池の女神「侯爵令嬢様、あなたが落としたのは〝婚約破棄した王子〟ですか……あなたは正直者ですね、あなたには〝綺麗な王子〟を差し上げます」わたし「要りません」

とんこつ毬藻

運命とは自分で決めるもの

「やって……しまいましたわ……」


 嗚呼、女神様……わたしはやってしまいました。


 女神様が住まうと言われる不思議な池。わたしが見つめる先、聖なる池の水面には、泡が浮かんでは消え、浮かんでは消えています。


 あの王子がいけないのです。昨晩わたしは、王子が自室であろうことか神殿より王宮へ泊まりに来ていた聖女様と一夜を共にしている御姿を目撃してしまったのですから。昨晩の事を追及しようと王子を呼び出すと、王子はわたしへこう告げたのです。『わたしとは婚約破棄をすると』。

 

 後ろ回し蹴りをぶちかましてしまいました。はい、後ろ回し蹴りです。あまりの怒りに、手よりつい脚が・・出てしまいました。


 どうやら王子は泳げなかったらしく、ゆっくりと沈んでいきました。


 わたしは大変なことをしてしまいました。すると、不思議なことに、水面へ浮かぶ泡がだんだんと大きくなり……水面が黄金に輝き始めたのです。そして、なんと白く美しい衣装を身につけた銀髪の女神様が現れたのです。女神様が手を翳すと、彼女の前へ等身大の像が現れ……その銀色の像を宙に浮かべたまま、女神様はわたしへこう告げたのです。


「ショコラ、あなたが落としたのは、銀の・・王子様ですか?」

「え?」





「ショコラ。お前との婚約は今日で破棄させてもらう!」

「なんですって!」


 どうしてこうなってしまったのでしょう。今、眼前に居る金髪碧眼の王子は真剣な表情でわたしへ婚約破棄を突きつけたのです。彼はこのマロングレイス王国の第一王子、モンブラン・ヴィータ・グレイス。


 そして、今わたしたちの居る場所は、あろうことか、王家に伝わる聖なる池の前。此処で告白した二人は結ばれると言われる運命の女神が住まうと言われる場所。どうして……どうしてこんな場所で……。


「聞こえなかったか? ショコラ。お前は今日から晴れて自由の身だ。もう王宮に住まう必要もないという事だ」

「モンブラン。じゃあ……昨晩ご一緒にいらっしゃったのは、やはりクレア聖女様……」


「なんだ、気づいていたのか。ならば話は早い。俺の運命の相手はショコラではなく、クレアだったという事だ」

「そんな……わたしの……わたしのどこがいけなかったというのですか?」


 国の西方に位置する神殿におわす聖女クレア様。一見、可憐で純粋そうに見えた銀髪聖女様は、魔性の女だったのです。ある時から王宮へ来ては王子に声をかけていらっしゃった。嗚呼、思い出すだけで怒りがこみ上げてきます。なんなのあの女……昨晩、あの女は……わたしと王子がかつて共に過ごしたベッドで揺れていたのよ。


 軋むベッドの音が外にまで漏れていましたわよ! 軋むベッドの上で可憐さを装い、きつ~く身体抱き締め合うとはよく言ったものですわね。はい、王子はあの女に騙されています。だいたい、『アンアンアン♡ とっても大好き~~モンブラン♡』じゃないわよ! それに、何? なんだ、気づいていたのか……じゃ、ありませんことよ。わたし、隣の部屋で寝ていたのよ? そりゃ気づくわよ、この大馬鹿王子!


