屋上

「綺麗」ビル街の夜景を見ながら、君が呟いた。

 ひゅう、耳に冷たい風が当たる。僕も君も、風に煽られたコートを着直す。

「そうだね」僕は、つまらなそうに呟いた。

「はぁ、、みなとは、もう少し世界に関心を持ったらいいのに」

「どうせ、あと少しで破壊されるものだよ。思いを馳せるだけ無駄さ」

 君は呆れ果てたようだ。小さくため息をついて、通信機を手に取った。

「あと1分」僕が腕時計を見て言う、その言葉を君は通信機に向かって叫んだ。

「あと1分!!!」君の声は、未だに『日常』を続けているビル街に木霊した。

「あとは、この世界の終焉を待つだけだ」

 君はまだ不服そうにしていた。

「どうした? みおらしくないな」

 君は、瞳に涙をためながら呟いた。

「私さ、この世界は好きだったなぁ」

 君の背後では、先程までビル街だったものが、炎と爆発に飲み込まれている。

「それでも、これが僕らの仕事だからな」

 視界が段々と白く光っていく、そして、僕らは『転送』された。

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600文字以内で繋ぐ短い物語 香座未 裕 @KAZAMIYU

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