第7話
「それで、おやっさんに調べてもらった結果。被害者……って言えば良いのか分からないけど、とにかくこの人は無類の酒好きらしい」
次の日。瑞樹は早速おやっさんからもらった情報を話した。
「そうなの」
「じゃあ、やっぱりお酒に酔っぱらった上での事故……という事なのでしょうか」
現状としては、それがもっとも現実的だ。
「まぁ、確かにその日も一人で馴染みの居酒屋で飲んでいたらしいっていう供述は既に取れている。ただ」
「ただ?」
「その飲み方がいつもと違ってかなりハイペースで飲んでいたらしい」
「あら、そうなの。でも『いつもより』という事は、本当によくそのお店を利用していたのね」
シスターの疑問に対し、瑞樹は「ああ」と頷く。
「その店には週に三か四。多ければ五日程行っていたみたいだな。しかも、ボトルのキープもあった」
「ボトルのキープ……ですか」
如月はまだお酒が飲める年ではない。だから「ボトルのキープ」と言われても今ひとつピンと来ない。
「簡単に言うと、常連って事ね。お酒を丸々大きな瓶で一本買ってその瓶を置かせてもらっている状態。常連じゃないと、そのボトルは置きっぱなしになっちゃうから」
「なっ、なるほど」
「でも、その話を聞いちゃうとどうしても自殺の線は捨てきれないわね。ゲームのサービス終了の時期も相まって」
「そうだな」
瑞樹はそう言ってアイパッドを操作する。
「まぁ。おやっさんの話では明らかにそのゲーム会社はきな臭いらしいけど、のらりくらりと逃げられているみたいだし、今のところ進展はなし……みてぇだな
「そう……ですね」
見るからに肩を落とす瑞樹に、如月もそれに同意をした。その時「はい」と手が上がった――。
「どうした、姉さん」
「いえ、ちょっと気になった事があってね」
「気になった事?」
「ええ。そもそも、その人って顔を出さずに活動していたのでしょ? どうやってそこまで有名になったのか気になってね」
シスターの疑問に、瑞樹は「はぁ」とため息を漏らす。
「なっ、何よ」
「あー、でも姉貴もそういったモノは苦手だったか。まぁ、基本的に『怪異』に詳しい人間はこういったモノに疎いところがあるからなぁ」
そう言って瑞樹は天井を見上げる。
「だから、何よ。一人で自己完結しないでよ」
それに対し、シスターは少し苛立っている様に見えた。まぁ、質問をしたのにそれに答えず勝手に自己完結されれば、苛立つのも無理はない。
でも、確かにシスターからスマホやパソコンなどはあまり連想出来ないが。
「ああ、いや。今の姉貴の質問に答えようと思ったら、一から説明しねぇといけねぇと思っただけだ」
「どういう事?」
「いやだってさ。姉貴、SNSとか知らなそうじゃねぇか」
瑞樹のこの言葉に対し、シスターは「そんなのさすがに知っているわよ!」と大声で答える。
「ほぉん。じゃあ、自分が書いた小説や絵や動画なども公開する事が出来るって事は?」
そう瑞樹が尋ねると……。
「え」
「え?」
シスターは「そんな事も出来るの?」と言わんばかりにその場で固まった。
そして、スマホなどは持っていないモノの、瑞樹の言っている事が理解出来た如月は、思わずそんなシスターに驚いてこちらもしまった――。
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