縁の狸 ~えにしのたぬき~

八木☆健太郎

縁の狸

 ここは、縁結びのご利益があると地元では有名な神社。


「えぇ・・・っと、まずは自分の名前と生年月日と住所を伝えるんだったな・・・。」

 人気ひとけのなさそうな時間帯をねらって会社帰りに来たおかげで、境内には今のところ僕一人しかいない。

「・・・の前に、お賽銭お賽銭・・・と。」

 お賽銭を入れ鈴を鳴らすと、その大きさから受ける印象よりも大きな音がガラララ~ンと静かな境内に響いた。

「ぅわっ、えぇっと・・・あ、名前は菅井涼太です、7月10日生まれの27歳。えぇと住所は・・・」

 ここでお祈りしている姿を誰かに見られでもしたら・・・と思うと、つい早口になってしまう。

「えぇ~っと、僕もいい年ですので、そろそろ良縁に与りたいなぁと思いまして・・・」

 すると後ろの方から、

「おいっ、兄ちゃん。」

 と声がした。

「・・・えっ。」

 誰もいないのを確認したはずなのに・・・と辺りを見回しても、人影は見えない。

「気のせい・・・だ、よね・・・?」

 もう一度見渡しても、やはり誰もいない。

「おいっ、こっち。下だよ下っ。」

「へ?わっ、わぁっ!」

 足下に何かいるのに気づいた。

「え?え・・・っと、た・・・狸?」

「あぁ、いかにも狸だ。」

「しゃ・・・喋って、る?」

「なんだ?狸が喋ったらおかしいか?」

「そ、それは・・・はい。」

「ふんっ、まぁお前ぇさんからしたら、そうかもしれねぇなぁ。」

 そう言いながらその狸は、ヒョイと賽銭箱の上に乗った。

「あぁ、ダメだよ、そんなとこに上ったら・・・。」

「あ?いやぁ、構わんさ。」

「いやぁ良くはないよ。お賽銭箱だよ?そんな事したらバチ当たるよ。」

「ふふ、お前ぇさんがた人間てぇのは・・・ふふふ、まぁいい。」

「ぃや、良くないって・・・。」

「いやぁ、構わんのだよ。こう見えても、この狸はここの『神様』ってヤツだからな。」

「え・・・っ?狸が?」

「わ、悪いかっ?」

「え、だって、狸が・・・たぬ、狸・・・ぇえっ?」

「えぇいっ、タヌキタヌキうるさい奴だっ。いいかぃ、お前ぇさんが見てるこの狸は言ってみりゃぁただの『入れ物』だ。体がねぇと不便だから借りてるだけだっ。」

「あ・・・あぁ、あれか『憑依してる』ってヤツか・・・。」

「ん?まぁ、そんなとこだ。分かったか?」

「えぇ・・・あぁでも・・・。」

「なんだぁ?まだ何かあるのか?」

「ぃやぁ、でも・・・それならキツネとかの方が神社らしくて・・・。」

「キ、キツネのことは言うなっ。仕方ねぇだろ、暇そうにしてんのが狸しかいなかったんだからぁ。」

「そ、そう・・・ですか・・・。」

 狸が喋っていることを受けいれてしまっている自分が、ちょっと怖い。

「それはそうと、兄ちゃん。」

「はい?」

「最近、なんで『ラムール』に行かなくなったんだ?」

「え・・・えっ?なんで、それを・・・?」

「いやぁ、コッチが訊いてんだ。なんで行かなくなったんかって。」

「あぁ、いやぁ・・・それは・・・。」

 『ラムール』は自宅と駅との間にある洋菓子店。以前は週に1・2度通っていたのだが、最近開拓した駅への最短ルートからは外れてしまい、それ以来足が遠のいていた。まぁ、コンビニスイーツの良さに気付いたというのもあるけど・・・。

「ふ~ん、そういうことかぃ。」

「えぇ、そうなんです。」

「ならぁ、久しぶりに今から行ってみたらどうだい?この時間ならまだやってるだろ?」

「え、えぇ・・・。」

 急な提案にポカンとしていると、

「ほれっ、さっさと行かんか。」

 と狸・・・神様がせかした。

「あ、はいっ。」

 と一礼して行きかけると、

「あぁっ、兄ちゃんちょっと待った。」

 引き留めて続けた。

「いいかい。ここに喋る狸がいることは、だれにも話すんじゃないよ。そんなことが世間に知れて大騒ぎにでもなったら、こっちゃぁ商売になんねぇからな。」

「は、はい。誰にも、言いません。」

「本当に、誰にも話すんじゃないぞ。」

「も、もう・・・誰にも言いませんって。」

「本当だな?その時は化けて出てやるからなぁ。」

「分かりましたっ、言いません、誰にもっ。」

「うん、それなら良い。ほらっ、もう行け。」

「は、はい。失礼します。」

 改めて頭を下げて、神社をあとにした。


 駅からのびる商店街の端の方に洋菓子店『ラムール』はある。閉店間際とあってショーケースには数えるほどのケーキしか残っていない。

「なんか、久しぶりだとドキドキするな・・・。」

 ドアを開けるとカラ~ンとベルが鳴って、片付けをしているのか奥の方から、

「いらっしゃいませ~」

 と女性の声がした。

「あの・・・まだいいですか?」

 声をかけると、奥から出てきた女性が僕の姿を認め、

「あっ、いらっしゃいませっ。」

 と勢いよくお辞儀した。と、同時にショーケースに頭をぶつけドワ~ァンと店内に鈍い音が響いた。

「あぁっ、大丈夫ですかっ?」

 すると彼女、

「へへへ、ぶつけちゃいましたぁ。」

 と、おでこをさすりながら笑って見せた。

「ふふふ・・・。」

 その屈託のない笑顔に、思らずコチラも笑ってしまった。

「へへ・・・あぁ、で。何になさいます?と言っても、もうほとんど売れちゃって無いですけど・・・。」

「えぇ。・・・と、じゃぁショートケーキを。」

「はいっ。おひとつで?」

「あ、はい・・・ひとつで。」

「はい、かしこまりましたぁ。」

 見事な手さばきでケーキを箱に入れると、

「コレ、オマケしますねぇ。」

 とレジ横のクッキーをひとつ入れてくれた。

「え、いいんですか?」

「えぇ。ねえ店長。」

「あぁ、いいよぉ。」

 奥から男性の声で返事があった。

「すいません、ありがとうございます。」

「いえ、こちらこそ。いつもありがとうございます。」

「え・・・ぁ、はい。」

 会計を済ませケーキを受け取ると、彼女が改めて深々と頭を下げた。

「ありがとうございました。」

「あ・・・はい。また、来ます。」

「はいっ、お待ちしておりますっ。」

 屈託のない笑顔が、再び弾けた。


 店をあとにし、しばらく行ったところで、

「あ、いたっ。お客さ~ん。」

 と彼女が追いかけてきた。

「傘ぁ、お忘れですよ~。」

 午前のうちに雨が上がったおかげで、不要になっていた傘を忘れてきたようだ。

「あらら・・・わざわざすいません。」

 走ったせいで少し息のあがった彼女が、

「あの・・・」

 と何か言いかけて、グッと息をのんだ。

「あ、あの・・・また、来てください、ね。」

「あ、はい。また行きます。」

「ふふ、お待ちしておりますっ。」

 と勢いよくお辞儀をした。

「あぁ、ほら。そうやって勢いよくやると・・・ふふ、またぶつけますよ。」

