第14話:期待の新人

僕は冒険者ギルドの訓練場に来た。


「よし。まず魔力値測定だ。知ってるとは思うが、この透明な水晶、

”魔力玉”に魔力を込めてみてくれ」

「はい」

そう言って直径30センチほどの”魔力玉”に手をかざす。


そして少し逡巡したあと、スキル:無限の力を解除する。

(こわれませんよーに……)

なんて独り言を内心つぶやき、

とりあえずものすごく、魔力を込める。


すると水晶の中で光が下からゲージのようにものすごい勢いで上がっていく。


「な、なんてことだ……この一瞬で9/10十分の九が溜まっただと……!? ありえん……」


すると1秒も経たず水晶玉に光ってない場所などなくなっていた。

するとギルマスは焦って


「つ、次の魔力玉にも同じことをしてくれ……!」


と言うので込める魔力量を増やしてみた。

すると


「な……! 一瞬で限界!? も、もういいぞ! 止めてくれ!」


というので止めた。

だがしかし間に合わなかったようで――――

パリン、と小気味よい音が鳴り響いて魔力玉が粉々になった。


「わ、割れただと……! これは……魔力の試験は文句なしの合格だ。

むしろ合格以外はないな。歴代最高だろう……」


ギルマスが直々に、ということで集まっていた冒険者たちはみな目を見開いた。まず魔力玉結果(の残骸)を見て、次に原因を見る。

そして困惑する。多分皆

「こんな子供が……?」と考えているのだろう。

まあまだ10歳だししょうがないんだけどさ。

でもテンプレになって面白そう。


「つ、次は剣術だ。どれだけのものか見せてもらおう。そうだな……おい! そこにいるディエゴ! お前だ! この少年と模擬戦をしてくれ!」


ディエゴと呼ばれた若い――少しチャラい――男が来る。


「この少年と模擬戦? この少年魔力量あんだけあって剣術もできるんスか?」

「そうだ。ソラくんもそれでいいか?」

「ええ。構いませんよ。あ、武器は木刀ですか?」

「そうだ」

「了解です。じゃあさっさと始めましょう? ルールはスキル、魔法使用禁止でいいですよね?」

「ああ。いいっスよ」


ということで少し移動して、地面に描かれている線で仕切られた場所へ来た。


「それでは……始め!」

僕はその言葉とともに地を蹴る。

そしてディエゴさんの眼前まで飛び、首を手加減して一閃。

(本気でやったら木刀でも首を撥ねるのは簡単なんだよなぁ……)

そして次に、ディエゴさんの首の少し下を軽く蹴って身体を捻り、頭が下の状態で宙に浮きディエゴさんの方を向く。そして袈裟斬りけさぎりし、

腹に返す剣で一文字切り。そのまま胴を蹴ってスーパーヒーロー着地。

その間は2秒に満たない。


ディエゴは

「うがあっ!」

と叫び背中から倒れて、

「うっ……はぁ……はぁ……痛ってぇ……」

と動けない様子。

ギャラリーは騒然とし、

ギルマスは一歩後ずさっている。

なんで?


「い、今何が起きたんだ?」

と一人が言う。


「俺もわからん……」

「俺もだよ……」

「私もわからないわよ……」

「みんなわからないんじゃねぇか……」

と冒険者たち。


「な、なあソラくん。今は何をしたんだい?」

とギルマスに問われたので


「え、開始の合図で地を蹴って、ディエゴさんの首を一閃。そして首の少し下を軽く蹴って、頭が下の状態で宙に浮いて袈裟斬りして、お腹に返す剣で一文字切りして、そのまま胴を蹴って着地した。こんな感じですよ?」

その言葉に周りは言葉を失った。


「わ、訳がわからないが合格だ……それでいいか?ディエゴ」


皆一斉にディエゴの方に向く。

「あ、ああ。構わないっス。しかも彼、本気で手加減してるッスよ……ところどころで減速してるのが見えったスから……」

というので合格らしい。やったね!


なんか「こ、これで手加減……? 彼は一体何者なんだよ……」とか声が聞こえるのは気の所為だな。うん。


「剣術であの動きをみせられたら近接でも余裕だろうし魔力の扱いも慣れている。ごほん。よって! 彼を特例でランクCとする!!! 異論はあるか!!!」


ギルマスが大声で叫ぶ。

誰も何も言わない。

そりゃそうか。


「おめでとう。今日から君はCランク冒険者だ」

「おめでとう~!」

とギャラリーの冒険者たちも祝福してくれている。


「皆さんありがとうございます!!!」


こうしていきなり半人前と言われるCランクになったのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る