60%…

〈ユメノ視点〉









占「・・・・・・」





「・・・見えました?」






アタシの問いかけに顔を上げるおばさんに

ゴクリと唾を飲みゆっくりと開き出す

口元に注目していると…





ブーッ…ブーッ…






テーブルの端に置いているスマホが鳴りだし

画面には会社の番号が表示されていた





「ちょっ…すみません…」





そう言って、おばさんに頭を下げながら

体を後ろに向け「もしもし」と小声で電話にでると






トオル「休んでる所悪いが

   昨日頼んだ書類はどこにしまっている?」






「あっ…神宮寺先輩…お疲れ様です

  書類でしたらクラフト封筒に入れて

  先輩のデスクの1番右端に立てかけてありますが…」






トオル「えっ!?」






小走りに走る音が聞こえた直ぐ後に

「あった!悪ないな」と言って謝る先輩に

「いえ」と伝えてから電話を切り

「すみません」と振り返ると

おばさんがコッチに身を乗り出していて

「今の相手は…」と聞いてきた






「えっ…会社の先輩ですけど…」


 



占「会社の…」






おばさんは目を細めながらそう言うと

紙とペンを差し出してきて

「名前書いてみて」と言ってきた…






( ・・・そんな事よりも…占いを… )






と言いたい言葉をグッとこらえて

先輩の名前をサラサラと書いて

「はいッ」と紙をクルッと

おばさんの方に向けて差し出した






占「・・・神宮寺…透…」






「・・・・あの…」






名前を見つめ続けるおばさんに

しびれをきらせて声をかけると

「60%の相手よ」と言われ

「はっ?」と口が開いた…





占「この、神宮寺透は…

   アナタの運命60%の相手です」






「・・・ろく…じゅう?」



 



占「かなり高い数字ね…

  50%以上の相手とは中々巡り会わないのに」






「50%?」

  





訳がわからない事をペラペラと話し出した

占い師…おばさんに「ちょっと!」と言って

テーブルを叩いた…





「50%とか60%とか…なに!?」





占「だから運命糸の濃さですよ」





「濃さ??運命っていうのは…

  赤い色は一つだけじゃないの!?」






占「・・・前回お話しした事は覚えてますか?」






「・・・・確か…」






2週間前に麻梨子と来た時に

おばさんは人と人には必ず糸が結ばれていて

友人関係を表す黄色い糸や

家族を表す色、自分にとっての試練となる相手など…

何十種類もの糸があって…





占「深い友人関係なら黄色が濃くなり

  そうでない友人達だったら薄くなるし…

  運命の糸も同じなんですよ」






「・・・・50%以上には…

  中々会えないって言うのは…」






占「ほとんどの人が

  運命100%の会えるわけじゃないし

  大抵は30〜40%の方と出会い

  結婚されていく方達が多いですからね」






( 30〜40%って…愛なんてあるの… )






占「大恋愛をして結婚される方もいますけど

  中にはそろそろ結婚適齢期だしと

  余程のマイナス点がなければ

  結婚へと踏み切るカップルが多いですからね」






私の考えが分かったのか

そう言って手元にある

あの香りのキツイお茶を飲むおばさんに

「でも先輩はダメです」と伝えた






「・・・先輩には…彼女がいますから…」






おばさんは表情を変えずに

「そうですか」と言うと

高そうな茶器をカチャッと置き

「勿体ないですね」と呟いた





「中々出会わない60%の相手なので

 正直残念ですが…

 まだ若いですし、アナタの周りには今

 運命糸が多く飛び交っていますから

 また直ぐに違う糸と出会えるでしょうしね」






「・・・飛び交っている?」






占「えぇ…名前がないので

  何%の相手なのかは分かりませんが

  アナタが持つ運命糸が

  強く引っ張られていますから

  余程濃い相手が近くにいるのか

  複数人同時に引っ張られているかですね」






「・・・・・・」






例え…同時に引っ張られてても

30%…40%の相手と出会って

幸せなのかなと思い…

「嬉しい」という感情は湧いてこなかった…





「・・・神宮寺先輩かぁ…」






占「・・・最近結婚した

  俳優の高藤由之と女優の御蔵カナ…

  あの二人が運命糸60%でしたね」






「えっ……エッ!?」






バーゲンで60%OFFとかなら

テンション上がるけど

運命の相手のパーセンテージが60%は…

ハッキリ言って「へぇ…」って感じだし

イマイチ気分も盛り上がらなかったけれど…





大恋愛の末にゴールインと

ネットニュースでも散々騒がれていた

芸能人カップルの名前が出て

少し下がっていた肩が上がり

「ホントに??」とまた乗り出して聞くと

「えぇ」と頷きながら

「だから…中々巡り会えないんですよ?」と

片方の口を上げて「ふっ…」と笑っている






( じゃあ…60%って本当に… )






占「中々…巡り会えませんよ…笑」












   

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