「あ・・・え、えへへ。そうですね。」

 そう言いながらおでこをさする彼女の仕草が可愛くて、

「では、また。」

 気付くと彼女に手を振っていた。

「はいっ、また。」

 それを彼女は両手を振って返してくれた。


 あのお店に、あんな可愛い子がいたんだ・・・。


 次の日。駅へと向かう最短ルートを離れ、久しぶりに商店街を通る。すると『ラムール』の店先を掃除する彼女の姿が見えた。

「こんな朝早くから・・・。」

 今まで意識はしていなかったけど、もしかしたら毎朝彼女はこうして店先に出て掃除をしていたのかもしれない。

「あ、おはようございますっ。」

 僕の姿に気付いた彼女が、元気よく挨拶してくれた。

「お、おはようございます。」

「昨日はありがとうございました。」

「あぁいえ、こちらこそありがとうございました・・・あの、傘を届けてもらって。」

「あぁ、いえいえ・・・っと。」

 朝の商店街は、結構人通りが多い。

「あ、じゃ、じゃぁ行ってきます。」

「あぁはい、行ってらっしゃいませ。」

 彼女は、笑顔で手を振ってくれた。


 僕はなぜ、あのタイミングで「行ってきます」なんて言ってしまったのか。洋菓子店の店員と客・・・というだけの関係なのに、馴れ馴れしい奴だなって思われたんじゃないかなぁ。いやそもそも、人気のある店だから客の顔なんていちいち覚えてないか。いや、まて・・・昨日確か彼女「いつもありがとうございます」って言ってたなぁ・・・ってことは僕のことを覚えていてくれて・・・いや、きっとセールストークだな・・・。

 なんて事をつい考えてしまって、この日は仕事が手に付かなかった。

「お~い、どうしたぁ?」

「え?あ、はい・・・。」

「手が止まってるぞぉ。」

「あ・・・す、すいません。」

「大丈夫か?ボ~っとしてるとケガするぞ。」

 デスクワークなので実際に「怪我」をすることは無いが、ここでは大きなミスを「ケガ」と呼んでいた。

「あ・・・はい。」

 とは言ったものの、やはり身が入らない。

「ま~、お前最近頑張り過ぎだからなぁ。今日は早く帰って少しはゆっくりしたらどうだ?」

「いいん、ですか?」

「あぁ、そろそろ体も頭も休めた方が良い。」

「はい・・・そういうことでしたら。そう、します・・・。」

 近年の『働き方改革』か何かのおかげで、この会社でも就業時間の融通が利くようになった。

「あぁ、また明日なっ。」

「はい、お先に失礼します。」


 足は自然と『ラムール』へと向いた。


「あ、いらっしゃいませっ。」

 笑顔の彼女が小さくお辞儀して迎えてくれた。午後の早い時間とあって店内には他に客はいない。

「あの、今日は・・・早いん、ですね。」

「え?あ、あぁ・・・えぇ、予定より早く終わったので『帰って良い』ということになりまして・・・。」

 まさか「調子が出なくて早引きした」なんて言えない。

「あぁ、そうだったんですねっ。」

「え、えぇ・・・。」

「あ、そうそう、今日からの時期限定でマスカットのロールケーキがあるんですが・・・いかがですか?」

「へ、あぁ・・・いいですね。では、今日はそれを。」

「おひとつで?」

「あ、はい。ひとつください。」

「本当におひとつで?」

「え・・・ぁあ?」

「ぃやっ、すいませんっ。あの、いつもおひとりで来られてひとつだけ買われていくので・・・あの『ご家族の方はどう思われているのかなぁ』とか思ってしまって・・・すいません余計なことを・・・。」

