第39話 本当の戦い〈国王side〉

 王宮の最奥部。


 国王の為に作られた主宮殿のサロンで、は宰相とボードゲームに興じている。




「私の勝ちです」


「うーん。これもの負けか……」




 上機嫌の宰相は満面の笑みだ。


 悔しいが、このところ負け続けている。




「しかし、ベイト殿下は惜しかったですな」


「そうだな。もう少し上手く立ち回れるかと思っていたが……やはり本人の資質だけではどうにもならんか……」


「相手が悪かったのでしょう。ヴィクターとヒポクリット、あの二人を敵に回したら簡単にはいきませんからな」




 宰相のヤツ、得意になっておる。


 確かにあの二人を揃えた時点で王妃の作戦勝ちだったのかもしれないな。


 しかし知らぬこととは言え、ヴィクターからグレイシアを奪ったと密偵から知らされた時は、これでクラウンは終わったと思ったものだが……。


 現実は想像を簡単に超えて来るから面白い。




「私もヒポクリットがクラウン殿下にルーザリアを勧めた時は、本当にどうなるかとヒヤヒヤしました」


「うむ。あれは奴がヴィクターをクラウンの側近として働かせるための布石。一種の賭けだったのだろう。しかもヒポクリットはそれなりに勝算があったからこそ、あの手を使った。そういう事だ」




 ヒポクリットとヴィクターに試練を与え、それを乗り越えられるか試したのは宰相だ。


 その点では関与していない。


 だが、ヴィクターは我々の予想を遥かに超えてきた。


 ヒポクリットの仕掛けを利用して、まさかマイティー王女を引っ張り出して来るとは……。


 これは自分の息子などより、あの二人の側近が、どれだけ上手くこの国を動かし操るか、そのほうが楽しみになって来た。




「では、私の勝ちですからね。約束通り、私は隠居させてもらいますよ?」


「は? いや、ちょっと待て、今はまだマズイだろう」


「何を言ってらっしゃる。今でなければいずれ火の粉が飛んできます。せっかく娘が孫を産みましたから、しばらくそちらに行って来ますよ」


「火の粉だと?」


「フールの素性はバレませんでしたが、別口からこちらを辿たどられています。導火線に火はいてますよ?」


「なに!? それはマズい。おぬしだけ逃げるのは狡いぞ」


「陛下はよろしいではないですか、いざとなったら譲位なされば、きっと良い条件で取引してもらえますよ」


「うーん……」




 納得いかないと思ったが、考え直す。


 そうだな。


 を追い詰められるのなら、玉座を褒美にやっても良かろう。


 そうとなれば、最後の最後まで手強い相手を演じるのも面白そうだ。


 考えるだけで愉快な気持ちになってくる。


 あやつらがどこまでやれるのか、お手並み拝見と行こう。

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