第5章 二つの夢を追って

第30話 もう一つの願いを追って

そして、僕らはまた次の日から一緒に練習を始めた。


前と同じように、二人で呼吸を合わせて、思いを合わせて、力を合わせて磨きこんでいった。


更にそれと並行するように、呪術の出し方が載っている本を、僕らは一生懸命探した。彼女が住む森之宮神社の本殿を、そして他の建物の中も一生懸命に探していった。


でも、それでも中々呪術の載った本は出てこなかった。 彼女の父親がとても厳重に、中々わからないような場所に保管したと聞いているから、もしかしたら、想像以上に妙なところに隠したのかもしれないな、なんて二人で憶測を立てていたが、それはまだ憶測にすぎないので、とにかく思いつく限りのところを二人で探し回った。



しかし、そう言う事をしている間にも、確実にその病は悪化の一途を辿っていっていたようで、日を追うごとに彼女の身体は徐々に病に蝕まれていった。


ある時も、いつもの様に練習をして次に彼女を自宅の神社に送り届けながら、一緒に呪術の載った本を探そうと山に入っていったのだが、いつも涼しい顔をして下っていっていたところもとわは、息切れを繰り返して、苦しそうに下っていった。


ぜえええ・・・・はああああ・・・・ぜええええ・・・・・はああああ・・・・


苦悶の表情を浮かべながら、でも少しずつ足を進めていっていた。


そして、足がもつれて、倒れそうになったところを、僕はすかさず抱き留める。


このままでは、身体が持たなくなってしまう。


僕は、彼女を背負って森之宮神社を目指すことにした。いざ背負ってみると、彼女は羽のように軽くて、そして本当に小さかった。



こんな優しくて可愛らしい女の子が、なんでこんな酷い病、運命に翻弄されなくてはならないのか。


そして、それに何も抵抗することが出来ず、彼女の力になる事の出来ない僕自身が情けなくて仕方なかった。


それでも、足を止めずに僕は神社を目指してひた歩く。


そして耳元から、そよ風のように弱くも、しかし確実に何かを伝えようとする声が聞こえてきた。


「ごめん・・・なさい・・・私のせいで・・・こんな・・・・」


「だから、そんな謝る事はないだろ!! この間も言ったろ? 僕は君の運命とも戦っていくって。だから、僕は絶対にあきらめない。自分の夢を叶えて、そして、君も救う。」



「でも本当に・・・本当に無理はしないで・・・・お願い・・・・あなたの夢が叶わなくなるのが本当に私は恐いから・・・・お願い・・・・お願い・・・・」



今にも崩れ落ちてしまいそうな彼女を見て、僕も目から感情があふれ出しそうだった。


ボロボロでもう言う事の利かない身体を必死に動かし力尽きそうになって、それでも僕の事を考え続けてくれるとわの優しさに、僕は心を打たれた。


ここで負けちゃいけない。でもくじけそう。それでも少しずつでも希望を探していかねば・・・・。


僕は足をせっせと歩き進めて、森之宮神社を目指した。







しかし、オーディションまで残すところあと一週間に迫った、ある日の朝の事。今まで恐れていた事態が遂に起きてしまった。


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