7-4
魔王が復活してから数か月、サーヴは王都で何かと忙しくすることが多くなってしまい、私はロルフと二人でダンジョンの中を探索することが少し多くなってしまいました。
ですので、以前より計画しておりました、違和感のある空間を探索するという計画を実行しようと思いますの。
なんといってもサーヴがおりますと危ないからと、止めてくるのでなかなか実行出来ずにいたのでございます。
「そういうことで準備はよろしくて?」
「おう」
ロルフは私の護衛役でございます。私は風魔法で壁を掘ることに集中いたしますので、その間のモンスターの処理をお願いしておりますの。
魔法で作る竜巻で削るのですが、横にすることで壁を削ることが早くできるようになることに気が付きましたので、作業は早くなると思います。
「風よ、竜巻となりて我が望みを叶えよ」
そう唱えると風が竜巻状になり、横になったかと思うと壁を削り始めました。魔力が吸われていく感覚がありますが、まだまだ大丈夫でございます。
ただ、それほど威力があるというわけではございませんので、そこまで早く削れるものではございませんの。
ピッケルという道具があると早く掘れるそうです。
もしくは、ロルフの怪力で殴っていただくという方法も考えたのですが、それでは私の魔法の練習にはなりませんので、こうして地道に削っているのでございます。
土の魔法は使えませんが、風と水の精霊経由で土の瓦礫を消していただくようお願いもしてありますので問題ございませんわ。
私の背後ではロルフが軽々とモンスターを倒しております。ロルフは一人で2階に行くこともございますので、1階のモンスターは一人でも問題ないのでございます。
羨ましいとは思っておりませんわよ?ええ、本当に・・・。
「お嬢様、まだかー?」
「まだですわ、ただの岩壁だったら残念ですわね」
「それは、すばらしく残念なはずれだなあ」
本当に岩壁があるだけだったら、別の場所に行ったほうが良いのですけれども、もうちょっと頑張りましょうか。
サーヴが帰ってくるまで時間はありますものね。
「そういえば、吸血鬼の魔王という方は独自のルールがあるとのことですけれども、ロルフとの関係はどうでしたの?」
「んー、親っていうよりは保護者っていうか、観察者って感じだったなぁ。人間の女との間に生まれた俺を観察してた感じ」
「そうなのですか、お優しくはなかったのですか?」
「どうかなあ、きびしいってわけじゃないけど、優しかったかって言われるとわかんないなあ。殺されなかった分優しかったのかもしれないけどな」
「ロルフのお話ししてくださった特徴が、私にスミレをくださった方ににておりますの。2年ほど前になるのですけれども、同一人物かはわかりませんわよね?」
「わからんなあ、2年前ってまだ死んだって言われてた時期だし」
「そうですわよねえ。そう言えばどうして死んだなどと言われておりましたの」
「ああ、よくわかんないが死のダンジョンとかいう真祖様の作ったダンジョンの中で死んだとか言ってたな」
「真祖様?ダンジョンは神様がお作りになったのではなかったでしょうか?」
「真祖様は魔族の真祖だ。人間を神が作ったなら、魔族は真祖様が作ったものなんだよ。その中でも13人の魔王は真祖様の子供ともいわれてる。その血肉で作られたんだと。そのほかの魔族はその魔王が増やしていったんだ」
「まあ、そうだったのですか」
魔族に関しては詳しく学ぶ機会は夢の中でもありませんでしたので、こういうお話は聞いていて楽しく感じますわね。
知らないことを知るのは良いことですもの。
それにしても神様は人間を作ったと言われておりますが、神様の姿を見た者はおりませんわよね。
けれども真祖様というのは魔王を産んだというだけあって魔族の方には身近な存在のように感じます。
信仰の失われつつあるこの国の人間にももう少し神様を信じる気持ちを思い出していただきたいものでございますわね。
それにしても掘り進めておりますが、実際に削れているのは20センチほどでございますね。以前に入った小部屋は、腕一本分ほどの厚みがありましたので、まだまだ削らないとわかりませんわ。
こういう時はロルフとお話しでもして気を紛らわしたいところですが、あまりお話ししてモンスター退治の邪魔をしてはいけませんし、自問自答というものをするのもいいかもしれませんわね。
何を自問自答いたしましょうか?うーん、今はまず魔法の事ですわね。この竜巻の魔法ももっと威力を強くできるような気がするのですが、今のところこれが精いっぱいなのですよね。
ピッケルというのは細くて頑丈なものだそうですので、この竜巻を細くすればもう少し威力が上がりますでしょうか?
そう考えながら、竜巻が細くなるようにイメージしていくと、徐々に竜巻は細くなり、その分鋭くなったのか、削れるスピードが速くなったように感じます。
なるほど、確かに針も細くかたいものでございますし、こうしてイメージを膨らませていくのが良いのかもしれませんわね。
とはいえ細くなった分削れる範囲が狭くなりましたので、見通しが悪くなってしまいましたわ。
難しいところですわね。
「・・・面倒になってきましたわ」
「は?」
「もうこうどっかーーんとはいきませんのかしら?」
「俺が殴ろうか?」
「そうではなくて魔法でどっかーんと」
「火の爆発魔法じゃないんだから・・・。まあ、風も暴風雨ってのがあるぐらいだし」
「そうですわよね、こう風の圧力でどーーんと・・・」
そう言った瞬間、壁に何か大きなものが当たったかのようなへこみとヒビが大きな音を立てて出来上がり、私とロルフは思わず顔を見合わせてしまいました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます