剣と知略の世界を鮮やかに描くファンタジー戦記の金字塔!

"薄い皮鎧越しに分かるほど、二人の護衛は鍛えられているし、表情も精悍である"
「あの馬に乗るのか?」「街の中では乗りたくないな。石畳の上を走らせると怪我をするかもしれん」
いずれも作中からの引用。前者はモブキャラの描写、後者は主要登場人物の会話である。

勘の鋭い読者諸兄姉ならすぐに気づいただろう。
作者の頭のなかでは、正確に世界の隅々までが構築されているのだ。

この非凡な才により、私たちは物語のなかでリアルな体験を得る。
指揮官の部屋に向かうときには扉の前に立つ大柄な衛兵の眼光に気圧され、城下街では欠けた石畳の角に蹴つまずく。

戦記ものが好きな読者の心をわしづかみにするファンタジー巨編である。

その他のおすすめレビュー

北島宏海さんの他のおすすめレビュー100