リテラシーについて

〘名〙 (literacy) 読み書きの能力。また、ある分野に関する知識や能力。「情報リテラシー」

日本国語大辞典様より。






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 皆さん、「X」やってますか。ポケモンではなく、SNSのことです。旧Twitterです。

 あそこでは日々様々な呟き(ポスト)が大量に投稿されていて、色んな話題について会話が形成されています。


 昔から、「ネット」では匿名制により、暴言や誹謗中傷が起こりやすいこととされています。「どうせ誰が言ったか分からないんだから好き勝手言える」ということですね。匿名制でなければ、発言者は特定されて社会的地位が危ぶまれます。


 そして、世界中の沢山の人と繋がれるSNSでは、「仲間」を作ることができます。現実では周りに共感してくれる人が居なくても、SNSで発信したりすると、共感してくれる人が現れたりします。それがたとえ、どんなに間違った少数意見であっても。


 さて。

 私がこれを書こうと思ったキッカケは、「言葉の持つパワー」は凄いなと思ったからです。

 例えば、「ワクチン」。このワードは出した途端に拡散され、リプライが付き、それが引用され、あれよあれよと当初の発言者の知らぬ所、至る所で喧嘩が発生します。

 凄いなと思ったのです。「ワクチン」というたったひとつの火種が、「喧嘩発生装置」として驚くほどパワーを持っているのです。暇な一般人だけでなく、議員や医師を巻き込んで、とんでもない火災に発展していきます。


 SNS上でどれだけ喧嘩しようと現実は何も変わらず何も解決しないというのに。

 あ、目的が共有されていないので議論ではなく喧嘩と表現しています。お互いに聞く耳を持たず自分の意見をぶつけるだけなので、建設的ではないことは明白です。


 私は小説のネタ集めとして、色んな界隈の喧嘩を見るのが日課です。なので色んな「喧嘩ワード」にアンテナを張っています。

 古い表現をするとロム専ですね。その話題についてリプも引リツもしませんし自分から呟くこともしません。ただの傍聴者です。

 (私は人生で経験する全てをネタ集めと考えています)


 喧嘩ワードをいくつかご紹介すると、


「ワクチン/コロナウイルス」

「岸田政権」

「性差/フェミ/弱者男性」

「なろう系/本格ファンタジー」

「ヴィーガン」

「熊」

「福島」

「れいわ」

「LGBT」

「トレパク」

「アニメ/萌え/ロリコン/性犯罪」

「パパ活/未成年売春」

「トランプ」

「ポリコレ」

「陰謀論」


 私がよく見るのはこの辺りですかね。明らかな犯罪や公序良俗に反するワードは無しで。

 絶対毎日どこかで喧嘩してるんですよね。最近だと年の差婚とかもあるかな。


 で、最初の「リテラシー」に戻るんですけど、これら喧嘩に対して安易に「判断」はしない方が良いなと思っているんです。

 ただ、見るだけ。眺めるだけ。

 世間的に批難されるような少数意見でも、ネットではひとりが大声で叫ぶことで「なんだか正しいのでは?」と錯覚させることができます。割と簡単に。


 私の判断基準は前回までのエッセイでも何度か語っていると思いますが、一応ここでも整理のために書いておきます。


 ①正誤の定義

 「目的と状況に対して、それが達成に向かうものか否か」

 例:目的=生存

   状況=火事

   手段=水を掛けて消化→正しい

      油を掛けて炎上→間違い


   目的=焼殺

   状況=火事

   手段=水を掛けて消化→間違い

      油を掛けて炎上→正しい


 このように、目的をきちんと明確にして共有していないと、同じ「水を掛けて消化」でも、正反対の結論になります。

 そこをきちんとしていないのに、「手段」ばかり言い合っているのをよく見掛けます。目的が人の命を守ることなら、熊を殺すのは正しく。目的が人の命を奪うことなら熊を殺すのは間違いです。目的がはっきりすれば簡単な話。


 ②目的は何か

 「話し合っている問題の解決策を見付けることなのか、相手を言葉で打ち負かすことなのか、ただの暇潰しなのか、インプレッションを稼げれば何でも良いのか」

 お互いの目的が分からなければそもそも議論として成り立たない。インプレッションを稼ぎたいだけの相手にどれだけ建設的な意見を言ってもさらなるインプレッションの餌にされるだけで、何の結論も出ない。


 ③情報、意見のソース(権威)は何か

 嘘の論文やデタラメの記事、研究はいくつもある。専門的なものなど、自分の目で確かめようのない情報があるのは仕方ないので、その情報を信用するかどうかの基準が必要。

 「ここに載っているなら、まあ」

 「この人が言うなら、まあ」

 「この組織の発表なら、まあ」など。信用に足るソースからの情報かどうか。

 何もかも分からないなら、消去法で「一番の権威」をその座に着けなければならない。そしてそれを大多数が支持する社会的な「正しさ」として共有しなければならない。

 例:このエッセイ最初の「日本国語大辞典」様はソースとして充分信用可能だと思います。初版は1972年、大手小学館から出ているから。

 しかし、SNS上の、どこの誰とも知らないインフルエンサーの意見を、フォローが多い、または賛同するリプが見た目上多いという理由だけで信用することは危険です。真実っぽく話してその実デタラメだらけ、というのは太古の昔から行われてきた詐欺術です。






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 まあ所詮、SNSなんて暇潰しです。余計なストレスを受けることなく、楽しく使用した方が良いと思います。どんな喧嘩があっても、「またやってるわあ」くらいで。

 もしくは、このようにエッセイやブログで意見を書くことですね。割とすっきりしますし、脳内を整理整頓できます。


 異世界に何のイモがあろうが作者の好きにしたら良いじゃないですか。

 誰が誰と結婚しようがどうだって良いじゃないですか。

 なのに、人は直接関わりのない他人事に対してあーだこーだと文句を付け、喧嘩する。今日も明日もネットのどこかで喧嘩。



 という訳で、リテラシー……特にネットリテラシーのお話でした。


 それでは、また。






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「……私が女でも男でも、冒険者になったと思うわ。困難の数は問題じゃないの。だから、私とあなた達では、目的も動機も何もかも違うのよ。だから、あなた達のパーティには入れないわ」


エルル・アーテルフェイス

『エルフの姫』

第179話 絶望的に不毛な会話 より

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