国家・地域

カサドール帝国

 【概要】

 広大な地域を領有する大国。世界最大と言われる兵数を有し、強大な軍事力により侵略戦争を繰り返して領土を拡大してきた国家。政治は皇帝による絶対王政であり、皇帝は完全な世襲によって決定される。

 土地は北を凍土、南をオン・ダ・ノーラ神国、東をユライア王国やベル地中海、西を未開地域と接する。ユライア王国及びオン・ダ・ノーラ神国とは長年の戦争状態にあり、国交はベル地中海を経由するリンデン交易国との間に限られる。

 領土の多くが荒野であり、水や木材資源に乏しい一方、鉱物資源には恵まれており高い冶金技術を誇る。そのため、軍には統一した金属鎧やグラディウスを装備することが可能であり、騎士は全身を板金鎧で覆うことが一般的。過去にはテイムドメイルも所有していたが、故障によって失われたとされ、長くテイマーの出現は確認されていない。また、建築にも木材が使われることが少なく、石材やアルキエルモ・オルクレンを使用することが一般的。一方、土地の多くが痩せていてかつ水資源が少ないことから、食料生産が少なく民衆には飢餓が蔓延しており、栄養状態の悪さから兵士個人の能力では他国に劣る。

 信仰については皇帝の権威をゆらがせない限り寛容であり、ユライア王国やリンデン交易国と共通の民間信仰を中心としている。一方、オン・ダ・ノーラ神国を発祥とするカラーフラ教は邪教とされ、完全に禁止されている。

 キメラリアに対する扱いは一般的なレベルで、能力の見込める者に対しては従軍や就労を認める一方、町に滞在する限り人間より高い税が課せられ、支払えないと奴隷として捕縛される。これは放浪者などの人間も同じだが、人間は奴隷とされても比較的楽な農奴などに回され、キメラリアは過酷な鉱山労働や戦奴として使い潰されることがほとんど。

 バックサイドサークルについては違法としつつも、コレクタユニオンとの関係や流浪民族からもたらされる交易品などを目当てに黙認されている。


 【作中における変化】

 イーサセラ・テクニカとの連携によって、ミクスチャを兵器化することで強大な戦力を得ることに成功。膠着していたオン・ダ・ノーラ神国との国境線を一挙に突破し、聖都ソランまでを僅かな期間で蹂躙し占領。オン・ダ・ノーラ神国を崩壊させ、砂漠にまで版図を広げている。同時にユライア王国へもグラスヒル及びポロムルの2面から侵攻しユライアシティへと迫ったが、地域のキメラリアやコレクタに加え、スノウライト・テクニカも連合した防衛隊によって作戦は遅滞され、援護に駆け付けた玉匣一行からの反撃によってミクスチャを壊滅させられて失敗。その後、オン・ダ・ノーラ神国を攻撃した部隊も増派したが、これも奇襲砲撃で全滅している。

 以後、戦局は一気に劣勢へと傾いたことで、ユライア王国、コレクタユニオン・リロイストン派、スノウライト・テクニカ、玉匣の4組織の連合によって逆侵攻を受けることになり、アルキエルモに軍を集結させて決戦を仕掛けたが、ミクスチャが暴走したことで敗北し、皇帝ウォデアス・カサドールも討ち死にした。更にクロウドン災禍の発生によって帝都クロウドンが壊滅し、同時に皇族や中心的な貴族が全滅。カサドール帝国の旗印は完全に失われた。

 中央から東部の地域はユライア王国領へと編入され、レンドを中心とする西部地域はリロイストン首長国として分離独立し、ノーリーフ北部から北の地域はネッサ自由国として衛星国化が行われている。だが、その他のカサドール帝国占領地には統治の手が届いておらず、土地に根付いていた各氏族やカサドール帝国貴族による管理が続いている他、砂漠地域ではオン・ダ・ノーラ神国領に留まっていたカサドール帝国軍占領部隊が軍閥化し、ミクスチャを用いて一帯を荒らしまわる事態へと発展。治安が急激に悪化して混乱状態へと突入している。



 【領内地域・都市等】


 ・ロックピラー

 カサドール帝国領南東部に位置する地域。ビュートやメサのような急斜面の隆起地形が乱立し、全域を台地と渓谷が占めている。年間を通して乾燥した気候のため、ほとんどの土地は痩せた荒地であり、希少な雨水湧泉の周囲を除きほとんどの場所は耕作に適さない。そのため地域の広さに対して都市などは存在せず、僅かな農村や小さな集落が存在するのみとなっている。人口の少なさからカサドール帝国法による監視の目は行き届ききっておらず、バックサイドサークルなどグレーゾーン的な存在も、半ば黙認状態にある。

 東にユライア王国との国境緩衝地帯であるグラデーションゾーンと接するため、カサドール帝国にとっては軍事的に重要な地域であり、フォート・サザーランドを拠点とするハレディ将軍麾下第3軍団を中心とした軍部隊を展開していた。地域内にはいくつか遺跡が存在し、生命保管システム管理施設もここに置かれていた。



