複雑に絡み合う人間模様が織りなす本格的な戦記

 敵と味方、或いは集団と個。色々と考えさせられる作品です。
 主人公が僻地へと配備されることから物語が始まります。それは評価されてのことでありましたが、思わぬ方向へと動き出す序章であったのです。
 ただ平穏に過ごすはずが、なぜか何もない山村に強大な軍勢が現れてしまい主人公は為す術なく囚われの身となることに。
 導入は若き指揮官の身の振り話に終始するのですが、敵と味方の区別が徐々に理解できるような構成です。特に味方だと考えていたものたちや、敵だと考えていた組織がそれぞれ想像するようなものではないということを。
 文章は読みやすく展開も早く読者は飽きることなく読み進めることができます。
 戦争の全貌を描くことは決して容易なことではありませんが、上手く双方の思惑が綴られているかと思います。
 お勧めの作品です。是非一読いただければと存じます。

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