「あぁ、いいんですよ。ふふ、僕は『ひとりもん』ですから。」

「そ、そうでしたか。これは・・・失礼しました。」

「いえいえ、構いませんよ。」

「はぁ・・・あぁっ、すぐご用意しますねっ。」

 ケーキを扱う時の彼女の表情はとても真剣だ。それより、彼女は僕のことを覚えてくれていたんだ・・・。

「はぁい、お待たせしましたぁ。」

「あ、ありがとうございます。」

「へ?いや、こちらこそ。いつもありがとうございますっ。」

 そう言われて、自分が変な事を言ったことに気が付いた。

「え・・・っあ、そ、そうですよね・・・はは。」

「ふふふ、はいっ。」

 やはり今日は、少し調子が悪いらしい。

「マリちゃ~ん、今のうちに休憩しておいで~。」

 奥から店主の声がした。

「あ、は~ぁい、そうさせてもらいま~す。」

「じゃぁ、僕はこれで・・・。」

 帰りかけた僕を、

「あ、あの・・・っ。」

 彼女が引き留めた。

「もし、よかったら・・・これから、ちょっとお散歩でもしませんか?」

 彼女のこの「お散歩でも」という言い方が妙に可愛らしく、

「え・・・えぇ。」

 と、つい同意してしまった。

「ふふっ。じゃぁ、すぐ準備しますねっ。」


「あの・・・マリ、さん?」

「はい?あっ、そうだ、ちゃんと自己紹介しないとですねっ。え~っと、私『たかいまりか』といいます。え~、高い低いの『高』に井戸の『井』に、え~っと、革へんに米を包んだ『鞠』に・・・にんべんに土ふたつの『佳』で『高井鞠佳』です。はいっ。」

