第45話 分からないカレ

 日向君の背中が見えなくなってから、私は暖房の利いた暖かい部屋に戻った。

「日向君……」

最近の日向君は、どこかおかしい気がする。最近、というか二人で日光に行ったあの辺りから。前までは自然で、柔らかい、私を包み込んでくれるような笑顔だったのに、日を増すごとに、模造品みたいな薄っぺらい、冷たい笑顔に変わって。前まであんなに長くて楽しかったメッセージも、最近はどこか簡素で、淡白で、ちょっとだけつまらなくなってきて――。最近、二人でいる時、胸がギュッて苦しくなって、少し切ない気持ちになる。

 私にはもう、日向君の気持ちがぜんぜん分からなくなってしまった。

「明日……。明日、ちゃんと聞かなくちゃ……」

私は一人きりの部屋でひそかに決心をして、机の上に広がった勉強道具の片づけを始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る