エピローグ:イルバナ

 首輪を外してから約半年後。二人は馬車を降り立ってとある街に到着した。その街はミラゴラスと同じくらいの広さだった。


「広いね。ほんとに探せるの?あなたの弟さん」


 イルバナはムロウに話しかける。


「地道に聞き込むしかないね。ハイガがここにいるのは確かなんだ」


 この半年で二人がやったことは主に二つ。奴隷の首輪から魔力を抜き取って強制的に外す魔道具のステッキの開発とムロウの弟であるハイガの捜索だ。色々な人の協力で何とかハイガが買われた貴族の街まで掴めた。半年間はほとんどこの部分に費やしたと言っていい。


「でも名前を変えてるかもしれないでしょ?」

「変えてないよ。あれ、言ってなかったか?」

「何が?」

「私達が最初に会った時言われただろ? 奴隷商人から。こいつは何故か名前を変えたがらないって」


 イルバナはその時を思い出す。確かにそんな説明を聞いていた。名前があった方が呼びやすくて良いと言ったところまで思い出す。


「あー、そういえば。なんでなの?」

「パパと約束したんだよ。もし家族がバラバラになっても、名前さえあれば会えるかもしれない、名前は家族を繋ぐものだ、絶対に変えるなよって」


 その説明で色々と合点したイルバナ。


「へえ。じゃあハイガも変えてないっていうわけだ」

「名前しか手がかりがないけどね」


 二人はハイガが見つかった時にとある事を決めていた。それはほかの奴隷まで解放しないことだ。奴隷が一人二人消えても国や貴族は興味を持たないが流石に大人数がいなくなると重い腰を上げかねないので、バレないようにあくまで家族だけ助けると決めていた。二人の安全のために決めたことだ。


 しかし現時点で二人は、助け出したハイガがそれを不服に思い、そして今後奴隷を助けて集めて奴隷解放軍を立ち上げ、国に革命を起こしていくなど全く予想出来なかった。


「なんか急に怖くなってきたな。本当に国にバレないでやれるかなあ」

「アンタなら何があっても大丈夫だよ。だってアンタは平和の宣告者イルバナなんだから」

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私の可愛い裏切り奴隷 あばら🦴 @boroborou

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