母親

「息子はどこなの!」


驚きエアノアが振り返ると、やつれて疲れた感じの女性が立っていた。

クリストの母親だろうとすぐにわかった。目だけが充血し鋭く光っているのが異様だった。


エアノアは目を瞬いて彼女の異様な雰囲気に圧倒された。


全身喪服に身を包み未亡人であるからには違いないが、コケた頬が異様に白い肌のため逆に浮き立っていた。


「お前のあの結社の女の回し者だろう、息子をどこに隠したの!」張り詰めた声が大きくなる。


エアノアは混乱した。秘密結社とクリストの失踪には何か関係があるのだろうか?


「奥様、この方はおぼっちゃまにお礼をしにこられたのです。今ちょうどお帰りになるところでございます。」オノコが間に立って手で立ち去るように合図を送る。


「それでは失礼します。」エアノアは逃げるようにその場を去った。


そのまま走るような早足のままエアノアは道を急いだ。

特にどこへ行くとも考えていなかったが、早くその場所から離れたかった。


エアノア自身、あそこまでの敵意を人から受けることも初めてだった。


エアノアはあの母親の言葉に引っかかった。

あの結社の女とは、バーネットだろうか?そうだとすれば… バーネットはなんらかのことを知っている。確かにあまりにも簡単にクリストのことが出てきた。


このままバーネットを信じて良いのだろうか?

今まで感じたことのない疑問と不安が感じた。


やっぱり部長に相談してみよう。

そう考えて、さっきまでの言葉は忘れる事にした。




エアノアは探偵倶楽部に在籍してはいるが、いわゆる幽霊部員のような存在だった。気が向いたときに顔を出すような感じであった。そもそも入部した時も、図書館で魔術に関する調べ物をしていたときに活動していた探偵倶楽部に居合わせてことから入ることになったのだ。


探偵倶楽部は二十名ほどいるが、その半数ほどはエアノアと同じように気ままに参加する。ある意味不真面目な部員であったが、それでも参加したときには気前よく迎えてくれる雰囲気がありやめめるものはほとんどいない。



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