第2話大きな桃

ようやく、ジジイとババアは屋敷の庭に大きな桃を運び込んだ。扉よりデカイ桃は、ババアに包丁で切るように指示した。

ジジイは咥えタバコで、トカレフの玉が当たった場所を撫でた。

果汁が出ていた。ジジイはその果汁の匂いを嗅いだ。

「う、ウグッ!くっせ~。腐ってんのか?」

ババアが現れた。包丁で切ろうとした。


全く刃が立たない!


「ジジイ、全く切れねえだ!」

「ば、ババア、例の妖刀を持ってきな?」

「ジジイ、あれは代々伝わる妖刀ばい!単なる桃を切るに使うはご先祖様に申し訳ないばい

「うるせ~、ババア、村正を持って来い!」

「あいよ!」

ババアは屋敷に戻り、妖刀村正をジジイに手渡した!

「ババア、今まで苦労かけたの。この刀を抜けばオラは死ぬだ!ババア、たっし……」

「な、何言うだ、じじい。あたいもジジイと一緒にあの世に行くだよ!」

「バ、ババア、オラは幸せもんじゃ。ならば行くだよ!」


老夫婦は村正を二人で持ち、大きな桃を真っ二つに切った!

「あらっ、オラたずは生きてのか?」

「ジジイ、おらたずは死んでないばい」

「それより、ババア。桃の中心が光ってねぇべや?」

「はて?ホンとばい」

老夫婦は光に近付いた。中には、人間の赤ちゃんが寝ていた。

「バ、ババア。赤子じゃ」

「ホンとですばい、ジジイ」

「早く、このクセ~桃はどうでもいいから、スクスクミルク買ってきやがれ」

「あいよ!」

ババアは村のスーパーへ向かった。

赤子は腐った桃から産まれた、「桃太郎」と名付けられた。

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新説・桃太郎モノ語り 羽弦トリス @September-0919

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