ホシガミルセカイ

天竺

第1話 ヒトガミルセカイ

“なぜ私はこの地球に存在しているのか。”

そんな疑問を考えるのは、人間生きていれば皆、考えるのではないでしょうか。

人が存在する理由、人が生きる理由、それを”表面的”に皆、答える事が出来るかもしれない。

ある人は愛の為に存在している、ある人は富や財産、名誉の為に存在している、ある人は懺悔の念で存在している…人が存在する数だけ理由がある。

ただ、それは本当の理由なのか?本当に人間がこの地球に存在する理由なのか?…ふと、そんな事も考える時があるのでないだろうか…。


中学3年生の15歳…中学校卒業を間近に控えた時期、間宮 透(まみや とおる)は、近所の人影が無い小さな丘に理由も無く登っていた。


「さすがにこの時期に日の出を見ようなんて、馬鹿だったかなぁ。」


2月の日の出前、立春を迎えているとはいえ、

白い息は一際寒さを際立たせ、風が吹けば頬に突き刺さる寒さは、震えが止まらないほどの厳しい寒い時期である。


「お!星がまだ見えるな、綺麗だなぁ。」


周りに街灯が無く、日の出前とはいえ、星がきらびやかに光る。

そんな中、ひときわ輝く物体が少しづつ動くのが見えた。


「ん?…おぉ?…おぉぉ!なんだあれは!?

赤い?赤い流れ星…?宇宙船!?」


その光る物体は、遠い空の彼方から西の山へと消え去って行った。


「なんだったんだ…あれは…あっ!携帯で写真撮るの忘れてたぁ〜。しかし、世紀の発見か!?軍隊の機密事項に触れてしまったか!?」


そんな事を考えているうちに、東の空が綺麗なピンクとオレンジを足したような、なんとも言えない幻想的な色合いに染まってきた。


「おぉ〜…日の出だ…サンライズだ…。大人の階段を登るって、こうゆう事なのかな…。」


大人というがなんなのか、そんな事に物思いにふける、15歳…。


東東(ひがしあずま)中学校、それが透の通う中学校だ。

近隣校からは、”とうとう中”と馬鹿にされる事が多い。


「とおるぅ〜!眠そうだなぁ!?夜中にエッチな動画でも見ていたか?笑」


そう朝から騒々しく話しかけてくるのは、産まれた時からの幼馴染である、時枝 薫(ときえだ かおる)。

彼とは、親同士も同級生で、いわゆる腐れる縁というやつだ。


「うるさいなぁ、朝から。お前は呑気で良いよな。俺は今朝、世紀的な発見をしてしまったかも知れないのに。」

「なんだそれ?世紀的な発見って、もしかしてお宝動画でも見つけたか?笑」

「ちげーよ、見たんだよ…軍事秘密を…。」

「世紀的発見とか、軍事秘密とか…何言ってんだよ。笑 どんな事を見つけたんだ?俺様に教えてしんぜよ。」


薫は少し小馬鹿にした表情を見せつつ、興味ありげに聞いてきた。


「よく聞け…今朝、東坂の丘(あずまさかのおか)に日の出を見に行ったんだけど、そこで空に赤く光る物体が、動くのを見たんだよ。

それは、神々しく光りながら西の山へと消えたんだ。」

「…かっーかっかかか笑 なんだそれ!お前頭でもおかしくなったんじゃ無いか笑 それ絶対寝ぼけていたんだろ笑 ってか、この寒い時期に朝日を見に丘へ登るとか、どんだけ厨二病だよ。笑」


案の定、薫はいつもの奇妙な笑い方をしながら小馬鹿にしてきた。


「だから、お前には真面目な話をしたくないんだよ。忘れてくれ、どうせ俺は厨二病で痛いやつだよ。」


不機嫌そうに薫に捨て台詞を言い放ち、教室を去ろうとした時、少し申し訳なさそうに…


「ちょっ!待てよ〜!透!悪かったよ〜…その光る物体が本当に西の空に消えたなら、ニュースになってるかも知れないから、調べてみようぜ!」

「いいよ、あんな朝早くに光る物体を見てる暇人なんて俺くらいだろうし、調べたって無駄だよ。」

「ちょっとTwitterで調べてみるから、少し待ってな!」


半ば、やけくそになっている透を引き止めて、薫が携帯で調べてみると…


「おい!透!これ見てみろよ!#赤い彗星で調べたら一件それっぽいのが見つかったぞ!」

「…見せろ、今すぐ見せろ!」


透が薫の携帯を奪い取り、画面を見ると、今朝見た赤く、神々しく光る物体の画像が映し出されていた。


「…これだ…これだ…これだよ!!俺が見た赤い物体はこれだよ!」

「おぉ〜!お前が言っていたことは本当だったんだな笑 すまんすまん!厨二病発言撤回してやるよ笑」

「……。それより、この投稿者誰だよ?名前が… Char Aznable…ちゃーあずなぶる?…」

「…透…お前見かけによらず、馬鹿な所あるんだな。これは、シャー・アズナブルって読むんだよ。#赤い彗星といい、多分初代ガンダムファンなんだろ。」

「なるほどー!ガンダムマニアか!しかし、それにしても年代古く無いか?」

「多分40代か50代くらいのおっさんが投稿したんだろ。」

「ほほぅ〜…。まぁそうか、日も出ていない早朝に起きて散歩しているなんて、俺みたいな厨二病か、早朝の散歩を趣味とする、年配者くらいか。」


…そんな偏った考え方をしながら、話していると…


キーンコーンカーンコーン…


「うわっ!やばい!朝のホームルームが始まる!またな透!その光る物体について、また放課後でも調べてみようぜ!」


そういって、足早に薫は隣のクラスへと去っていった。


ガラガラ…


教室の扉を開けて、担任の先生が入ってくる。


「おらぁ!おめーらきちんと席に着きやがれ!朝から騒がしいんじゃ!」


名前は神崎 静香(かんざき しずか)、年齢は27歳ほどで、髪は腰くらいまで伸びる艶やかなロングヘアー。身長は170cmほどの、いわゆるモデル体型。顔も整っており、名前とその容姿、体型から育ちの良いお嬢様という感じで見られがちだが、それとは裏腹にかなり口が悪く、ヤンキー上がりが噂されるギャップが激しい担任の先生。


「おめーらよぉ、もうすぐ卒業だってのに、全然成長しねーなぁ!進路決まって、気が緩んでるんじゃねーのかー!?あーっ?」


…美しい容姿とのギャップに萌えるというファンも少なくは無く、噂では生徒の間で、ファンクラブもあるみたいだ…はっきり言って透にはそれが信じられなかったが。


「先生、噂に聞いたのですが、結婚間近の彼氏さんが居るって本当ですかー?」


…命知らずの強者がこの教室にはいると、誰もが思った。

質問をしたのは、KY(空気読めない)で有名な、小泉 美奈子(こいずみ みなこ)だ。


「小泉…てめぇ…ぶち殺されてぇようだな…。」


…教職とは…と思える言動だが、神崎 静香という人間を知りながら、質問をする方も、する方だ。


そんな”平和的な”今日一日が始まり、そして過ぎてゆく…。

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