第48話「ミトコンドリア」

娘「体を冷やすのは健康に良くないってのは分かるけど、なぜいけないの?」


父「それは、死んでしまうだろ。タイタニックでも八甲田山でも体が冷えると生きてはいられない」

娘「それは極端な話しでしょ。日常では、そんなに冷えないもん」


父「まぁ、そうだな。映画『タイタ○ック』凄かったな。お母さんと見たが、デートで観るには、ああいうのが良いな、まるで自分が豪華客船に乗っているような気分になる」

娘「あたしにデートしろって言ってるの?」

父「いやいや、そんなこと言ってないよ……」


娘「こんど映画館で『八甲○山』やったら、お父さんと観にいってあげるよ」

父「俺も、もういい歳だから人が死んでいく映画はいいよ……氷付けで最後なんて悲しすぎる」


娘「タイタニックって氷山にぶつかったんでしょ、海に投げ出された人は体温が下がって亡くなったんだと思うけど、救助船が来るまでもたなかったの?」

父「氷のある海だから、海水につかると10~20分くらいしかもたないんじゃないかな?」


娘「低体温症? 八甲田山は服を着ていてもダメだったの?」

父「八甲田山は全滅ではなく、何名かは山小屋などを見つけて助かったらしい」

娘「建物がないと、吹雪きでも耐えられないんだ」


父「体温は36~37度くらいの間でないと体は上手く機能しないようだね。風が吹くと体が冷えるからね」

娘「風か……あまり、ピンとこないな。体温が35度代の人もけっこういるけど……」

父「そういう人は体調不良で悩んでいると思うよ」


娘「確かに体調不良だわ」


父「冬子はミトコンドリアを勉強したか?」

娘「ミトコンドリア? 理科で習ったよ平べったい虫のようなやつでしょう?」

父「間違いではないんだけど、あれは顕微鏡で見た図で、実際のミトコンドリアは細長いミミズや寄生虫のような形だな、もっとずっと小さいけど」


娘「ミミズも寄生虫も気持ち悪いわよ!」


父「人類の歴史では寄生虫がいた時代の方がはるかに長いんだぞ。戦後くらいまではいっぱいいたらしい。俺も小学生の時はぎょう虫検査というのがあって、お尻にシールを貼るんだ。そうすると、ぎょう虫がいる人はシールにぎょう虫の卵が付くらしい」


娘「いゃ、もう最悪……あたしも小学生の時にやったけど、もう、ぎょう虫がいる人は聞かないよ」


父「そうなんだ、今、いないだろ。免疫の7~8割りは腸にあるのに、いままで何千年もいたはずのぎょう虫がいなくなった。そのせいで免疫が異常に攻撃的になって体の各部を攻撃するのではないのかという論文もあるらしいんだ。俺も人があまりいない所より、適度に人がいる所の方が居心地がいい」


娘「パチンコ屋さんとか?」

父「そうだな……ある程度、雑然としているほうがいいな。免疫もぎょう虫がいたほうがリラックスできるんじゃないか?」


娘「それじゃ、ぎょう虫がいれば免疫異常とか自己免疫疾患も収まるの?」

父「それは、まだ実験段階らしいが、がんにもなりにくいのではないかという話しもある。昔の外国の女優さんで痩せる為に、ぎょう虫ではないが、同じく寄生虫のサナダムシの卵を飲んで痩せた人もいたようだ」

娘「それ、なんか聞いたことあるな、でも、ぎょう虫やサナダムシって体にいても大丈夫なの?」


父「まれに、増え過ぎて亡くなるという話しもあるけど、寄生虫は寄生している本体が死んでしまうと自分達も死んでしまうので、そんなに悪さはしないはずだ」

娘「生きてる動物に卵を産み付けるやつをテレビで見たよ」


父「そういうのは南の暖かい土地にはいそうだけど、一般のぎょう虫は、そんな悪さはしないはずだ。ただ、お尻に卵が付いて、すっごくらしいけどな、あっはははははは……」

 大笑いする勘蔵。


娘「もう、ぎょう虫はいい。ミトコンドリアをやって!」

父「ミトコンドリアか……俺も勉強したが、実際には見ることも触ることもできないからな……電子顕微鏡の世界だろうな、研究者は、よく調べたもんだよ」


娘「そんなに小さいの?」


父「細胞の中に入っているんだ。ひとつの細胞の中に数百匹から数千匹いるらしい」

娘「それ生き物?」

父「生きてるらしい。しかも重要な仕事をしている」

娘「何をしているの?」


父「電気のようなエネルギーを作っているらしい。エネルギー通貨ATP(アデノシン三リン酸)というものを作っているそうだ」

娘「電気を作ってどうするの?」


父「人の体は糖分と、このATPと言うものを使って動かしているらしいんだ」


娘「難しいわね……」

父「簡単に言うと、雨に濡れて帰ってきたら、お母さんが『風邪ひくから、すぐにお風呂に入りなさいって言うだろ』あれは、体が冷えるとミトコンドリアの働きがわるくなるんだ。ミトコンドリアは体が温かいとよく働くけど、体が冷えると働きが悪くなるらしい」


娘「ミトコンドリアの働きが悪いとどうなるの?」


父「車で言うとバッテリーが弱っている状態かな?」

娘「なんとなく元気の無い人はミトコンドリアの働きが悪いってこと?」

父「そうとも言えないが、ミトコンドリア病というのもあるから、体調が悪いと思ったら、まず体を温めてみるといいだろうな」


娘「お風呂とか?」

父「お風呂が簡単だろうね。サウナでも岩盤浴でもいいけど、とにかく体を冷やすのは良くない」


娘「お尻も温めた方がいいよね!」

父「そりゃ、そうだ。お尻が冷えたまま用を足すと肛門が切れやすいからな……冬になるとお尻が冷えて肛門の状態も怪しくなってくる。毎日、トイレットペーパーでチェックしてるとわかるぞ」


娘「季節でも違うんだ」

父「俺が小学生の時は、毛糸のパンツをはいていた女の子がけっこういたぞ。俺も冬は暖かい素材のパンツに変えた」

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