魂だけになった俺のチートスキル『吸収』がモンスターの力を取り込み、俺を追い出したSランククラスに裁きの鉄槌をくだします。

サカイヌツク

第1話 死後の出会いと別れ

 高二の春、俺は死んだ。


 死因はなんだったかな、よく覚えてないけど、不慮の出来事だったと思う。

 事故死だったかも知れないし、自殺だったかも知れない。


 死んだ後は、魂となって色々見ていた。

 現世に未練があった。てことなのかな。


 その時出会ったんだよ、俺の運命の人に。


「あの、もしかして貴方も死んじゃったの?」

「……そういう貴方もですか?」


 その人は俺と同様に、魂のまま地元の街をさまよっていた。


「はじめまして、私は神木瑠璃と申します」

「……俺は吾妻シレトって言います」


 俺こと吾妻シレトの魂は、彼女との出会いを果たした直後、その時を迎えた。


「あれ、急に空が晴れて来た」

「なんでしょうね、空が晴れたというより、時が来たって感じじゃないですか」

「時が来た?」

「俺、死んでからそろそろ四十九日を迎えるんですよ」

「あー、つまりあの世に行くってこと?」

「です」


 と言うと、俺と彼女の魂は空から射し込んだ光に吸い込まれていく。


「実は、私も四十九日迎えるんですよね」


 幸運だった。と言うのは失言なのか。

 死出の旅路に連れそいが出来たことに、不安になることもなく虚勢をはれたから。


 彼女と二人で空の光の中に、魂を埋めると。


「っ!?」


 俺たちは一匹の巨獣と対峙していた。

 神様、と言うには、どう猛な外見をしている。

 四足で巨体を立たせ、額に見事な白い角を持ち、猛禽類のように瞳は細い。


「魂を導くのに、姿格好などどうでもいいだろう。これから二人には私が司る世界、イルダに招かれてもらう。異議があればこの場で申せ」


 異議?


「どんな所ですか?」


 隣にいた彼女はその巨獣に今から向かう世界がどんな所なのか尋ねていた。


「お前らの居た世界とは違い、科学は未発達。代わりに魔法文化が台頭している」

「魔法があるんですか?」

「喜ばしいのか?」


 巨獣がそう問うと、隣にいた彼女は首を縦に振っているようだった。


「では、女には魔法を特技とする力を与える……男の方に希望はあるか」


 巨獣は視線を俺に移し、猛禽類の目をむけてくる。


「……希望とか言われても、ぱっと思い浮かびません。俺はろくに夢を持てなかったから。彼女のように憧れるものがないんですよ」


 この世に生まれてから、死ぬまでの十六年、俺には夢も希望もなかった。

 貧乏気質な家で、ただゲームを惰性にやっていただけだった。


「では、お前には宿命を与える」

「宿命?」

「お前の力は吸収、これで何にでもなれるだろう」


 巨獣の神はそう言うと、前足の蹄を打ち付け、大気を震撼させては言うのだ。


「二人の申し開きはこれで終わりだ。後は、私の世界で生きろ」


 ――そして、いずれまた会おう。


 神様が別れを告げると、俺は異世界イルダに転生していた。

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