 彼女の促すような仕草に、

「あぁえ~っと、僕はこういうものです。」

 と、とっさに名刺を取り出すあたり、すっかり自分が「社会人」になってしまったなぁと思う。

「え~と、『菅井涼太』さん・・・。」

「はい。無駄に爽やかな名前です。」

「いえいえ、無駄に・・・ということは、無いですよっ。」

「そう・・・ですか?」

「はいっ。あ、あの・・・『涼太さん』って呼んだら、馴れ馴れしいです、よね?」

「え?いえ、構いませんよ。」

「ふふっ。じゃぁ、涼太さんは・・・?」

「え・・・っと、じゃぁ、高井さん。」

「高井さん?」

 不満げな表情。

「ん。じゃぁ・・・鞠佳さん。」

「ふふっ。あの、『鞠佳さん』って言いにくくありません?」

「あ・・・ぁ、確かに・・・。あ、じゃぁ、マリさん。」

「ふふ、はいっ。」

 どこを歩くでもなく、二人肩を並べて歩いた。彼女はここが地元で、『ラムール』は子供の頃から通っていたお店なのだそうだ。

「えっ?じゃぁ、意外とご近所さんだったんですねぇ。」

 彼女の家と僕の住むアパートが割と近所にあることが分かった。

「えぇ・・・どこかで、すれ違っていたかもしれませんね。」

「ぇ、ん~?お店で、よく会っていましたよ。」

「へ?あ・・・あぁ、そうです、よね。」

「ふふっ、はい。」

「・・・すいません。」

「あぁ、謝らないでください。」

「はぁ・・・ぃや、でも・・・。最近まで、マリさんのこと・・・見えてなかった、ので。」

「あらぁ、やっぱり?」

「え?」

「ふふっ。いつもケーキのことばっかり見てましたもんね。」

「え・・・っと、そうでしたか?」

「えぇ。ウチはクッキーも美味しいんですよっ。」

「え、あ・・・はい。美味しくいただきました。」

「ふふっ、よかったぁ。あのクッキー、私が焼いてるんですっ。」

「え?そうなんですか?」

「へへへ、はいっ。」

 気付けば、あの神社の方へ歩いていた。

「あっ、知ってます?ここの神社。縁結びで有名なんですよっ。」

「え、えぇ。そうらしい、ですね。」

 間違っても「最近来た」とは言えない。

「あぁ、知ってましたか・・・あれ?よく来るん、ですか?」

「ぃ、いやぁ、前はよく通りますし・・・あの、初詣はここに来ているので・・・。」

「あ、あぁ、そ、そうです、よね・・・。」

 静かな境内に、二人きり。

「私、小さい頃・・・あっ、この話しても誰も信じてくれないんですど・・・。」

「ん?なんです?」

「私、小さい頃、ここで狸さんとお話したことがあるんです。」

「えっ?狸・・・って、あの狸?動物の?」

「え、えぇ。そうなんです。」

「ん~?」

「その顔は・・・疑ってますね?」

「そ、そりゃ・・・にわかには、信じがたい話ですから。」

「ん~っ。でも、本当なんですよっ。『お嬢ちゃん、ひとりかぃ?』ってダンディな優しい声で・・・。」

 その声には、心当たりがある。

「あの、どんな話、したんです?」

「え~っと、細かくは思い出せないんですけど・・・楽しくて心地いい時間だったのは、なんとなく覚えてるんです。」

「それ・・・本当に狸でした?」

「ほ、本当ですよぉっ。も~、やっぱり信じてもらえないんだぁ。」

「あっ、あぁほらぁ。頭に葉っぱ乗ってなかったかなぁ・・・とか、ほらっ、ドロンって変化するヤツ・・・。」

「えっ?あぁ・・・っ、そうだったかも・・・こ、今度会ったら確認してみますっ。」

「ふふっ。えぇ、そうしましょう。」

「へ?」

「あ、あぁ・・・僕も、出会うかもしれませんから。」

「あ・・・ふふふっ、そうですねっ。」

 彼女のケータイがブブブ・・・と鳴った。どうやらタイマーをセットしておいたようだ。

「えっ?もうこんな時間?やだぁ、お店戻んなきゃ。」

「あ、じゃぁ送りますよ。」

「いえ、大丈夫ですっ。ふふ、もう子供じゃないから。」

「あ・・・ふふっ、そうですねっ。」

「はいっ。あ・・・お店、また来てくださいね。」

「あ、はいっ。もちろん。」

「あの、今度は・・・」

 言おうか言うまいか迷う言葉を、

「あの・・・今度は、私に会いに、来てください、ね。」

 彼女は振り絞って伝えてくれた。

「え・・・ぁ・・・ぅん、はいっ。」

「は・・・ふふっ、はいっ、お待ちしておりますっ。」

 彼女は勢いよくお辞儀をすると、

「では、行ってきますっ。」

 と、手を振って去っていった。

「はい・・・行ってらっしゃい。」

 僕の言葉が届いたかは分からないが、境内を出たところでこちらを振り返り、軽くお辞儀をするともう一度手を振ってくれた。


「あの子、いい子だろ?」

 振り向くと、あの狸がいた。

「わぁっ。み、見てたん、ですか?」

「あぁ、ずっと見ててやったぞ。」

「ぅわぁ~、神様のくせに悪趣味~。」

「ぬぁっ、なんだその言い分は?ぬぅっ、人がせっかく縁をつないでやったというのに・・・あぁっ、こらっ!頭に葉っぱを乗せるなっ。」

「ふふ、だってぇ・・・。」

「だってじゃないっ。あんな『化け狸』と一緒にすなっ。これだからお前ぇさんがた人間ってのは・・・。」

「ふふふっ。すいません、つい・・・。」

「もぉっ、なにが『つい』だ・・・ふん、まぁいいっ。いいかぃ、お前ぇさんに手を貸せるのはここまでだからな。こっから先は、自分でなんとかするんだぞ。」

「あ・・・はい。この縁は、絶対放しません。」

「あぁ、大事にすんだぞ。」

 そう言って立ち去ろうとする背中を、

「あぁ、あの・・・。」

 その丸っこい背中を引き留めた。

「ん、なんだ?」

「あの、良かったんですか?彼女、話してましたよ?あなたとのこと。」

「んぁ?あぁ、構わんよ。子供の頃の話なんてのは『にわかには信じがたい』だろ?」

「え・・・えぇ。」

「あぁ。じゃぁな。」

「あぁっ、あの・・・っ。」

「なんだ?まだ何かあるのか?」

「いえ、あの・・・。」

「ん?」

「あの・・・あ、ありがとうございました。」

「あ?ふん・・・あぁ。」

 立ち去る姿が一瞬白髪の老人に見えて、思わず深々と頭を下げた。


 ここは、縁結びのご利益があると地元では有名な神社。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

縁の狸 ~えにしのたぬき~ 八木☆健太郎 @Ken-Yagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