AfterStory:#3「Into the」
「はっ……!」
目が覚める。
「ここは……もしかしなくてもうちの庭だ……!」
少し周りを見渡すと、二つの事に気がついた。
一つ目はここが僕の育ったクロノス侯爵家の庭であること。
二つ目は、己の身体が半透明の――まるで幽霊のような状態であるということ。
「なるほど……つまりは見るだけ、物事には干渉出来ないぞ――ってことだな? 本当に意識だけの幽霊みたいな感じになってるじゃないか……。ま、今はこういう風にしか出来ないらしいし我慢するしかないな」
自らの言った言葉を思い出して早々に抵抗を諦め、おもむろに立ち上がり背伸びをする。
そして大きな欠伸を一つ。
「身体が軽いな……筋肉も何も感じない。なぜか背伸びをして筋肉がほぐれた感覚はあったんだけどな……。まぁ気にしないでおこう。さて、行きますか!」
そう言って大空へ飛び立つ。
思いっきりジャンプしただけで悠々と屋敷を飛び越えるほどの高さまで飛び上がった。
本当にこの身体? は不思議だな……今度仕組みを聞いてみよう。
「さてと。どこへ行こうか……やっぱりまずは帝都かな。どこにいくにしても帝都は真ん中にあるからな。利便性も高い」
すぐに帝都――そしてそこにそびえ立つ帝城を見つける事ができた。
「帝都までひとっ飛びだ!」
帝都に向かってどんどん加速しながら飛行していく。
「うわぁ……! 風が気持ちいいな! もしかして幽霊みたいな身体のおかげかな? 空気抵抗も少ないし、普通なら感じるはずの暴風も心地良いくらいの風になってる!」
感動だ。その一言に尽きる。
すごく気持ちいい体験が出来たと思う。
「もうそろそろだな……! 幽霊だし、別に城門から律儀に入る必要はないよね!」
そんな事を言っているうちに帝都の上空に到着した。
「帝都ってこんな大きかったんだなぁ……」
屋敷からじゃ見渡せなかった部分も見える。
壮観だ。
「じゃ、帝都の中に入ろう!」
浮遊することをやめ、重力に身を任せる。
そして十秒も経たないうちに地面と衝突する。
しかし地面にも、その周りにも何も起こらない。
さすが幽体だ。
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