の夕方だった。


『調査であっちこっち走り回っていますので、明日の定期報告は行けそうにありません。申し訳ありません』

『了解しました』

『経過報告は来週まとめてでよろしいでしょうか』

『はい。それでいいです』

『ありがとうございます』


 一生懸命調べてくれているのだろう。笹倉さんは真面目そうな人だから。

 ぽっかりと予定が空いてしまった土曜日、私は部屋の片付けをすることにした。

 元々物の少ない部屋だから、そんなに散らかっているものはない。

 読まなくなった本を何冊かまとめて古本屋へ持って行くことにした。食器も最近使っていないものは処分しよう。


 そうやって片付けていると、食器棚の奥に隠すように置かれていたキーホルダーに手が触れた。プラスチックのご当地マスコットがついたキーホルダーは、付き合いだした頃にお揃いで買った。

 あの人の持ち物や一緒に買った思い出の品は、もう他には何も残っていない。あの人が私を捨てた時に、私もすべて捨ててしまったから。

 写真も手紙も全部処分していた。だから笹倉さんに渡したのは一緒に使っていたSNSのIDと、そこに残っていたわずかな画像データだけだ。

 ただこのキーホルダーだけは仕舞っていた。できるだけ見ないように、奥の方に。

 それでも捨てられなかった。

 もう、捨ててもいいのかもしれない。


「これで全部おしまい」


 声に出してそう言うと、キーホルダーをゴミ箱に放り込んだ。

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