勇者パーティ崩壊、なし得なかった再生劇

裏切り者の烙印を押された主人公が
魔王軍の幹部として活躍するサクセスストーリー、には違いないのですが
実は人間が悪でした、という単純な話でも
主人公が魔物と人間の架け橋になって、というような建設的なお話でもなく
人類を裏切った主人公の苦悩、残されたパーティの他メンバーたちを待つ命運など
ダークファンタジーの名に恥じない、救いの無い過酷なドラマが繰り広げられます。
魔王軍の面々も主人公の新たな仲間として個性的な顔ぶれぞろいですが
追放ざまぁ的な役どころでしか無いかのように思われた勇者パーティの
他メンバー一人ひとりにも、主人公に対する後悔や
敵対せざるをえない懊悩といったドラマが用意されており
ともすればバラバラになった勇者パーティが再生するドラマか、と
希望を匂わせる部分も若干無いわけではないだけに、
それでも終盤、やはり破局へとひた走っていく悲劇性が際立つ物語でした。
陰惨な描写も多く、救いのない展開ではありますが
それだけに読み応えのある物語だったと思います。

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