 ・街道外れの酒場

 ロックピラーの街道外れに存在する酒場。集落間の中継地点的な役割を担うもので、行商人や放浪者、コレクタなどが多く利用している。恭一たちが最初に立ち寄った場所。



 ・生命保管システム基地

 ロックピラーに存在する旧企業連合所有の建造物。エーテル汚染が沈静化した未来において、再び人類文明を再興することを目的に重要とされた人物を、エーテルとアストラル体に分解して保管するための施設だった。最新鋭の堅固な建造物であったことにより、地上構造物すら文明崩壊に伴う破壊を免れており、現代技術ではシェルターゲートを破壊も解放もできなかったため、多少損傷していたものの健全な状態を維持していた。

 技術の悪用を防ぐ目的のセキュリティが施されており、施設の全員に再生シークエンスが行われた後、一定期間以内にパスコードを打ち込まないと施設機能が完全停止する仕様となっていたが、恭一とダマルは装置に入れられた記憶すらなく、他に誰も生存者が居なかったため、2人が離脱した直後に一切の機能を停止し、単なる廃墟となった。



 ・ロボゥ村

 ロックピラー最大の集落。代々ロックピラーに住む人々の農村と、帝国領となってから合流してきた開拓村が合流した場所であり、人口も比較的多い。土地が痩せている上に治水技術も未発達のため、農業は雨水に頼った乾燥農業であり、収量は農耕面積に対して小さい。また、野生動物の狩猟による食糧生産も行われているが、こちらも大きな成果はあげられておらず、軍からの食糧徴発が重なっていることもあって、住民の栄養状態は劣悪である。



 ・バックサイドサークル(ロックピラー)

 ロックピラー東部の平地を巡回する移動民族の集合体。同様の名前で呼ばれる集団は各地に存在するが、それぞれが別物で特に関わりはない。帝国領内ではあるが、国家法を無視して自治を行っている違法集団であり、闇市的な要素も併せ持つ。ただ、何らかの理由で町村から追われた人間の拠り所でもあることから、野盗となったりする可能性を抑えられると考えられており、帝国軍の常駐部隊こそ居るものの存在自体は半ば黙認されている。また、溢れ者が多く流れ着くことから、一般的な町村に比べてキメラリアには寛容。主な産業は交易と牧畜であり、人の流れが活発であるため酒場宿や娼館が複数存在するなど、観光業も発達している。また、コレクタユニオン支部の存在も大きな収入源となっており、バックサイドサークル内における発言力は極めて強い。



 ・フォート・サザーランド

 ロックピラー最大のカサドール帝国軍拠点。

 対ユライア王国を見据えた配置の要塞であり、石造りの強固な防壁の他、投石器等の防御兵器も複数備える。エリネラ・タラカ・ハレディ将軍麾下第三軍団が駐屯しており、基地の司令官は軍団長であるロンゲンが務めていた。



 ・フラットアンドアーチ

 カサドール帝国領南東部、ロックピラーの南に位置する平地。地域としては狭いが、アーチ状の金属製モニュメントが立ち並び、あちこちに小さく深い水源が点在、中心部には大きな湖が存在しているなど、金属資源と水資源が豊富。一方、地質は栄養に乏しく硬いため、順応した原生植物が僅かに生育するものの、農耕には適さない。ただ、周辺地域の降雨が流れ込む湖等は水温が安定していることから、水草や水生生物が多く生育している。また、一部には温泉も存在する。

 過去には膨大な金属資源を求める人々が入植し、漁業と鉱業を主体とした集落がいくつも築かれていたが、隣接地域であるレッサーグラデーションゾーンより流入したブラッドバイトが大繁殖したことで、全ての集落が放棄され無人の地域となった。

 800年前の状態については、ショコウノミヤコの項目を参照。



 ・アッシュバレイ

 帝国領の中央部と東部地域を隔てる峻厳な火山地帯。活発な火山活動による降灰と乾燥した地質、更には稀に毒性を持った雨が降ることから、一般的な農耕には全く適さず、水資源に関しても汚染されていない地下水以外の利用が難しい。そのため、食糧生産は野生動物の狩猟と地域環境に適合した原生植物の採取に限られる。一方、イズケールをはじめとした石材資源が非常に豊富であることから、環境の厳しさに対して人口は比較的多い。



 ・アルキエルモ

 アッシュバレイの盆地に存在する中心都市にして、地形を横断する大防壁、灰の盾を備える大要塞。地域から産出するイズケールと火山灰を混合して作られる建材、アルキエルモ・オルクレンの生産を主要産業として発展している。また、帝都クロウドンを守る要害でもあることから、駐屯する兵士の数も多く、それを含めた人口規模は帝国領内で第二位を誇るほど。一方、農作に適さない地域であることから食料自給率は1割から2割と極端に低く、ほとんどをノーリーフ地域からの隊商輸送に頼っている。そのため貧富の差によって民衆の栄養状態が大きく異なり、裕福な商人や貴族、軍人などが豪勢な暮らしを営む一方、奴隷階級のキメラリアは他の地域と比べてもなお過酷な生活を強いられている。



 ・バシリカ洞

 アルキエルモの盆地からやや東に位置する神殿。山腹にある自然の洞窟に、山岳と忍耐を司る男神バシリカを祀っている。石切り場で働くアルキエルモの労働者を中心に信仰されており、怪我や老衰で働けなくなると神殿の召使となる者が多いとされる。



 ・ノーリーフ

 帝国領中央部に位置する広い盆地で、東と南北から伸びる街道の結節点。乾燥した地域ではあるものの、周囲の山から流れ込む細い川が存在し、雨も僅かだが降るため農耕は可能。特にササモコの生産が非常に盛んで、カサドール帝国にとっては最重要の穀倉であり、地域名の由来も、乾燥した土壌で育つ場合のササモコが葉をつけないことから来ているとされる。ただ、近年は降雨量減少に伴う川の渇水と干ばつが進んでおり、穀倉地帯としての価値も低下傾向にあるとされる。



 ・帝都クロウドン

 ノーリーフに存在するカサドール帝国の首都。別名迷宮都市。西北の岩山を背に、皇帝居城であるクロウドン城が聳え、そこからやや狭い扇状に城下町となる市街地が南東へ向けて広がっている。市門は南と東の2箇所に存在し、南門から伸びる目抜き通りが城まで続く。

 この目抜き通りの周辺は商店と比較的裕福な庶民の家屋が軒を連ね、整った景観を見せているものの、1本でも裏通りへ入ると雑多で複雑な街並みが広がっている。これは人口の増大に合わせて都市計画が整わないまま、無秩序に拡張を続けた結果であり、非常に入り組んだ構造で地元民すら迷うことから、迷宮都市の異名がついた。また、中央から離れると貧困層の暮らす地域となり、急激に治安が悪化する傾向が強い。逆にクロウドン城手前の城壁付近は、明確な区別こそないものの、特権階級が集中して居住する区画となっており、騎士闘技場や劇場、練兵場などの公共施設もこの付近に置かれている。

 食糧事情は帝国領内の諸都市に比べ豊かだが、近年の干ばつによる不作から、貧困層の生活環境は厳しい。また、コレクタユニオン支部は設置されていないため、兵士として活動する者を除いたキメラリアは、市街地の片隅にちいさなコミュニティを作ってひっそりと暮らす程度で、人口はかなり少ない。


 ・イーサセラ・テクニカ

 クロウドン直下に存在する遺跡を利用したテクニカ。長はルイス・ウィドマーク・ロヒャー。神代の生物学、人類進化学を中心に研究を行っており、カサドール帝国にミクスチャやイソ・マンを提供する一方、見返りとして様々な物資や研究用のキメラリア等を受け取っていた。

 元々は液状にした安定化エーテル燃料の大規模貯蔵施設であり、遠方の発電所までパイプラインで繋がっていたとされる。ルイスはこの現代では生成できないエーテル資源を様々な研究に用い、ミクスチャやエクシアンを生み出していた。また、現代人に機甲歩兵訓練を施す事で、複数のマキナを戦力化するなど、組織単体としての軍事力も強い。モーガルやアランなどのメンバーの家でもあった。



 ・デニス・パピネ城(城跡)

 ノーリーフの最北端に存在した古城。元々はカサドール帝国成立前に砦として作られており、増築が重ねられて城となった。建国帝エンシア・カサドールが、後の帝国領北部地域を支配していたカニバルからの大侵攻を食い止めた場所であり、デニス・パピネ城の戦いとして語られる。しかし、北部地域のカニバルが征伐されて帝国領となると、古く規模も小さいデニス・パピネ城は不要となり、暫く補給拠点として使われた後に取り壊された。現在では石垣の跡が僅かに残るだけの廃墟となっている。



 ・レンド

 帝国領西部への玄関口とされる地域。平地と丘陵が連続する地形で、地面が石やれきに覆われていることが特徴。また、人の背丈を優に超える漏斗状の多肉植物が多く生育しており、全体が弾けて散らばる果実が、古くから重要な食糧となっていた。また、樹木兎ポミプースが多数生息していることでも知られ、動く森の国とも呼ばれている。

 過去にはハーコート集落群の領地だったが、カサドール帝国の侵略によってハーコート集落群が消滅。帝国領に組み込まれた。その過程で集落群側の戦士が激しく抵抗したことを理由に、レンド出身者は長年に渡る厳しい重税の他、他地域への厳しい移動制限、土地保有や蓄財の禁止、婚姻や出産にも領主の許可を必要とするなど、かなりの抑圧を受けている。そのため、住民の帝国に対する反感が根強く、帝国軍の軍団が駐屯していながら地域の治安は極端に悪い。

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