第9話
そうして情報を集めていく内に、様々な情報が集まった。いや、正確には多すぎる噂話の中から厳選して調査した結果なのだが……。
「まさか、亡くなったイラストレーターの作品が盗作されたモノだったとはな」
「はい、その盗作された作者は何度も抗議文を送ったり削除する様に求めたりした様ですけど……」
先に被害者の方が売れてしまったため、世間的には「僻み」と取られてしまったらしい。
「だが、コレを盗作だと分かっていた人間も少数ながらいた。それらも多数の声につぶされてしまったようだな」
調べた情報を前に、おやっさんはため息を漏らす。
「なんとも悲しい話だな。しかも、作者は掲載した時点では自分自身のサインも入れている。それが巧妙に消されているのも許し難い」
そう、実は亡くなったイラストレーターが作品を公開する数日前にイラストを公開していた。
つまり、どちらが書いたのか……という事は元々の作者を知っている人間からしてみれば一目瞭然だったのだ。
「まぁ、たまにすぐに上げて修正したいからって削除をしたりしてタイミングがズレていたりなどして、混乱していたという人もいる様だが……」
「でもまぁ。こういった話が明らかになれば、イラストレーターが亡くなったのが『怪異』によるモノ可能性が一気に高くなる」
「ああ、その原作者は既に亡くなってしまっているからな。恨まれていたとしても不思議じゃねぇ」
「……」
如月はその話を聞くだけで胸が苦しくなった。
なぜなら、この元々書いていた人は入院生活をしており、イラストは趣味として描いていたからだ。
おやっさんに調べてもらった結果。盗作の事実が分かって二ヶ月程で亡くなってしまい、当時の担当医は「どうして?」と疑うほど、そのイラストを描いていた人の症状は改善の兆しを見せていたらしい。
「当時、たくさんの人に見てもらえて嬉しいと笑っていたのですが……」
しかし、それから盗作の事実に気がついてからその人はみるみる弱っていってしまい、そのまま亡くなってしまった。
「その人のアカウントは消されていたけど、ファンだった人は確かに存在する。しかも、その人は入院していたという事は、病院で絵を描いていた事という事を知っている人も当然知っていたでしょうね」
「その中には、病院に入院している患者もいるだろうな。何せ大部屋だったみてぇだし」
「ええ。それにたくさんの人が見る事の出来るというのがSNSの利点でしょうから、その人のイラストに勇気づけられていた人もいるでしょうし」
「それじゃあ……」
つい先程、瑞樹は「可能性が上がる」と言っていた。しかし、今の話を踏まえると――。
「まぁ、コレだけ条件が揃っちまえば『怪異』によるモノの可能性は一気に跳ね上がるな」
「それで? どうするの? とりあえず可能性は高いけど、一応『怪異』の目的は達成したわよね?」
「ああ、でもよ。姉貴も現場を見た時に気がついただろ。消えた痕跡がなかった事くらい」
ニヤリと笑う瑞樹に、シスターは「ええ」と深刻な表情で答える。
「基本的に『怪異』は目的を達成すれば消滅する事がほとんどよ。それなのに、その痕跡はなかった」
「だからよ。また別の『怪異』になっちまったとしたら……どうだ?」
瑞樹は挑発するようにシスターに言う。
「まさか! いえ、でも」
「あのゲームのサービス終了を受けて憤慨した人間はいる。しかも、評判が良かったのに……だ。それに、亡くなった当日。イラストレーターは酒を仰ぐほど飲んでいた。無関係とは言えねぇだろ」
「確かに」
言われて見れば確かに、恨まれていてもおかしくはない。
「おやっさん。このゲームのプロデューサーは」
「あ、ああ。調べた……が、どうやらそのイラストレーターと友人らしくてな。何でも数日前から言い争いが絶えなかったらしい」
「ほぉん、それで?」
「近くで聞いていた人がいたワケじゃないから内容までは分からないが……あ、そういえば今日。半休だとか言っていたな。だから、その後に事故現場に花を手向けに来ようとか言っていた様な……」
『!』
おやっさんのその言葉を聞いた瞬間。その場にいた全員がハッとし時計を確認すると、すぐに事件現場へと向かった――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます