第21話 ボウリングからの…



 その後、どんどん順番に投げていってゲームは進み、結果は……。


「俺、二四一点だ。まあまあなのかな?」

「誠也くん、めちゃくちゃ上手いねぇ。私も結構自信あったんだけど」

「汐見さんも二百三点だし、すごいと思うけど」

「ふふっ、ありがとう。まあ自分から勝負仕掛けておいて、自滅したドベの人よりかは全然上手いかなぁ」

「……」


 健吾は、百七十二点。悪くはないけど、俺や汐見さんには及んでいない。

 自信があったのかは知らないが、健吾は燃え尽きてなんだか灰になっている。


「えっとー、最下位の人は罰ゲームでなんだっけ? 土下座して勝った人の靴を舐める、とかだっけ?」

「そんなわけねえだろ!? どんな虐めだ!?」


 あっ、復活した。


「あー、じゃああれだ。今日、全部負けた人が奢りって話だったよね」

「そんな話もしてねえ! ジュース一本奢りってだけだ!」

「えー、そんくらいかぁ。しょうがない、一番高いジュース頼もうかなぁ」

「くっ、こういうところの自販機って、なぜか高いんだよな……!」

「俺は適当に水とか一番安いのでいいぞ」

「さすが誠也、この女とは器が違うな」

「んー? なんか言ったかな、負け犬くん?」

「くっ……も、もう一回だ! 次もジュース一本を賭けて勝負だ!」

「ふふっ、もちろんいいよ」


 なんだか健吾と汐見さんは楽しそうだ。

 今度の勝負には俺は入らないで、二人の一騎打ちで楽しんでほしい。


「香澄ちゃん、どう? 投げるのに慣れた?」

「うん、まあまあ。六十点で終わっちゃったけど、次はもうちょっと上目指したい」

「頑張ってください、香澄お義姉ちゃん! 私も次は百点を超えたいですね!」

「そうか、二人とも頑張って」

「……お兄ちゃんに言われるとイラつくなぁ。私と対して経験は変わらないのに、プロ並みの点数取っちゃってさ」

「ビギナーズラックってやつだよ」


 正直、俺はど真ん中にただただ放り込んでいるだけで、ストライクが続いたのは本当にマグレだ。

 何回もやったら、おそらく汐見さんが安定して高い点を取り続けるだろう。


 ということでもう一ゲームやると、やはり俺は二百点にギリギリいかなかった。


「やった! 誠也、私、百点いった!」


 香澄ちゃんもここでビギナーズラックを起こしたようで、ストライクが二回連続で出て得点を伸ばし、百点を超えていた。


「おめでとう、香澄ちゃん」

「うん!」


 いつもの美しい笑みではなく、子供のような無邪気な笑みが俺の心にぶっ刺さる。

 このまま「大好き! 結婚しよう!」と言いたいのだが、優香に止められているのでぐっと我慢する。


「うぅ、まさか香澄お義姉ちゃんにスポーツ系で負けるなんて……!」


 そんな優香だが、今回も百点に届かずに香澄ちゃんに負けていた。


「あの運動音痴で小学校でも中学校でも騒つかれてたお義姉ちゃんに負けるなんて、私はなんてダメダメなんだ……!」

「優香ちゃん待って、その話詳しく」


 うん、俺もそれは聞いたことあるし、すでに高校でも騒つかれてるのは、香澄ちゃんには内緒にしておこう。


 そしてあっちの勝負は……。


「ふふっ、健吾、早く私の靴舐めて?」

「だからそんな虐めみたいな罰ゲームしてねえよ!」

「大丈夫だよ、ボウリング用に借りた靴だから、外用の靴よりも綺麗だから」

「全く大丈夫じゃねえよ!」


 どうやら勝者と敗者は明らかのようだ。

 汐見さんはまた二百点を超えて、健吾はさっきよりはいい点数だが全然届いてない。


「奈央はなんでそんなに上手いんだよ」

「小学生の頃に一回ハマって、毎日行ってた時期があったからね。マイボールも持ってるから、それ使ってたらもう少しいい点数取れたなぁ」

「くそ……俺よりバスケは下手なくせに」

「あはは、負け犬の遠吠えはみじめだねぇ」

「くっ、なんも言えねえ!」


 あの二人はやっぱり仲が良さそうだな。

 健吾があそこまで楽しそうにツッコミをしてるのも初めて見る。


 とりあえず、俺は一本、汐見さんは二本、健吾に奢ってもらった。



 その後、俺達はボウリングをやめて次の遊びへと行く。

 次もスポーツが出来るところで、最初に目についたのはローラースケートだ。


「あっ、あれやってみたい! やっぱりスポチャといえばあれだよね!」


 優香が目を輝かせながらそちらの方に行って、スケート靴に履き替える。

 俺らもスケート靴に履き替えて、適当に遊ぼうとするが……。


「せ、誠也、待って、動けないんだけど、これ……」

「……だよね」


 生まれたての子鹿になっている香澄ちゃん、可愛いな。

 そのままずっと見ていたいけど、転んだら危ないから近づいて支える。


「大丈夫?」

「むり……立つだけでもギリギリなのに、これで滑るなんて無理に決まってるわ。こんなの、人間がやっていい遊びじゃない」

「いや、人間くらいしかやれないスポーツだけどさ」


 うーん、これに関してはコツとかがわからないから、あまり教えられない。

 俺も今日初めてやったけど、普通に立てるし滑れる。


 他の人達も普通に滑れてるし……あ、健吾が転んだ。


「いって!?」

「あはっ、だっさーい」

「ちょっと待て、今、誰かに押された気がするんだけど? すぐ後ろに奈央しかいないんだけど?」

「えー、知らない。お化けに押されたんじゃない?」

「……そうか。ほら、じゃあ次は奈央が俺の前を滑れよ」

「んー、いいけど。私に触ったら痴漢って叫んで警察呼ぶから」

「理不尽すぎる!?」


 うん、楽しそうだ。

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