第6話 許嫁と海1

 突然だが、真鈴とデートをする事になった。真鈴から誘われて俺は即オッケーした。

 それはそうと、突然デートをするなんて思ってもいなかったから何も決めてなかった。

 真鈴と色々話してどこに行くか、どこで待ち合わせるかなどなど決める事がたくさんだった。

 どこに行くかについては、遊園地、海、ショッピングモールなど案は出たが今は夏だからと言う事で海に決まった。

 勝手に行くのは少し非常識だと思うので一応真鈴の両親に行ってもいいか許可を得るためにその事を伝えると親父さんからこんな言葉が返ってきた。

ー出かけくるなら泊まってくればどうよ? 二人の行こうとしている海に別荘があるから。


 はい〜? これを言われたのは今じゃなくて過去の事なのに俺は今でもこの言葉が耳に残っていた。

 確かに女の子とお泊まりデートはとても楽しみなところがある。俺もあの言葉を言われてマジで!って思ったのは事実だ。


 

 電車とバスに揺られる事約一時間。コロコロと変わる景色をガラス越しに見ながら今回の目的地に着くのを待っていた。

 今回行くのは真鈴の親父さんが持っている別荘の近くの海なので少し距離はあるが最寄りのバス停があったので今回はそれを利用した。

 俺の住んでいる近くの海は飽きる程行っているので今回行く海に少し新鮮味と期待感を抱いていた。

 それに海という事は・・・・・・うん、そういう事だ。

 真鈴の水着姿を見る事ができるのだ。

 それって最高じゃん?

 それを見ずに夏を終わるなんて無理じゃん? 

 そんな下心丸出しの考えを頭の中でしていると、最寄りのバス停に到着した。

 バスを降りると、さざ波と潮の香りが俺たちを出迎えてくれた。

「ん〜! やっと着いた〜!」

「ですね〜私も少し疲れちゃいました」

「とりあえず別荘に荷物置いて何するか考えるか」

「ですね」

 真鈴の親父さんの話のよると今いる最寄りのバス停から約十分くらいって聞いた。


 歩く事十分。別荘に到着した俺は思わず声をこぼしてしまった。

「ここか〜でか」

「びっくりです。私も初めて来ました」

 別荘って聞くと、少しこじんまりとしてて一階建ての小さな家だと思っていたが全く違った。

 外壁や家の壁は白を基調としており、中に入ると規格外の広さだった。リビングはかなり広めでキッチンも五人は余裕で入れる大きさだ。

 ベッドルームや和室もあり二人で使うには使いきれないくらい広いのだ。

 ソファもベランダの方向を見ており、そこから綺麗な海が目に入ってくる。

 まさに贅沢。まさにオーシャンビューだった。

「すげ〜もうここで住めちゃうじゃん」

「私も初めて来たのでびっくりですが、すごいです。キッチンもピッカピカで冷蔵庫に入っている食材も新鮮です」

 やっぱりすげえ。 

 何者なんだ真鈴の親父さん。

「まあとりあえず、せっかく来たんだから海にでも行くか」

「そうですね」

 一通り家の間取りは把握したのでこれからは今日のお目当てである海に行く事にした。

 真鈴は少し遅くなると言っていたので俺は一足先に海に出向く事にした。

「太陽が眩しい・・・・・・」

 覚悟はしていたがまさかこれ程とは。

 ひとまず俺は持ってきたテントを砂に刺して日を遮りそのそばにレジャーシートを敷きクーラーボックスを置いた。

 これで眩しい太陽を遮る事ができて少しは過ごしやすくなっただろう。

 他の人も来ているしテントも多いので間違えないようにしなければ。

 今の時刻は朝の十時。少しずつ他の人も増えているのでお昼にはもっと増えるだろう。

 海特有の暑さに打ちひしがれながらレジャーシートを敷いた場所にちょこんと座っているとこちらに向かってくる少女の姿が目に入ってくる。

 ビーサンを履いており、少しもどかしそうにこちらに向かってくる。

 少しずつ正体が見えてくるとそれは真鈴だった。

「お待たせしました・・・・・・」

「お、おう」

 少しもどかしく会話が終わり真鈴はビーサンを脱ぎレジャーシートの上にちょこんと座った。

 それはそうと、俺は真鈴の服装に少し疑問を抱いた。

「なんでラッシュガード着てるんだ?」

 そう、真鈴は水着の上にラッシュガードを着ているのだ。こんな炎天下の時にラッシュガードを着るのは少し危ないと真鈴に指摘言ったらこんな答えが返ってきた。

「だって・・・・・・恥ずかしいですし・・・・・・」

 こうも言われたら何も言い返す事ができなかった。真鈴がそうしたいならそうするべきと思い俺は何も言わなかった。でも、

「暑かったら脱げよ。脱水症状になったらシャレにならないからな」

「分かってます」

 

