第5話

 3年生になっても気持ちは荒んでいた。

進路を真剣に考えなければいけなくなった悠人だったが進学のこともどうでもよかった。

でも、そんな風にしか思えない自分も嫌だった。

どうしたら、こんな自分を変えられるのだろうかと悶々としていた。

それを気にかけていてくれた亮が、地元の朝日高校を受験するため、一緒に受験勉強をしようと持ち掛けてくれた。


「高校は朝日高校と決めてる。地元で家から通えるし県立高校なので学費も比較的安くて済む。うち母子家庭だし、高校に行き始めたらバイトもするつもりだよ」と亮は言った。


「亮は凄いな。家庭の事情も考えて。それに引き換え俺は何にも考えてない。何してんだろうな、俺」


「ユートもまずは高校受験を目標に、今から始めればいいじゃん」


 それをきっかけに悠人は亮と学校が終わると、お互いの家を行ったり来たりしながら受験勉強に専念し始めた。

悠人も目標ができたことで、少しづつ気持ちが変わってきていた。

そして高校に無事入学出来たら、新聞配達を始めよう、そんな風にも考えていた。

今の弱い自分を変えるにはそれしかないと思えた。


新聞配達は一日のうちの朝、まだみんなが寝ている間の2時間位の時間を使ってできること。

ということはみんなが寝ている時間に起きていること。

毎日、雨が降ろうが嵐が来ようが休むことは許されない。(休刊日以外は)

眠たい自分を奮い立たせる自分との闘いである。

社会に役に立つ仕事でもある。


挙げればきりがないほどやりがいがあり自分を変える要素満点だ。

これはやるっきゃないでしょう!

悠人は意外にも、大変なことに挑戦することに燃えるタイプの人間だったようだ。


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