 脳内で爆発するわたしの怒りを余所に、あくまで平静を保った振り・・をして、王子を問い質すわたし。


「いや、お前は悪くない。気高くて凛としていて強い。父であるフォンセ侯爵は武術に長けており、お前はその意思を継いでいて、格闘術まで身につけているではないか? 剣術なら俺の方が上だが……まぁ、それはいい。かたやクレアは可憐でか弱い。茶髪のお前が強き姫だとすれば、あの銀髪聖女は、まるで小さな雪うさぎのようだ。思わず守ってあげたくなるほどに」

「へぇ~」


 わたしの表情がだんだんと暗くなって来ました。あ、そうそう。うさぎって年中発情期らしいですわよ? だから聖女様は昨晩王子の部屋で腰を振っていましたのね、きっと。か弱い? あれはか弱いと言わず泥棒猫と言うのよ、発情うさぎだけど。


「お前は一人でもやっていけるだろう? そうだ、騎士団にでも入ったらどうだ? 国内初の女性騎士団長も夢じゃないぞ?」

「わたしは……王子のお嫁さんになることが……夢だったんですよ?」


「……料理も出来ないお前が?」

「なんですって?」

 

 わたしはその言葉に、雷にでも撃たれたかのような衝撃を覚えました。確かにわたしは料理は出来ないわ。女は強くないといけないという父の教えから、料理よりも格闘術に磨きをかけて来たんだもの。


「クレアのクリームシチューがな。美味しかったのだよ」

「はい、そうですか……」


「それに」

「まだあるの!?」


 このとき、既にわたしの答えは決まっていたのかもしれません。どうしてこんな王子に今までこだわって来たのか。何かが音を立てて崩れていくかのようでした。


「ずっと一緒だったお前だから話すが……あのクレアに実った果実からはな、聖女のミルク・・・・・・が出るんだよ」

「は!?」


 聖女のミルク……かつて飢餓で苦しんだ民を救うため、歴代の聖女は自らの胸より聖なる魔力の籠った乳を搾り、民を飢えから救ったという。それが、伝説の聖女のミルク。回復効果もあると言われるそのミルク。……って、まさか!?


「まさか……王子……飲んだの?」

「……」

「王子?」

「……ああ、聖母の味だった」

「この……この……下衆エロ王子がぁあああああああ!」


 手が出るより前に脚が・・出てしまいました。わたしのドレスは短めのスカートになっており、後ろ回し蹴りも出来る仕様になっているのです。うちのメイド特製ですから、ちゃんと見せパン・・・・も履いてますよ?


 わたしの後ろ回し蹴りは見事、王子の脇腹へクリーンヒット! 王子の身体は池へと投げ出されます。まぁ、池に落としたくらいなら、普通に泳いで戻って来るでしょう。そう思っていると……。


「た、たすけてくれ……お、泳げないんだ」

「え? 嘘!? ちょっと……」


「ショコラ……すまな……ゴボッ……頼む!?」

「ちょっと……王子!?」


 王子に手を伸ばそうとするも、溺れている王子の手を掴むことは出来ず……。


「ショコラ……クレア……誰か……」


 この期に及んであの女の名を口にした時点で、王子の命運は尽きていました。わたしは池の傍で屈んだ状態で王子を見つめ、満面の笑みでひと言。


「さようなら」

「ショコ……ラ……ゴボゴボゴボ」


 王子は沈んでいきました。まるで池と同化し、溶けていくかのように……。

 そして、あの冒頭のシーンへと戻るのです。



◇◇


「ショコラ、あなたが落としたのは、銀の・・王子様ですか?」

「え?」


 いやいや、ちょっと待って。色々整理させてください。女神様が出て来て、わたしの名前を告げた事も驚きでしたが、今、女神様と共に浮かんでいる王子様は、金髪の王子ではなく、髪の色も、肌の色も服も全てが銀で出来ているのです。


「ショコラ、あなたが落としたのは、〝銀の・・王子様〟ですか?」

「いえいえいえ! とんでもない! 王子はそんな銀の像なんかじゃありませんから?」

「あら、そうですか? なら、ちょっと待っててくださいね」


 そう言うと、一度女神様は池の中へと沈んでいきます。暫くして再び現れる女神様。すると、今度は全身金色の王子様が……。


「失礼いたしました。あなたが落としたのはこの〝金の王子様〟ですね?」

「いやいやいや、金の王子様って何よ!? 普通におかしいから! それ金の像ですよね?」


「いえ、像じゃなくて、ちゃんと王子様ですよ?」


 そう女神が告げた瞬間、閉じていた王子の瞳が開き、キラリと金色の歯を見せます。


「違います! 違いますから! そんな全身金色で口角あげられてもわたし困りますから!」

「あら、そうでしたか。それは残念です」


 そう言うと、一度女神様は池の中へと沈んでいきます。暫くして再び現れる女神様。お、今度はちゃんと王子様が出て来ました。でも、王子は宙に浮いてはおらず、短い金髪を鷲掴みにし、そのまま持ち上げた状態で女神様だけが宙に浮かんでいたのです。なんだか先程と扱いが違うような……。


「それでは、ショコラよ。あなたが落としたのは、こんな美しく艶やかな茶髪ブロンズヘアーと瞳を持つ気高く真っ直ぐなショコラという婚約者が居ながら、婚約者が眠っている部屋の隣で純粋な皮を被った発情聖女と夜な夜なズッコンバッコンし、先程わたしが居る目の前で〝婚約破棄した王子〟ですか?」

「ちょちょちょ……女神様!? なんか情報が多くありません?」


 ちょっと待って。今まで銀の王子か金の王子ですかしか聞いてなかったじゃないですか? 嗚呼、確か池の女神様は運命の女神で、人々の行いをそっと見守っている存在とは聞いた事があるけれど……。いやいやそれにしてもズッコンバッコンて……。わたしがどう答えていいのか分からず逡巡していると、その様子に気づいたのか、女神様が申し訳なさそうな表情となり……。


「ごめんなさい、混乱させてしまいましたね。ゆっくり、正直に答えていただいて構いませんからね」

「え、ええ。こちらこそすいません、女神様」


 思わず一礼するわたし。ちなみに髪を掴まれた水の滴る馬鹿王子は眠ったままだ。軽く咳払いをした女神様は、質問を続ける。


「では、改めまして……ショコラ、あなたが落としたのは、あなたと愛を重ねていた翌日、遠征と称し、聖女の果実を求めて神殿へ赴き、真昼間に神聖な神殿の客間にてズッコンバッコン……」

「えええええええ!? 待って、王子そんな事してたんですか!?」


 そんな事実知りませんから。ええと、つまり。王子は昨晩どころかずっと前からわたしという存在が居ながら聖女と浮気をしていたという訳ですか。女神様。これが運命と言うのなら酷い仕打ちです。むしろ今掴んでいるその王子をそのまま池へと沈めて下さい。


「続けますね。あなたが落としたのは、『ワタクシの聖なるミルク、あなた様へ捧げたいのです』とのたまう聖女の誘惑にあっさり釣られ、『ママーー、ママーー』と、まるで赤ん坊のようにミルクを飲んでいた〝変態マザコン残念王子〟ですか?」

「いやいやいや、王子ぃいい!? そんな赤ちゃんプレイを……駄目だ。もうまともに王子を見る事が出来ない」 


 王子を蔑むような眼で見つめるわたし。気づけば、女神様の王子へ向けた冷笑とリンクしていました。運命の女神様は、もしかして分かっていて真実をわたしへ告げているというの?


「あなたが落としたのは、あなたを追いかけて騎士団に入団しようとした幼馴染のカインを裏で追放し、同じく幼馴染だったキャサリンは追放する前にちゃっかり寝取っておいた〝追放寝取り王子〟ですか?」

「え? カインとキャサリン? なんかどんどん肩書きが増えてません?


「あ、この下衆王子があなたの落としたもので無ければそうおっしゃっいただたいて構いませんよ? あなたが落としたのは、民からの人気ナンバー1の地位を最大限に利用し、王宮のメイドさんをとっかえひっかえつまみ食いしていた〝週末のハーレム王子〟ですか?」

「あの……最早、王子の命が終末に近づいている気がしてなりません……」


 もう、そんな王子要りませんから、そのまま池の水全部抜いても復活出来ないよう、池の奥底地中深くへ埋めてください。


「で、どうなんです。あなたが落としたのは、先日城下町の酒場へ変装して忍び込み、可愛らしい女魔法使いをナンパして……」

「もういいです! 女神様、もういいですから!  わたしが落としたのはその下衆王子で間違いないですから!」


 女神の下衆王子暴露を制止し、肩で息をしながら落とした王子がその王子で間違いない事を告げるわたし。真実を告げたわたしを黙って見つめる女神様。まだ気を失っている、むしろ全てを失ったような気がするずぶ濡れ王子。

 

 やがて、女神様の表情が満面の笑みへと変化する。するとあろうことか、下衆王子をそのままポイっと池の後方へと投げ捨ててしまう。


「え、えええええええええっ!?」

「あなたは正直者ですね、では、あなたにはこの、金の王子像と銀の王子像。そして、〝綺麗な王子〟を差し上げます」

「要りません!」


 即答するわたし。宙に浮かぶ〝金の王子〟と〝銀の王子〟。そして、突然目の前に現れた〝金髪碧眼の綺麗な王子〟。切れ長な瞳が円らな瞳となり、肌が艶やかでなんとなく真っ直ぐな王子のオーラが出ているような気もするが……。って、現物・・の下衆王子を女神様投げ捨てちゃったよ!? 


「ダイジョウブダ、モンダイナイ。運命の女神はあなたのような正直者の味方ですから」

「いやいや、大丈夫じゃないですから!? 死亡フラグどころか下衆王子死んでない!? え、待って、薄っすら消えていかないで……女神様ーーーー」


 だんだんと光に包まれ、女神様が消えていき……代わりに宙へと浮かんでいた金の王子像と銀の王子像、そして、〝綺麗な王子様〟がゆっくりと降りて来た。いやいや、この状況……どうすればいいのーーー!?



◇◇◇



 放置していても仕方ないので、王子は持ち帰りました。目を覚ました王子様は、あの俺様王子とは正反対の、可愛らしく抱きしめてあげたくなるような純粋王子でした。ちなみに金の王子像は、街のシンボルとして広場へと飾りました。


 どんなに下衆でも民からの信頼はナンバーワンの王子。王子の下衆な姿を民は知らないのです。〝綺麗な王子〟はわたしの居る前で聖女クレアを呼び出し、別れを切り出しました。驚いていた聖女でしたが、わたしが居る前で土下座する彼を見て醒めたのか、颯爽と王宮を出ていきました。


 更に綺麗な王子は国の内政に潜む闇を全て洗い出し、闇市場へ奴隷を流していた侯爵を国外追放、国の宝物庫へ保管していた銀の王子像を溶かし、貧困層へ銀貨として分け与える事にしました。


 王子はわたしに認めて貰いたいのか、真摯な態度でわたしに接してくれました。でも、もうあの日に、わたしの王子に対する熱は冷めてしまっていたのです。


 そして、数ヶ月後……。



「どうして……どうして僕を愛してくれないの? ショコラ」

「それは……あなたがモンブラン王子ではないからです。モンブラン」


「僕はモンブランだ。いや、確かにショコラ。王宮の人々から話を聞くに、僕は今まで非道だったらしい。君という存在が居ながら、他の女性と一夜を共にした事もあるらしい。聖女クレアにもメイド達とも話はつけておいた。だから、僕は君と……」

「そういう問題じゃないの。確かにあなたは綺麗なモンブランかもしれない。でも、わたしはモンブラン自体を嫌いになってしまった。むしろ、今は早く田舎に帰ってスローライフを送りたいと考えているくらいよ。あなたにはあなたの幸せがあるわ、きっと。だから、さようなら、王子」

「待ってくれ、ショコラ!」


 わたしは王宮から逃げ出した。〝綺麗な王子〟は純粋で真っ直ぐで、あの下衆王子とは似ても似つかなかった。聖女やメイド達には全員土下座をしたらしい。王宮メイドは、むしろ真っ直ぐな王子の姿に心を打たれ、今も辞めることなく、王宮に勤めているみたい。まぁ、発情聖女は真面目な王子より、あのチャライ王子が好きだったみたいで、すぐに夜の街へと消えていったようだけど。


