善悪について

『正しいこと』『悪いこと』って、説明が難しかったりしませんか?

『ルールで決められたこと』とバッサリいくことはできますが、それでは納得しない方も居るのでは。


結論から言うと『社会の都合』そして『目的と照らし合わせて矛盾が無いかどうか』です。


※何度も言いますがこのエッセイは全て『私個人の価値観』です。


一番分かりやすいのは殺人でしょうか。

殺人。正しいか悪いか判断できますでしょうか。

正解は、善悪ふたつだけでは決められません。


また最初から説明させてください。


無人島と思しき島に、成人した男性Aと女性Bの夫婦が漂着しました。

夫婦はなんとかその島で生活する術を身に着け、暮らしていました。


ある時、Xという人物が現れました。

Xは成人男性ですが生活能力はなく、AB夫婦から食糧を分けてもらって生活するようになりました。


Xは仕事もせず、一日中ゴロゴロしています。やがて、ABに対して飯が少ないだのあれを持って来いだの横柄な態度を取るようになりました。


AやBがいくら注意しても説得しても聞く耳を持たず、その態度はどんどん大きくなり、不平不満を漏らし続け、罵詈雑言を言い放つ日々。


ある時Aが仕事で家を空けている時。XはBを強姦しました。


それを知ったAは、Xを殺しました。


その後夫婦は何事もなく、平和に幸せに暮らしました。


……Aの行った殺人は『悪』でしょうか。自分がAならどうするでしょうか。


もし殺人をしなければ。AB夫婦はどうなっていたでしょうか。


ここは無人島です。国も法律もありません。誰が誰を罪に問えますか。


前回で言った通り、『夫婦』は『生きること』を目的とした組織です。

それを脅かすXは、法律などなくとも『犯罪者』となる訳ですね。


善人を殺すのは悪。悪人を殺すのは善。

この基準は、やはり『社会の都合』で決まります。


逆に、Xからすれば全くの逆です。『楽して生きる。欲を満たす』という目的だったとすれば、横柄な態度も強姦も、『善行』『正義』になる訳です。Xはたったひとりの『社会』ですが、この政治家であるXのミスを指摘するなら、『Aが激昂して殺される=生きるという目的が達成されなくなる』というリスクを考慮できなかったことです。


今回のように互いの正義がぶつかった場合。それもお互いの『目的』が正反対の、命の懸かった激突の場合。

引けば目的は達成されず。負ければ死。


これを戦争と言います。

戦争については、また別で取り上げます。




もうひとつ、例え話を。


街から火が出ました。

それを見た、AとXの反応。


A「これは火事だ。火を消す為に水を掛けよう」


X「これは祭りだ。盛り上げるためにもっと薪を焚べよう」


さて、どちらが正しいでしょうか。

この時点での情報では、『判断できない』のではないでしょうか。


これが火事なら、Aが正しく。本当にそういうお祭りなら、Xが正しいのです。

逆に、お祭りだったなら、Aは祭りを白けさせた悪者で、火事だったならXは頭がおかしいと糾弾されるでしょう。


火事の場合、目的は『人命救助』『延焼防止』など。これらに沿って、消火活動や救助活動など手段が行われます。

お祭りの場合、目的は『盛り上げる』『もっと燃やす』と、真逆になる訳ですね。


物事の善悪は、『目的に沿っているかどうか』。


特に何も考えずに『こいつは悪いやつ』という感情を抱いた場合でも、無意識下や暗黙の了解として、目的を意識している筈です。自分の中のルールや目的と照らし合わせて判断している訳ですね。


戦場で大量に殺戮する恐怖の軍隊も、家に帰れば家族サービスの多い優しく良い夫、父であったり。


なので善悪の基準は国々にあるし、個々人でもあります。普遍的なものではなく、統一できるものでもありません。


何かの善悪を問う場合は、一度話し合うメンバー同士できちんと目的を洗い出して共有してから議論をしましょう。そうすれば、平行線にはなりません。全員に、議論をして問題を解決しようとするつもりがあるなら。


ああ、『議論について』も語りたいかもしれない。






――


「『魔物』とは、蔑称なのだ。我はこれより、魔王ではなく王だ。お前はこれより、メスではなく女だ。黒き獣はこれより、悪魔ではなく神だ。白き獣はこれより、神ではなく悪魔である」


レヴラデウス

『逆転のレヴラデウス』

『承 革命と創世』より

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