第11話 最終話

なつかしいね


そうですね

健一さん

何か大事なことを忘れていませんか


何だったかな


もういいです


怒ってしまったかな


いえ

待っています


外の空気はいいですね

心も体も綺麗になるような気がします


そうだよね

もうすぐ着くよ


海が少しずつ近づいてきましたね


あの時と同様夕暮れ時か


そうですね


着いたよ

本庄さん、ここに座ろう


はい


波の音がすぐ近くで聞こえると心地よいね


そうですね

いつまでもこうして健一のそばに寄り添いたいです


そういえばホタルも見に行ったね


ホタルは綺麗でしたね

本庄さんの肩に止まってさ


そうでしたね

ホタルの寿命は短いと聞きました

私もホタルなのかな


そんなことはないよ

本庄さんは今も輝いているよ


本当ですか


ああ


ところで足は痛くない

痛み止めの注射をしたので痛くありません


よかった


健一さん


入院してから、少しずつ足が動くようになったような気がします


そうか・・・


どうしました急に元気がなくなりましたよ


いや、気のせいだよ


そういえばタンポポをくれたよね


はい、吹くと飛んでいきました

健一さんと一緒に吹きましたね

最初、健一さんが吹いて

次に私が吹きました

でも、私もしばらくしたら飛んでいくのかな


タンポポが飛んで行くってどういう意味


本当に飛んで行きそうで


大丈夫だよ俺が離さないから


はい



中学校に転校してから

いじめられました

同級生からは、からかわれ

そこを健一さんが助けてくれて

私の話し方が悪いこと

足が不自由なことなど

私の悩みをこの海辺で相談にのってくれましたね

健一さんがおんぶしてくれて走ってくれました

あんなに早く動いたのは初めてでした

波打ち際もゆっくり歩きましたね

嬉しかったです


そうだったね


それまでの私の苦しみを健一さんが

優しく受け止めてくれてくれました

でも、今でもその思いは心の中にあります



健一さんね


どうした


健一さん、私の夢は

少しずつですけどリハビリをして

少しでもいいから足が動くようなるために

苦しくても頑張ります


健一さん

健一さん、どうされました

どうして黙っているの


健一さん

私が言ったことは何か間違っているのですか

言ってください

不安になるじゃないですか

どうして涙を流しているのですか


いや、気のせいだよ


どうして

声がちがいますよ

健一さん、大丈夫ですか

何か悪いことを言いましたか

健一さんらしくないじゃないですか


もしかして私はもう歩けないのではないですか


そうなのですか

どうして黙っているのですか


よし、本庄さんもう一回おんぶしてあげる

ほら


はい、良かったです

健一さんが元気がでてきて


よし

本庄さん、いい

あの時みたいに走るよ


はい


キャー


ハハハハ


今度は転ばないでくださいね


ああ


わああ


キャ


嘘だよ


もう


花火を二人でしたのは覚えている


はい


綺麗だったよね


そうですね

線香花火に大きな花火


あの時に中学校になったら結婚しようって言ったよね

ここで、結婚しよう

思い出の海だろ


か~ん、か~ん


鐘の音ですね


なんじは俺を愛するか


はい


なんじは本庄さんを愛するか


はい


本庄さん、指輪じゃないけど


これ


これは最後の折り鶴だよ

丁度1000羽になっただろ

約束どおり最後の折り鶴は俺が折ったよ


わあ、綺麗

今でも飛んで行きそう


本庄さんも飛べるようになったよ


いえ、それは出来ません


パト専でさ

俺は再起動しか習っていないって言ったろ

本当はそれでよかったんだよ

再起動したら立ち上がるだろう

そこから立ち上がってみて


無理です


いいから


はい



健一さん立ち上がれました

折り鶴は本当だったのですね


二人で折ったじゃないか


歩いてみて


はい


自由に歩けます


飛んでみて


はい


飛べました


もう、辛い思いはしないよ

みんなに遠慮しなくてもいいんだよ

自分を責めなくてもいいんだよ


折り鶴を頑張って折ったのは無駄じゃなかったんだよ

祈りが届いたんだよ


はい


じゃあ、二人手をつないで走ってみよう


はい


走れるじゃない


キャ


わあ


ハハハハ


健一さん、待って


そろそろ歩いて帰ろう




END



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守ってあげるよ~折り鶴  虹のゆきに咲く @kakukamisamaniinori

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