第2楽章 Andante cantabile 表情豊かに④

そうして、会えない日々が続いた。


「ちょっと忙しくて会えないけど、また早く会いたいね。」


こんなLINEが来てはいつも会話は止まってしまう。

というより、忙しくて「会えない」と断言されているんだから、「会いたい」と伝えられなかった。気持ちがいつもそこでストップをかけていた。ここを「会いたい」とか言えたらどんなにいいかな、、、なんて思ったこともある。


今までLINEなんてほとんど確認しなかったのに・・・。

通知はオフにしてるから、確認したい時だけ確認してたのに、最近は気になってしょうがない。

早く来ないかな...という気持ちが自分の目線をチラッとスマホに向けさせた。

いくら確認したってLINEに新しい連絡はない。


そうして、1日1日、

それが1週間、2週間...


このままでいいのかな...

忙しいのはわかってる。

自分もそんな時に連絡を入れられたら嫌だ。


だけど....これは....


寂しいのか、自分...


好きな人から連絡もなくて次のデートの約束もない事が悲しいし、寂しいんだなと気づく。

こんな気持ちは、初めてだ。

友達じゃなくて異性に対してそう思えたこと。


自分の成長をふと感じつつ、それでもこの漠然とした寂しさは心をどんどん蝕み、どんどん気分が下がっていく。


何か自分から連絡しちゃダメかな...

待ってるだけでいいのかな...


こんなに連絡しないで、いいのかな...。

これで彼氏彼女とか言えるの?付き合ってるの、、、?


そんな悩みが膨らむ中で、ようやく8回目のデートの日がやってきた。


「ごめんね、でもね仕事頑張ってるよ!今日は会えて嬉しいよ!」


そんなふうに喜んだ顔を見ると、どんだけ不安だった自分の悲しみが一瞬消え去って、良かった、会えた、と安堵に変わった。

それでも、拭えされなかったことがある。


それは、名刺をもらえてないこと。

会社を教えてもらえていないこと。

たくさんいったという海外旅行を証拠づけるパスポートだって見せてもらえてない。

彼の部屋は至ってシンプルで、荷物は驚くほど少ない。


一応、全部質問したことがあったかが、答えになってるのかなってないのかわからないようなものばかりだった。


必要最低限のスーツ数着と、靴箱つきの靴が玄関に綺麗に置かれている。一応、そこに住んでいるらしい形跡はあるけれど、あまりに綺麗すぎる。


なんだか不安が拭いきれない、、、。


私、結婚をこの人と付き合っていたいのかな...。


こんな不安な気持ちを結婚後もずっと続けられるのかな...。


本当にお金が全てなのか....?


でも、

仕事ができてかっこいい、話してくる内容はすべて知らない仕事の世界、話してくれるもの、触ってくる手つきも、そして深くて優しい声も大好きだ。


それがその時の、全てだった。

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