第17話 新たな第一歩

後日、司から黒木君とやり直す事になったと電話があった。

その声は嬉しそうで、電話越しでも伝わってくるぐらい、幸せ感が溢れ出ていた。

私も、親友の司が、黒木君とこれから2人で幸せの形を作って行くんだと思うと、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。


「今度、休みを合わせて、2人で箱根へ日帰り旅行へ行くんだ~」

と、嬉しそうに言うから


冗談っぽく

「えぇ、私も行くー!」

と、駄々をこねた子供のように言うと、


「ダメ!!!」と笑って言った。その「ダメ」すら可愛らしく感じた。

「あ、ごめん!ちょっと呼ばれたから、切るね。また連絡する!」と言ってすぐにプツっと電話が切れた。


付き合う事になったのをすぐにでも報告したかったのか、司は仕事の合間にも関わらず電話をしてきたようだった。


私はというと、やっと離職票が届いたので、ハローワークへ行って雇用保険の手続きだ。

すぐには働けない事も言い、医者からOKが出たら就職可能の証明書を貰って改めて提出する必要がある。そしたら受給資格が与えられると説明を受けた。


めんどくさ!また証明書貰わなきゃいけないわけ!?

と内心思いつつ、貰えるお金は貰った方が良いと思い、医者に書いてもらう証明書の用紙をもらった。


家へ帰る。

どこか寄ろうかなぁとも思ったが、なんせ無職(いや、専業主婦だった)。

ノーマネーだ。


夕飯の支度をしたりもあるし、まっすぐ家へ帰った。

主婦業、楽しまなくっちゃ、こんなローングバケーション!もう二度と無いかもしれない。


その日の夜、私は「うつ」「考え方」と検索してみた。

いろんな情報が出てくる。その中で気になる項目が出た。

日本ではうつ病の患者には悩みを聞き、そのストレスをなくすアドバイスをし、マイナス思考をプラスに変えて行くと言うやり方が主流だが、海外では、逆で、良い所を見つけ出し、そこに着目点を置き、そこを拾っていってプラス思考に持っていく。自己肯定感と高めると言う真逆の治療法を行うらしい。(違っていたらゴメンナサイ)


ひろ~いこの世界には、いろんな考え方があるもんだと感心したのと同時に

私もやってみよーと、軽い気持ちでノートに良い所を書き出してみた。


・優しい

・気が利く

・人当たりが良い

・相手の気持ちに寄り添える

・料理が得意

・パソコンを打つのが早い

・子供の宿題は必ず見る

・節約を楽しんでやっている

・病気とちゃんと向き合っている

・性格がおだやか

・最近、物を大事に扱うようになってきた。

・怒る事がほとんどない

・叱るときは、相手の意見を聞いて、悪い所を正す。

・人を傷つけるような嘘はつかない。

・要領がいい。

・仕事が早い。(仕事をしていた頃の話)

・性格が天然(私はあまりいい言葉には思わないが、直人はこの私のバカっぷりにいつも笑ってくれるので、良い点に入れてみた)


おぉ!こんなにも書き出せたじゃないか!!!

自分で自分に拍手をあげたいぐらいだ。褒めてやりたい!

ブラボー自分!


きっと海外じゃ、「ほら、あなたにはこんなにいい所があるのよ」なーんて、金髪の白衣を着た女性が患者にそう言って、自己肯定感を高めるのだろう。私からしたら暗示にかけているだけのように思うが、これが効果があるらしい。黒木君は知っているのだろうか。


「今度偉そうに言ってみるか。」

と、心の中で笑った。

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