 海に来てから数分が経ち観光客も少しずつ増えてきた。

 それに比例して気温も上がっていき、さすがの真鈴も限界の様子だった。

「もう限界です・・・・・・」

 そう言うと真鈴はラッシュガードのチャックを下に下ろし、ラッシュガードに通している袖を脱ぎ、そばに置く。

 その瞬間、真鈴の水着が露わになった。さっきまでラッシュガードを着ていたのでまるで仮面が剥がれたかのように俺の視界に入ってくる。

 水着はシンプルな白色の水着。胸の大きさを気にしているからなのか少しだけフリルが付いていて華やかさをかもしだしている。

 色白でお腹も引き締まっており、これを俗に言うナイスバディと言うのだろう。

「そ、そんなに見ないでください・・・・・・」

「ああ、ごめん・・・・・・」

 少しだけ真鈴の水着姿に見惚れていてしまいつい直視してしまったと言うのが本音なのだろうがそんな事言えるはずもなくぐっと堪えて心の中にしまった。

「海行くか?」

「は、はい。せっかくきたのですから」

「なら決定」

 

 海に入ると、ひんやりとした感覚が足を襲った。

「やっぱり少し冷たいな」

 それはそうと・・・・・・一向に真鈴が海に入ろうとする気配が無い。

「本当に大丈夫ですか〜?」

「大丈夫だから〜おいで〜」

 俺が大丈夫という事を告げると、真鈴はゆっくりと足を海に近づけて入ろうとする。

 波が真鈴の足を襲うと真鈴の口から、

「やっぱり少し冷たいですね」

 最初よりは少し慣れたみたいで少しずつこちらに向かって歩いてくる。

「もう慣れたのか?」

「はい、少しは慣れました」

「なら良かった」

 俺が今いるのは浅瀬なので溺れる心配も無いのでここからゆっくり遊ぶ事ができるし、他の観光客はもう少し奥に行って遊んでいるのでここの浅瀬で遊んでるのはほんの少人数だ。

「そういえば私泳げないのですが大丈夫ですか?」

「大丈夫。ここ浅瀬だし、疲れたら浮き輪で運べばいい」

 一応浮き輪は持ってきて正解だった。空気入れなかったら簡単にカバンにしまえるし、空気入れれば海で使える、これほど海で使える便利な道具は無いだろう。

 多分ここは溺れる心配もないから使わないと思うけど一応持ってきた。

 そんな感じだ。

「それにしても結構しょっぱいですね。試しに舐めてみてびっくりしました」

「あんまり舐めるなよ。結構塩辛いから逆に喉が渇くぞ」

「そうですね。これは結構喉が渇きますね」

 こう会話をしている間に俺は少しよからぬ事を考えている。女の子と海で遊んでいるとなぜか心の隅に少しだけいたずら心が脳裏をよぎるのは。

 そう、水のかけあいだ。漫画やアニメでよくある男女が海で遊んでいると必ずと言っていいほどよく見かける水のかけあいだ。

 男同士でやったら加減なんていう言葉なんか忘れてバッシャバッシャかけてしまうが女子だったらそういう訳にもいかない。

 真鈴ももうすっかり海には慣れたようだ。

 作戦を決行するにはそろそろ頃合いだな。

 そう思い、俺は両手を水に浸け少し弱気で下から上へと両手を上げる。すると水が周りに飛び散っていった。

 もちろん真鈴にも水がかかり作戦は成功だった。

「・・・・・・」

 無言で下を見るめる真鈴。あ、やべ怒らせちゃったか。

 そして一歩、二歩とこちらへと向かってくる真鈴。

 何も言わないが伝わってくる無言の圧力に押されて、背中に冷や汗が走った。

「それ!」

 その瞬間、真鈴は両手を海に浸けて下から上へと腕を上げた。すると顔に塩水がかかった。

 不幸にも、口を開けていたので塩水が口の中に入り、しょっぱい感覚が体全体を襲った。

「から!」

「えへへ、私にいたずらしたお返しです」

 俺は何も言い返す事ができないまま俺は少しだけ、腕で口を隠し、目線を逸らした。

 


 


 

 



 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る