その21 箱の中の黒猫

 小物入れの蓋を開ける。

 ヘアピンやらブラシやら、ごっちゃり。大掃除で部屋は片付けたけど、箱の中は去年のままだ。あと机の中も。どうせ見えないし。

 取り出したのは、真新しいペンダント。青色の宝石を黒猫が抱えているデザイン。

 思わずにやけてしまう。

 去年のクリスマス、何でも買ってやると大見得を切った父と向かった雑貨屋で。

 一目ぼれだった。そしてお値段も――

 首につけて手鏡を見る。黒と青がタートルネックの白に映える。そういえば今年の干支はネコ科だっけ。うん、幸先がいい。

「おーい、そろそろ行くぞ」

 父の声に顔を引き締める。にやけた顔を見せると調子に乗るから。でも――

「ありがと、お父さん」 

 小さく呟いて、私は部屋を出た。

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