首飾りの伝説

この学園に在籍するのであれば、首飾りの伝説について聞いた事の無い者などいない。


二百年前の魔法大戦を終結させた賢者エア

彼女はこの学園と縁が深い。


生徒であり教員でもあった。最後は学園長でもあったと言われているが、戦後の混乱期の中で記録はほとんど消失してしまい正確な物はない。


ただ、この伝説にある首飾りは、賢者エアが遺したものであると言われている。

「来たるべき日に備えて、3本の首飾りを遺す。」と言われたとも...


首飾りの伝説

学園には3本の首飾りのがあり、ある隠させた秘密の鍵になる。らしい···

女神像の首飾り、琥珀の首飾り、銀本の首飾りの3本があり、そのうちの1本銀本は秘密結社の総長に代々継承されていると言われている。


学校には付きものの伝説...御伽噺...エアノアはそう思っていた。


突如、その御伽噺が色を帯びて、彼女の目の前に現れたのであった。


もう一度、彼女は紙片に目を落とす。


『女神は鎖を解かれ海に沈み、偉大なる父の元のに帰る。死は全てを暗闇に隠す。』


女神と鎖は、明らかに女神の首飾りを指している。

後半の意味はわからないが、継承者の手を離れていることを意味しているように読み取れた。


つまり、これは秘密結社の最大の目的であり、外に対しても最大の秘密である首飾りの関係者の依頼であった。


「なぜ私に?」まずエアノアに思った。


しかし、そうは思っても次の考えが浮かんでこない。混乱している。


確かに、そう冴えているとか秀才と言われることはないが、いつも以上に鈍い頭が自覚できたような気がした。

しかし、いくら状況がわからなくとも、行動をせずには始まらない。これが彼女の一つの信条であった。


「どうして私なんですか?結社の内部だけで済ましたい部類の話なような気がするのですけど...」


少し肩を窄めて聞くエレノアの姿はリスのような小動物を思わせる。

[バーネットはそう思うと、なぜかこの人選に間違いがなかったように思えた。]


「そうよね」バーネットの表情からはなんの感情も読み取れない。


「一つこの秘密結社についてお話ししておかないと。

おそらく御存じ無いと思うけど、と前置きをした。

この結社の存在理由は学園伝わる秘密、首飾りの伝説を**来たる、その日まで**継承するためにある、3つの首飾りは学園に眠る秘密を守るものだと言われている。


その秘密は、実はこの結社にも伝わっていない。

結社には3本のうちの銀の本の1本が所有管理しているけど、一般学生が言うような秘密結社が全ての秘密を知っているとか、3本を所有者を監視していることなんてない。との事であった。


バーネットの話はエアノアにとっては幾分驚きであった。


彼女も一般の学生に見られるように、秘密結社は学園の秘密、3本の首飾りの伝説を暴くことが目的とばかり思い込んでいた。


「銀の本」は継承していることは認めたが、他の2本については全く感知していないとのことであった。また、最近の組織は伝承の維持と守秘の本来の存在目的より、個々の活動組織の充実が目的と化しており伝承継承の代表である総長の権限はないに等しいらしい。


「つまり、この紙片程度の情報で組織を動かすことはできなかったのよ。」とバーネットはあっけらかんとしている。


「それに、この紙片から今の所在を調査できるような情報もなければ人材もいないのよ」

「もちろん無理にとは言わないわ。ただ、この件は他言無用でお願いね。」バーネットはここま言ってお茶を飲んで一息入れる。


「私が断ったらどうなるのですか?」


「そうなったら、お手上げね。この紙片はなかったことにして今まで通り2本の首飾りが無事継承されれていると信じてこれまで通り活動するわ...」


「この件について私たち以外どれくらいの人が知っているのですか?」


「幹部の幾人かしか知らない。今後も増えることはないわ。だから組織としてあまり協力はできないと思う。もちろん私にできることは協力するわ」


ここまで聞いてエアノアは引き受けることを決心した。

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