 王宮から庭園を抜け、森へ向かう。そしてわたしは、あの池のほとりへと辿り着く。王子は必死になってわたしを追いかけて来ました。王子はわたしへこう告げます。


「此処は……僕が誕生した池」

「ええ。王子。あなたは此処で産まれた存在であり、モンブラン王子ではないのです」


「それでもいい。僕は君のことが好きだ。だから、僕のお嫁さんになって欲しいんだ」

「王子……」


 女神様。この池の前で告白したカップルは結ばれるという言い伝えを壊してしまってすいません。確かに眼前の王子は純粋でも、わたしは彼と結ばれるつもりはないのですから……。


「ごめんなさい、モンブラン。あなたとわたしは住む世界が違うの。だから……」

「だから……?」

「おとなしく、池へ還ってください」

「え?」


 わたしは後ろ回し蹴りで〝綺麗な王子〟を池へと投げ入れます。大丈夫。彼は死なないわ。女神が守るもの。


 予想通り、池の水面が輝き始め、銀髪の女神様がゆっくりと顕現していきます。宙へ浮かぶ女神様は、わたしを見つめ、優しく微笑みます。


「ショコラ。あなたが落としたのは、〝金の王子様〟ですか?」

「いいえ、違います」


「では、〝銀の王子様〟ですか?」

「いいえ」


「それでは、生まれ変わったこの真っ直ぐで純粋な〝綺麗な王子様〟ですか?」

「いいえ、それも違います」

「は?」


 それまで優しく微笑んでいた女神様の表情が曇ります。わたしは続けます。


「わたしが落としたのは、そんな綺麗な王子様ではありません。女をとっかえひっかえつまみ食いをし、聖女と赤ちゃんプレイをするような下衆王子です。まぁ、あんな王子でも民からの支持は厚かったので、きっと今後も彼なりにやっていけるでしょう」

「ショコラさん、あなた……」

 

 そんな哀しそうな瞳で見ないで下さい女神様。大丈夫です、運命はわたし自身で決めてみせます。女神様から運命を示して貰わなくても大丈夫です。


「そうですか。あなたは嘘をついてしまいました。〝綺麗な王子様〟はわたしが回収しましょう。そして、あなたには、民からは人気でもその裏でえっちな妄想ばかりしているこの下衆王子を差し上げます」


 あのとき、池に沈んでいた筈の下衆王子が、わたしの前へ現れます。女神はゆっくりと頷き、光と共に消えていきました。やがて、目を覚ます王子様。ずぶ濡れだった彼の髪も、服もなぜか渇いています。


「俺は……確か……そうだ。お前に後ろ回し蹴りで池に落とされて……そうか。すまなかった。ショコラ」

「あら、わたしのこの発展途上の胸よりも聖女様の母なる果実がお好きな王子様。ご機嫌麗しゅう」


「な、何を……言っているんだ?」

「え、だって、定期的に国の治安を守るためって遠征へ行ってたの、聖女様のところへ行っていたんでしょう?」


「ど、どうしてそれを……」

「お前は一生、王妃ママのミルクでも飲んどけ!」

「ぐはっ!」


 池とは反対方向へ後ろ回し蹴りをかまし、王子を吹き飛ばします。颯爽と王宮へ戻ったわたしはそのまま荷物をまとめ、田舎へと帰って行きました。え? 王子がどうなったかなんて知りませんわ。〝綺麗な王子〟が王子の女性関係を全て清算していますからね。王子もきっと驚いたことでしょう。


 さぁ、これからわたしの自由で気侭なスローライフが始まります。

 わたしの領地は田舎なんです。早速川釣りでもして、ストレス発散しましょう!


「ショコラ……ショコラなのか?」

「え? カイン?」


 そこには幼馴染で冒険者をやっていた黒髪の青年、カインが立って居たのです。

 運命の歯車は、此処から再び回り始めた……のかもしれませんね。


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池の女神「侯爵令嬢様、あなたが落としたのは〝婚約破棄した王子〟ですか……あなたは正直者ですね、あなたには〝綺麗な王子〟を差し上げます」わたし「要りません」 とんこつ毬藻 @tonkotsumarimo

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