〈ユメノ視点〉









「はぁ…高いなぁ…」





休憩時間にコンビニで買った

サンドイッチとアイスティーを手に

ネットの賃貸物件を見ているけど…





「1LDKってこんなにするの?」





桔平と住む前は

1Kのワンルームに住んでいたけれど

今住んでいる2LDKは新築で…

部屋の作りも綺麗で脱衣室はあるし

シャンプードレッサーもついていて…





( 廊下で着替えるのヤだしなぁ… )





1Kだと値段は可愛いけど

脱衣室はなくて…

浴室の扉を開けると直ぐに廊下になっている…




一年ちょっと前は

廊下に小さな棚を置き

着替えを乗せていて

寒い冬は浴室で着替え

暑い夏は廊下で着替えていた





「もう24歳だし…脱衣室は欲しいよね」






手取り14万ちょっとの私のお給料じゃ

1LDKの部屋に住むと食費も美容費も

だいぶ切り詰めなくちゃいけなくなるから

「はぁ…」とタメ息を吐きながら

「何で浮気なんてしてんのよ…」と

朝見た憎たらしい顔にそう問いかけた…





会社の制服は部屋にあったし

帰りたくなくても桔平のいるあの部屋に

朝方戻ってみると

ベッドでスヤスヤと眠る寝顔があり

数秒間見下ろして見たけれど

24時間前の様な感情はなく

枕元で充電されている

桔平のスマホをそっと手に取り

画面をタップしてみると

ロックの解除画面が出てきた





( いつからかロックしだしたよね… )





少し前までは特に気にしていなかったけれど

やましいからこそ隠したいのかなと思い

画面に6桁の数字を打ち込むと

ロックは解除され通常の待受画面が表示された





「・・・隠すなら背中は見せちゃダメよ…」





大きめの寝息をたてている桔平にそう小さく囁き

隠したがっているLINEを開いてみると

1番上に「おやすみ」と

最後のやりとりをしている相手がいて

花畑のアイコンだったから

女の子だと直ぐに分かった




その子とのページを開くのに

普通なら躊躇ったり

深呼吸なんかをするんだろうけど…

あの占いの館を出てから

桔平への想いは少しずつ冷めてきていて

不思議と傷ついている自分はいなかった





( 2時過ぎまでやりとりをしてたわけ… )






おやすみと送っている時間を見て

「ふん…」と鼻を鳴らしタップしてみると

花畑の女はやっぱり浮気相手で

占い師の言う通りLINEが始まっていたのは

3ヶ月前からだった…





「・・・・可愛くない…」






桔平と仲良く写っている

ほんのり丸みのある女の子にそう呟いてから

スマホを元の位置に戻しシャワーを浴びた






「・・・慰謝料に家電品貰っていこうかな」






そう言ってアイスティーを飲みながら

空を見上げても

あるのは空と雲だけで…






「・・・前世でも助けたなら

   今世まで助けたっていいじゃない…」







自力は次の来世に期待してよねと…

すっかり占い師の話を信じ切っている自分に

「バカだな」と笑いながらも

スマホを手に取って発信ボタンを押した






「あっ…昨日はみて貰った

  八重桜ですけれども…えぇ…はい…

  早くていつ予約取れますか?」






前世なんかみて

私の幸せをぶち壊してくれたんだから

運命の相手までの道も見てちょうだいよね…




















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