第4話 俺、魔法学園に着く

 トラブルなく王都にはついた。

 美しい都市だ。

 白い外壁に、白い街並みに、オレンジの屋根。


 奥には白い立派な城が立っている。

 街の中央には城と同じ高さの塔。

 あそこが魔法学園かぁ。


 俺は勉強しなくていいので気が楽だ。


 魔法学園に立ち入り、俺は従者用の住居に入った。

 俺以外の従者は着飾っていて何となく疎外感を感じる。

 俺に話し掛ける人間もいない。

 ぼっちだ。

 だけど俺には魔力操作がある。

 暇な時間は魔力操作、これに限る。


 一週間後、始業式が終わり、俺はサマンサの授業に付き合う事になった。

 座学の時間は魔力操作して過ごした。

 サマンサはぼっちではなかった。

 何人もの女の子と交流している。

 そりゃ、親戚が沢山いればそうなるよな。


 実戦の授業になる。


「いい、分かってる。私が魔法を撃ったら、途切れなく魔力を補給するのよ」

「分かってるよ。心配するな。給料もらっているからな。給料分は働くさ」


 サマンサが的を前に魔法を撃つ。


火球ファイヤーボール火球ファイヤーボール……火球ファイヤーボール


「おい、今、何発目だ」

「10発ぐらいかな」

「どうせ、やせ我慢だ」

「魔力がなくなって後の授業で恥をかくだけさ」


火球ファイヤーボール火球ファイヤーボール……火球ファイヤーボール


「おい、途切れないぞ」

「何発目だ」

「20発」

「魔力量が凄いな」

「流石、貴族の血筋だ」


火球ファイヤーボール火球ファイヤーボール……火球ファイヤーボール。ふう、今日はこんなところにしておくわ」


「嘘だ。30を超えたぞ」

「素晴らしい。皆さん。サマンサ嬢に拍手を」


 教員がそう締めくくった。

 サマンサは俺のブーストが無くなったらどうするつもりなんだろう。

 まあ、構う事はないか。

 もっとも、婿をとって村に帰ったら、ほとんど魔法は使わないけども。


 午前中の授業は終わったので、食堂に移動する。


「サマンサ、さきほどの実技じつに見事であった。感服いたしたぞ」


 いい身なりの少年がサマンサに話し掛けた。


「光栄に存じます」


 あの生意気なサマンサがへり下っている。

 俺も頭を下げた。


 気がついたら少年はいなくなってた。


「あれは誰?」

「馬鹿ね。ゲイリック王子よ。もちろん、この国の王子様ね」

「おお、あれが王子様」


「サマンサ、王子に色目使ったわね。勝負しなさい」


 何やら女の子がサマンサに突っかかってきた。


「これは、ご機嫌うるわしゅう。ソフィア公女に何か失礼な事を致しましたでしょうか」

「私でも王子に褒めてもらった事がないのよ。なのに。きーっ悔しい」


「平民がたまたま見せ場を作ったので、王子様の目に留まったのだと愚考いたします」

「とにかく魔法戦で勝負よ」

「かしこまりました。お相手致しましょう」


 ソフィアが去って行ったので俺はサマンサに話し掛ける。


「コテンパンにやっちゃいなよ」

「馬鹿ね。わざと負けるのよ。ソフィア公女の王子様狂いは有名だから、目を付けられたら鬱陶しいわ」

「そんなもんかね」


 食事が終わり、午後になり魔法戦の授業になった。


「ソフィアとサマンサの魔法戦を始める。両者前に」

「かしこまりましてよ」

「はい」


 二人が石舞台の上で向き合った。


「始め」

火球ファイヤーボール。これで王子の視線は釘付けよ」

火球ファイヤーボール。お相手つかまつります」


 火球が舞台中央でぶつかり爆発する。


身体強化フィジカルブースト

土壁アースウォール


「ほほほ、こんな壁など」


 ソフィアが土壁を砕く。

 破片が飛び散りサマンサは余波を食らって倒れ込む。


「降参です」

「勝者ソフィア」


 サマンサが舞台を降りる。


「怪我してないか」

「馬鹿ね。あんなのは、やられたふりよ」

「そうか良かった」

「それに、この闘技場は結界が張ってあって、大怪我はしないようになっているわ」

「なるほど」


「ところでオーガをまた二人で狩らない?」

「何だ、金欠か」

「付き合いにはお金が必要なの」

「俺もちょっと羽を伸ばしたいなと思っていた所だ」

「じゃ、週末に」


 冒険者には興味がある。

 家に仕送りもしたいし、お土産も送ってやりたい。

 死魔法もどきも慣れておきたいしな。

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